2007.05.29 Tuesday
民俗学者の相沢先生が大内宿の保存を始めたきっかけを本にまとめています。先生は村民の中に入り、同じ労働に勤しみ、村の理解を得て、ようやく今日の大内宿の姿にしてきたのだと思います。まさか当時はこんな観光地になるとは思ってもみなかったのではないでしょうか。自分はこうした土地に来ると今は観光地であれ、また生活の場であれ、祖先が培った家々や街道の美しさに心を奪われます。木の文化が自分の心を和らげます。土壁や太い梁を見ると心が躍ります。切妻屋根の美しさ、藁葺きの緩やかな傾斜に心が撫でられ、この風景が保存できたことを嬉しく思います。因みに観光客としての一言。大内宿入り口にあるパン屋さんの手作りパンは絶品です。種類は少ないのですが、どれも美味しくて必ず買って帰ります。お試しを。
2007.05.28 Monday
福島県南会津郡下郷町にある大内宿は数回訪れています。最初はずい分前になりますが、豪雪の積もる大内宿に車のタイヤを滑らせながら入りました。奥深い里という印象でした。自分の出身校には民俗学研究室があって、民俗学者として名のある宮本常一教授が礎を作ったようですが、自分の時代には後継者の相沢次男先生がいらっしゃいました。実はこの相沢先生が大内宿の保存活動を初めて展開した人でした。大内宿本陣跡にある街並み展示館には母校の名前がついた看板があります。相沢先生はご家族を連れて、自分がウィーン滞在中に拙宅に来ていただいて、日本や欧州に纏わる興味深いお話をしていただきました。自分がルーマニアで個展をした時もオープニングに駆けつけてくださいました。そんな縁で大内宿は初めから親近感がありました。ただ遠路遥々といった印象は拭えず、今回も尾瀬から1時間以上かけて、ここにやってきたという感じです。
2007.05.27 Sunday
尾瀬に来ています。昨年のブログにこの時期の尾瀬紀行を書いています。今年も尾瀬沼までの木道を歩いてきました。昨年は豪雪で木道が埋まって、幾度となく足を滑らせましたが、今年は雪がわずかに残るだけで、清々しい空気の中を気分よく散策することができました。水芭蕉が群生しているところを眺めていると、まるで桃源郷のようで、癒しの空間を味わいました。湿原の美しさ。山々に筋をなしている残雪。青空にぽっかり浮かぶ雲。このまま風景画にしてしまうと、あまりにも構図が決まりすぎてしまいます。絵のような風景ではありますが、絵にするよりはリアルな自然の方が断然勝っているのです。この風景を表現するとしたら、時間をおいて印象を再構成するしかないかなと思います。昔から芸術家は自然のもつ偉大さや畏怖を表現しようと試みてきました。この肌に感じる尾瀬の透明な空気の前では、作りごとは何て無力なんだろうと感じます。
2007.05.26 Saturday
「三沢厚彦ANIMALS+」という木彫作家による大掛かりな個展が平塚市美術館で開催されているので、今日行ってきました。単純な写実ではなく不思議な存在感を示す動物彫刻たちが、大小さまざまに展示されていて、会場は楽しさばかりではなく、ちょっと不気味で、大胆な量感にあふれた面白い世界が広がっていました。鑑賞者の中に子どもが多く、ワクワクしながら走り回って、案内係に注意をされていました。子どもの反応が示す通り、堂々とした存在感と理屈抜きの面白さがこの作家の特徴かなと思いました。自分は動物彫刻がきちんとまとまっていくまでの試行錯誤の小品が気になりました。というよりこの時期の悩みや迷いがわかる気がしました。動物の骨格から目の位置にいたるまで己の中にあるカタチを探っていく過程が示されていて、作る者の何ともいえない暗中模索が伝わってきました。その過程があってようやくカタチが生まれてきて、存在感がでてくるものだと改めて認識しました。
2007.05.25 Friday
学生時代に唯一バイトで稼いだ金銭をつぎ込んでも欲しかった版画がケーテ・コルビッツの木版画でした。銀座の版画専門画廊にあったものに結局手が出せず、今となっては後悔しています。ケーテ・コルビッツの画集は洋書から翻訳したものまで、かなりたくさん買っています。自分も木版画をやっていて、コルビッツを初めとするドイツ表現主義の作風に魅かれていましたが、自分の作るものは全部気に入らず、版木を捨てていました。作品が刷り上って、しばらく眺めているとプロレタリア・アートかコミックのように見えてしまい、自分にはこうした表現が向かないのかもしれないと思っていました。コルビッツのような訴えるものがなく、ましてや棟方志功のような彫り跡の面白さもなく、悶々とした制作が続きました。コルビッツの木版画の部分を模倣したり、似た作風で試みたこともありますが、やはりワザとらしくなってやめてしまいました。コルビッツの何にそんなに魅かれていたのか、次の機会に振り返って自己分析してみたいと思います。