2007.03.20 Tuesday
昨年は柱を彫刻の要素として、ひたすら作りました。柱に興味を抱いたのはヘレニズム文化の影響かもしれません。そのヘレニズムより古い時代に作られたクノッソス神殿。小さなクレタ島にあるというだけで神秘性を持っています。極めつけは上にいくほど太くなる柱。不思議な造形に魅かれました。スポーツをしているような人々の壁画から平和な時代が見て取れました。その神殿の前で、テラコッタでできた一対の飾り面を買いました。ギリシャ悲劇と喜劇の仮面。焼きが甘いのか、ともすれば壊れそうな仮面でした。郵送などできず、トルコの絨毯と一緒にリュックサックにつめて、旅の友になりました。ウィーン生活で使った衣類を徐々に捨て、その代わり風変わりな土産が増えていきました。クレタ島到着時に吹き荒れた嵐が去り、それでもなお湿った風が頬を撫でていましたが、ロードス島に渡る決心をして、クノッソス神殿の奇妙な柱に別れを告げました。
2007.03.19 Monday
1985年に旅したトルコ・ギリシャ。4月の個展が近づくにつれ、展示する作品の多くがこの旅でイメージを培われたことを思うと感慨一入です。2ヶ月以上に及んで滞在したトルコを後にして、ギリシャのクレタ島に向かったのは10月に差し掛かっていました。エーゲ海というのはいつも青い空と青い海が広がっているところというイメージをもっていましたが、さにあらず。この日は荒天で、まるで北斎の浮世絵のような荒れ狂う波に、笹舟の如く頼りない舟は自然の成り行きまかせになり、さんざんいたぶられた挙句に、やっとクレタ島に漂着したのでした。もちろんクレタ島も嵐吹くフォービズム絵画のような風景が目前に広がり、観光ポスターとは正反対の印象をもってしまいました。ただ、ギリシャに渡った瞬間に、芳しい豚肉や鶏肉の焼いた匂いがして、トルコの羊肉に辟易していた胃腸にはたまらない魅力でした。
2007.03.18 Sunday
1月末から2月にかけて横浜市民ギャラリーで展示した「構築〜包囲〜」がアップしています。このブログを書き始めると同時に作ってきた作品なので、制作の一分始終をブログに記録してきました。夏の間中、額に汗して彫った30本の柱も、砂を貼ったテーブルもご覧になってください。他に仕事をしながらほぼ半年で作ったものです。演出は相変わらずカメラマンとの共同作業で決定しています。というよりカメラマンからの提案があって図像が決まるといった方がいいかもしれません。ただ以前とは違い、コトバは作品が出来てから考えるのではなく、作品のコンセプトが決まってきた時から同時に進行するようにしました。柱をこういう方向に向けると決めた時、コトバ作りも始めました。写真が出来た時、カメラマンに「コトバはすぐ翌日に用意できます」と答えられたのはそのためです。カタチとコトバ双方から取り組んだ初めての作品といえます。
2007.03.17 Saturday
昨日、文筆家の笠原実先生から「ミロそしてミロ」という自作の詩集が送られてきました。まさに文字通り自作の詩集で、30部限定の私家版でした。これは我が家の家宝です。内容も家宝に値します。私もブログで幾度となく書いているように現代詩に興味があり、学生時代は彫刻に目覚めるまで詩作を繰り返していました。詩にするにはあまりに粗末な感覚、語彙力で途中で放棄していたのでした。それがこのHPを作るにあたり、コトバを彫刻と並列(付け加えではありません)することになり、拙い詩作が再び始まりました。そこへこの「ミロそしてミロ」。う〜ん、先にやられてしまったと正直思いました。「ミロそしてミロ」は谷川俊太郎の「クレーの絵本」を彷彿とさせるものでコトバが絵画の感覚を掴み取っています。これは解説や評論ではありません。詩人の中には美術評論家も多く、評論する前に詩心で美術作品に接しているのかもしれないと思っているのですが、笠原先生が私の彫刻を批評してくださる時も、この感覚で書かれた一文だと確信しました。「笑覧いただければ〜」などというお手紙が添えてありましたが、とんでもないことです。これでしばらく勉強させていただきます。
2007.03.16 Friday
このブログから自分のHPに入れるようになっています。この文章の後にあるアドレスをクリックして頂くと、扉が出てきますので、左下に個展インフォメーションがあります。リアルな日常の中で、リアルではない世界を作っている者にとって個展は夢うつつなイベントです。運搬、セッテイング等の汗水流すことはあっても、自分だけの世界を演出し、人に見てもらう行為は贅沢なことだと思います。生活に関わらないことは何て魅力的で魔物のように心を捉えるのでしょうか。音楽や演劇も同じです。こういうことが生活に関わる労働と同等に大切なものになれば、豊かな人間社会が生まれると思います。案内状が出せない方には、ぜひHPのインフォメーションをご覧になって頂ければ幸いです。
Yutaka Aihara.com