Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • フォーヴィズムの思い出
    高校時代に油絵を描き始め、最初に影響を受けたのが佐伯祐三でした。鋭く素早い筆致で描かれた風景画を見ながら、どうしてこんな空気を感じさせる雰囲気が出せるのだろうと思っていました。佐伯祐三画集にあったフランス人画家ブラマンクにも興味が出て、その周囲の画家グループを調べ、そこからフォーヴィズムという名称を知ったのでした。マチスの激しい色彩にも興味を持ったのですが、自分は色彩感が乏しく、何を描いても泥臭くなってしまうので、あえて色彩を表現の主流にしている画家を避けるようになりました。でも高校に通っていた当時、激しい筆致や色彩が自分の心情にあっていたようで、描けるものならこんな絵画が描きたいと思っていました。ただ画家になろうという気持ちはなく、建築家や工業デザイナーを希望していたことは確かでした。本格的にデッサンの勉強を始めてから油絵はまったく描かなくなってしまいました。デッサンはデザイナーになるための勉強と考えていて、その少し前までやっていたフォーヴィズム絵画の真似事とは結びつくことがなかったのです。アートという大きな括りの中で考えられるようになるのはもっと後のことです。
    油絵の具との出会い
    油絵の具は結構好きな画材で、自分の立体作品にもよく使っています。今年の新作「構築〜解放〜」にもテーブルになる厚板に砂マチエールを貼り、油絵の具を染み込ませていこうと思っています。油絵の具は高校時代に初めて手にして、まずは入門書通りの扱いをしていました。イーゼルを戸外に立て画布に下塗りをして風景を描き始めました。初めの一歩は白い校舎の壁を描いたように記憶しています。かなり厚塗りをしました。壁のざらついた感じが油絵の具で表せるので、楽しんでやっていました。そんな時に佐伯祐三画集が目にとまり、パリの街角を鋭く描いた絵に感銘を受け、真似してみようと何度か試みたのを覚えています。筆よりパレットナイフを多用して絵の具を画布に擦りつけてベタベタやっていました。油絵の具がすっかり気に入っていましたが、その頃はきちんとデッサンを習っていたわけではないので、全体の構図もモノの捉え方もすべて自己流でした。           Yutaka Aihara.com
    動物画による表現主義
    ロシア人画家カンデインスキーについては度々ブログに書いてきました。当時進歩的だった刊行物「青騎士」についても触れたことがあります。「青騎士」の翻訳が出版され、さっそく読んで感想を述べたこともあります。(07.7.25)ところでカンデインスキーの絵画はよく知られていても、その協力者であり、表現主義の推進者でもあったフランツ・マルクの絵画は日本ではほとんど見る機会はありません。自分もヨーロッパ滞在中に、たしかミュンヘンの美術館で見たような気がしていますが、意識してはいませんでした。キルヒナーのようにそこで感銘を受けたわけでもありませんでした。ただ今思い返してみると、原色に近い色彩で彩られた動物と一体化した背景が何となく印象に残っていて、あれがマルクの絵画だったのかと思うばかりです。もっとじっくり見ておくべきだったと後悔していますが、いずれまた海外に出かけていって、マルクの世界を味わおうと思います。
    異文化がもたらすもの
    クレーのチュニジア旅行のことをブログに書いていたら、自分の過去を再び思い出してしまいました。このブログに何度となく書いているウィーン滞在のことです。1980年から5年間暮らしたヨーロッパの古都は、今の自分の感性や思考を形成する上で大きな足跡を残し、その財産で今も作品を作り続けていると言ってもいいかもしれません。昨今多くの日本人が海外に出かけ、見聞を広めたり、レクリェーションに興じたりしています。自分も気楽に行くつもりが、滞在は5年間になり、その中で彫刻を学んだりしました。自分は渡欧前から創作活動の真っ只中にあり、「自分自身の表現とは何か」「自分は何をするべきか」という課題を抱えてヨーロッパに出かけたので、その影響も大きかったと思っています。異文化に触れる時は、自分がそれをいかに受容できるかで、その後の自分のあり方が変わってきます。クレーのチュニジア旅行も自分のウィーン滞在も作家のレベルこそ違えど同じ質のものではないかと理解しています。
    クレーのチュニジア旅行
    法律文化社「ドイツ表現主義の世界」を読んでいたら、画家クレーとマッケがチュニジアを旅行し、そこから絵画表現が大きく変わったことが書かれていました。北アフリカの風土から受けた影響は、とくに色彩に表れているようです。色面構成が中心となり、ほとんど非対象化したクレーの絵画は色彩の深みと広がりがあらゆるイメージを想起させ、自分が絵画と戯れられる感じがして、とても好きな表現です。たんなる表面の処理ではない哲学的な思考が感じられると言っても過言ではありません。これもチュニジアで得た色彩あったればこその表現の到達点とも言えます。わが身を振り返ってみれば、今だに昔暮らしたヨーロッパの風土が根付いて、それが自己表現の一翼を担っていると思っています。異文化の中で得るものは感性そのものに働きかけて、芸術家の一生を左右するものだと改めて思います。       Yutaka Aihara.com