2006.12.20 Wednesday
自分が行く前からウィーンで暮らしていた留学生仲間が、古くなった住居の壁に平織りの絨毯を張り巡らして独特な空間を作っていました。平織りは幾何模様があったり、動物や人物が象徴的に単純化されていたりして、その模様と色彩はまるで抽象絵画のような不思議さと美しさをもっています。破れたり汚れたりした壁に張るとエキゾチックな楽しさが演出できるのを、この時知って自分も真似てみたくなりました。昨日のブログに書いたフローマルクトに行き、やや渋めの平織りの絨毯を値切りに値切って、やっと手に入れてきました。自分の住居の一角にそれを張り、その前に花瓶や書物を置いて雰囲気を楽しみました。空間の演出という概念はこんな身近なところから学べるのかと改めて思いました。
2006.12.19 Tuesday
所謂「蚤の市」で、日本でも最近はあちこちでこうしたフリーマーケットが開かれています。その先駆けとも言うべきヨーロッパのマーケットはかなり歴史があって、自分の留学生時代には盛んに行われていました。ウィーンは毎週土曜日の午前中に青果市場近くの広場で、由緒のあるものからちょっと如何わしいものまで売られていました。いったいどこから持ってきたのかわからないイコン(宗教画)、燭台、十字架、キリストの磔像などや、かなり値の張りそうな絨毯、戦前のモノクロ写真、装飾金具、食器など諸々の雑貨があって、日本からやってきた者にとっては異国情緒に溢れていました。ユーゲントステイールの工芸品も売られていました。「昔はもっと良い物があった」と昔から利用している住民から聞いていましたが、それでもなお西洋臭さが残る雑貨を見て、大いに楽しめました。
2006.12.18 Monday
ドイツ語ではユーゲントステイールと言っていました。20世紀初頭に流行した美術様式で、建築から工芸品にいたるまで、それとわかるフォルムをしています。植物の葉・茎や蔦の曲線をデザインに取り入れて、自然に独特な解釈を加えて優美なカタチを創っています。ウィーンにはそれらユーゲントステイール様式の建築物や工芸品がたくさんあって、研究者でなくても興味をそそられました。エミール・ガレやルネ・ラリックの製品を買えない留学生としては書物だけはたくさん手に入れてきました。そのうち当時の何人かの作家に注目するようになりました。同じように見える様式美の中でも、やはり個性的な作品が生まれていたのかと改めて思い返しています。
2006.12.17 Sunday
自分と同年代で、茨城県に工房を構えて作陶を続けている佐藤和美さんの個展に行ってきました。神奈川県藤沢から江ノ電に乗って、ひと駅目に目指すギャラリーがありました。閑静な住宅の中にある陶器専門の店でした。そこには土肌を生かした壺や皿が並べられていました。作品のことはそっちのけで、プライベートな話ばかりになってしまいましたが、この歳になると肉親のことや諸々の雑事で創作がままならなくなるのは誰しも同じなんだと思いました。そんなことで納得できる作品が出来ていないと和美さんは言っていましたが、何はともあれ創作を続けている仲間がいることは嬉しく感じています。
2006.12.16 Saturday
「柄澤齊展」で購入した図録に日和崎さんのことが書かれていました。柄澤さんは日和崎さんの個展を見て、それがきっかけで木口木版を始めたことを知りました。30年も前の自分の大学時代に、学内の版画展に日和崎さんがひょっこり現れて、自分の彫った大きな木版画に意見やら感想をいただきました。それから日和崎さんとの交流が始まりました。素晴らしい師匠に出会ったにも関わらず自分はとうとう木口木版はやりませんでしたが、国分寺にあった自宅兼アトリエに泊まらせていただいたことがありました。日和崎さんの仲間と一緒に山登りに出かけて、山の帰りがけに突然絵本作家の田島征三さんの家に立ち寄って夕飯をご馳走になったこともありました。日和崎さんは酒が大好きで般若心経を読んで命拾いした話などをしてくれました。今でも思い出が鮮やかに残っています。ひょんなことから日和崎さんの名前を見つけ、懐かしい気持ちになりました。