Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

  • Tag cloud

  • Archives

  • R・ハウズナーの顔
    ウィーン幻想派の話です。ウィーン美術アカデミーに学んでいた20数年前に、ハウズナーを1度だけお見受けしたことがあります。ハウズナーはウィーン幻想派の画家の中でも最年長でリーダー的役割をしていました。画風が自分の顔を主なテーマにした具象画なので、アケデミーで会った時もすぐ本人だとわかりました。私は画家が描くものは、それが風景だろうが抽象だろうがすべて自画像だという持論があります。さしずめ自分が作っている抽象彫刻は自刻像だと思っています。ハウズナーの表現する世界は狭義な意味での自画像ではなく、顔をテーマにした謎解きといってもいいくらいバリエーションに富んだ意味を持つ自画像です。画面は顔をベースに分割されて、そこに自分が関わりをもった様々な事象が描きこまれています。自己分析的で、本人にしかわからない情景があって、自分が歩んできた過去を謎めいて表しています。シュールレアリズムとは異なった世界を感じさせてくれます。
    臨終の時を考える
    家内の叔母が亡くなって通夜に行ってきました。昨年は父を失っているので不幸が続いています。父も叔母も80歳を超える年齢なので、これも仕方がないことです。祖父母の代では何でもなかったことが親の代ともなると、自分の行く末を考えてしまいます。人に必ず訪れる臨終の時。この時の自分をイメージすることは難しいのですが、限りある人生をどう生きたらいいのか、こんな日にちょっと考えてみたくなるのです。満足して生きたら思い残すことなく死を迎えられるのか。往生際の悪い自分はそう簡単にはいかないと思いますが、とにかく満足できればそれに越したことはありません。何に対して満足?自分に対してかな。いわゆる自己満足。自己満足が人や社会に役立つものもあれば、まったくの自己満足で何の役に立たないものもあります。政治経済で活躍しているなら多少なりとも自己満足が人々を喜ばすことがあるでしょう。芸術や文化ならどうか。これは微妙です。人には粗大ゴミにしか見えないものを作り続けている彫刻家。う〜ん、いづれ価値をわかってもらえると信じながら今日も制作。でも臨終の時、好きなことだけやれた満足感はきっとあると思います。
    E・フックスの銅版画
    ウィーン幻想派の画家の中で、ウィーンの街中のギャラリーに作品があるのがE・フックスの銅版画です。フックスは煌びやかな油彩画を多く描いていますが、モノクロの銅版画にも力量のある画家だと思います。フックスの宗教性や神話性のある世界は、たとえばフックス好みのビーナスや王や兵士が独特な装飾で彩られて、その描写力に舌を捲きます。全体としては寓話的な世界ですが、細部のリアリテイには目を見張るものがあります。銅版画は量産ができるものなので、かなりたくさん出回っていて、ギャラリーだけでなく書店にも飾られていて、手彩色をしたものからカラー刷りをしたものまで様々な試みをして市販されています。フックスはユダヤ系の画家で、同じウィーンで活躍していたフンデルトワッサーもユダヤ系。フンデルトワッサーも様々な作品を作って市販していました。どうもユダヤ系芸術家は芸術の道に長けているばかりではなく商売熱心でもあるようです。
    ウィーン幻想派との関わり
    ウィーン美術アカデミーに学んでいた当時、同校にハウズナー教室とレームデン教室があって、とくにハウズナー教室には毎年のように邦人画家が聴講生としてやってきて制作をしていました。もうかれこれ30年も前になるのでしょうか、東京のデパートにある美術館でウィーン幻想派の絵画展があって、話題になったことがありました。自分は当時そうした絵画に興味はなく観に行ってはいませんでした。幻想派に注目するようになったのはウィーンに来てからでしたが、ウィーン行きが決まった時に、大学の図書館に行って幻想派の画家のことを調べました。古典的傾向をもつ具象絵画で、宗教的な神話であったり、自画像を分解して自分の生い立ちを封じ込めてみたり、戯画のようであったりして、その装飾性に何か特徴があるような気がしました。日本の空気の中ではなかなか理解できなかったものが、ウィーンの空気を吸うことで理解できたように思いました。
    レンブラントの光と闇
    自分の目で確かめてこそ本当の名画鑑賞だと昨日のブログに書いて思い出したことがあります。いつぞやオランダ絵画がどこかの美術館に来ていて、たまたま観た時に、名画と言われる絵はやはり名画なんだと妙に納得してしまったことがありました。それはレンブラントの肖像画で、レンブラントの作品としてはよく図録などで見かけるものでした。その絵は他の絵画とは違っていました。何が?って何だろうと考えてみるのですが、これという決め手はありません。どの絵も色彩の落ち着き、構図、どれをとっても申し分のない絵画に囲まれて、レンブラントは何かが違っているのです。光なのか闇なのか。技巧ではありません。でも鮮明な画面。光は光らしく闇は闇らしく人物を浮き彫りにしている手ごたえのようなもの。よく説明できませんが、これが名画だと感じ入ってしまった一瞬でした。