2012.05.12 Saturday
東京上野にある東京文化会館小ホールで「下野昇テノールリサイタル」がありました。声楽家下野昇は親戚です。現在76歳のテノール歌手ですが、今日の演目は全て本格派のドイツ歌曲。この年齢にして果たして歌えるものかと疑っていましたが、その堂々とした歌唱には驚くばかりでした。前のNOTE(ブログ)にも書いた覚えがありますが、自分は叔父という贔屓はいっさいしません。むしろ親戚なので厳しいことすらありますが、それを加えても実力のほどは余りあるものがあります。叔父は音楽の土壌で己と闘う声楽家です。表現が枯れることも技巧に甘えることもありません。真摯に立ち向かう姿勢が、自分を含めた観衆に感動を与えるのだと思います。モーツァルト、ベートーヴェン、マーラー、R・シュトラウスの難解な歌曲を高らかに歌い上げる叔父は、天与として体格や強い声帯に恵まれていますが、それを十分駆使し、なお精神力で音楽の真髄を築いていくところが尊敬に値するところです。自分も造形美術という世界で、どの年齢に達しても闘い続けなければならないと考えます。自分の身近にこういう存在がいるということも自分には幸運です。今日は「下野昇テノールリサイタル」の前に国立博物館平成館に立ち寄り、ボストン美術館が所有する数々の日本の名作を見てきました。その感想は次の機会に書きます。今日は音楽と美術の両輪が揃った充実の一日を過ごしました。
2012.05.11 Friday
私は1980年から85年にかけて5年間をヨーロッパで学生として過ごしました。ちょうど24歳から29歳までの異文化を学ぶには絶好の機会が与えられたわけです。当時は無我夢中で何か準備をしなければ渡欧する意味がないと思え、事前学習をしておこうと決めていました。その中に「西洋の没落」(O.シュペングラー著 村松正俊訳 五月書房)の読破を入れていましたが、読み始めて僅か数ページで断念し、そのまま実家の押入れに仕舞い込んでしまいました。海外から帰国した際に、もう一度チャレンジしましたが、第一巻すら歯がたたず、今度は自宅の書棚に移したまま放置していました。今回は3度目のチャレンジになります。本書は壮大な哲学書ですが、何としても読み終えたいと思っています。短い通勤時間帯ではどのくらいの時間がかかるのか見当もつきませんが、生涯学習のひとつとして少しずつ意味を咀嚼しながら30年前の目標を達成したいと思います。ページを捲ると変色した紙と埃の臭いがします。こんなになるまで放っておいた書籍に向かって、今度こそは読み切るぞと呟いています。
2012.05.10 Thursday
昔から芸術作品を語る時に自分がよく使っているコトバや論理は、白状すればどこかで得た知識であり、誰かの受け売りであり、何かの書籍によって頭に刷り込まれたものです。読み終えたばかりの「芸術の意味」(ハーバート・リード著 瀧口修造訳 みすず書房)は20代の頃一度読んでいたのですが、当時は難解な印象があって30年経った今になって再読を試みたわけです。読んでいくうちに、これは自分がよく使っている言い回しがあったり、造形理論の根拠としているコトバがあるのに思わず苦笑してしまいました。もちろん頭に刷り込まれた知識は、本書だけではないとは思いますが、20代に得た知識が自分の中で血肉化していて、あたかも自分ひとりで考えたように語っている自分が恥ずかしくもなりました。若い時代には解読が難しかった箇所が本書には数々あって、それでも何とか己のものにしようとして過去の自分は努力していたんだなぁと思い返し、今回の再読には意義があったと思えました。言い換えれば自分のネタ本だったことを、自分は暫くの間忘れていたことになります。もっと言えば本書で取り上げられている個々の芸術家は、芸術史全体を網羅していませんが、自分が最初に傾倒した芸術家が本書に登場する芸術家に重なります。もちろん自分の眼で見て感動した芸術作品は数多くありますが、最初に知識があって感動を覚えた芸術作品もあり、それはハーバート・リードの解釈によって感動を与えられたと言っても過言ではありません。若い頃にどんな書物と出会えたか、どんな知識を身につけられたかを考えると、その後の自分の心の生育に何らかの影響を及ぼすことになると改めて感じた次第です。
2012.05.09 Wednesday
先日、横浜美術館で開催中の「マックス・エルンスト展」に行ってきました。シュルレアリスムの主流な芸術家の一人であるドイツ人画家マックス・エルンストは、画風がシュルレアリスムであるなしに関わらず、自分はその構成感覚が大好きなのです。とくにデカルコマニーを多用して森を表現したシリーズに惹かれています。画面中央にどっしりした物体があり、それが何か説明のつかない異様さを持って迫ってくるようです。フロッタージュの効果を利用した絵にも自分の想像が刺激されていくのを感じます。画面の中に自分だけの発見があり、自分だけのイメージを持つことが許される世界だと思います。鑑賞者によって感じ方がそれぞれ異なり、また自分の中でもその時その時によって印象が変わっていくのがエルンストの世界と認識しています。モダンテクニックを駆使した奇妙なカタチが、何かあるものを暗示し、謎解きのような遊びに浸れるのもエルンストの世界です。ここで1点1点の作品の感想を書きたいのですが、紙面の都合で今回は全体の印象に留めます。次の機会に、自分にとって印象深かった作品を取り上げてみたいと思います。
2012.05.08 Tuesday
一日1点平面作品を作り上げて、それをRECORD(記録)と称しています。かなり前から月ごとのテーマを決めて、さらに5日間を同じ構成要素にしています。言い訳になりますが、時間がない中で一日1点ずつ作っていくには、これが一番やり易い方法なのです。やはりマンネリ化は避けられないものの、今までにない要素を探りながら現在まで継続しています。今月のテーマは「対話」に決めました。数々制作したRECORDの中で、将来彫刻として具現化できるものが見つかればいいなぁと思っています。「対話」は人と人が絆を作り上げる第一歩で、震災を契機に家族とのコニュミケーションを見直してる今、「対話」する大切さを感じています。その「対話」を象徴して表現できればと考えています。今月も小さな一歩から始めていこうと思います。