Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • 空間演出という概念
    立体作品は作られた物質だけでなく、周囲の空間をも作っているという概念をもったのは海外での生活体験からでした。日本の大学で彫刻を学んでいた頃は、彫刻そのものの構造や量感を捉えるのが精一杯で、その彫刻が置かれる場所や置かれたことで周囲に与える空間の変容なんて考えられずにいました。ヨーロッパの街づくりに見られる公共広場での彫刻の役割、または室内空間に置かれた彫刻の床や壁との関係は、自分に立体作品をもう一度考えさせる絶好の機会を作ってくれました。汚れた壁を絨毯を張って演出したり、壁紙を張り替えたり、漆喰を塗ったりすることと自分が学んでいる彫刻は決して切り離した存在ではなく、空間演出をする要素としては同じであり、すべてが自分の世界感として統一したものでなければならないという概念です。そんなことを考え始めてから、作品を作るときは周囲のことまでイメージして作り出すようになりました。
    平織り絨毯のインテリア
    自分が行く前からウィーンで暮らしていた留学生仲間が、古くなった住居の壁に平織りの絨毯を張り巡らして独特な空間を作っていました。平織りは幾何模様があったり、動物や人物が象徴的に単純化されていたりして、その模様と色彩はまるで抽象絵画のような不思議さと美しさをもっています。破れたり汚れたりした壁に張るとエキゾチックな楽しさが演出できるのを、この時知って自分も真似てみたくなりました。昨日のブログに書いたフローマルクトに行き、やや渋めの平織りの絨毯を値切りに値切って、やっと手に入れてきました。自分の住居の一角にそれを張り、その前に花瓶や書物を置いて雰囲気を楽しみました。空間の演出という概念はこんな身近なところから学べるのかと改めて思いました。
    フローマルクト
    所謂「蚤の市」で、日本でも最近はあちこちでこうしたフリーマーケットが開かれています。その先駆けとも言うべきヨーロッパのマーケットはかなり歴史があって、自分の留学生時代には盛んに行われていました。ウィーンは毎週土曜日の午前中に青果市場近くの広場で、由緒のあるものからちょっと如何わしいものまで売られていました。いったいどこから持ってきたのかわからないイコン(宗教画)、燭台、十字架、キリストの磔像などや、かなり値の張りそうな絨毯、戦前のモノクロ写真、装飾金具、食器など諸々の雑貨があって、日本からやってきた者にとっては異国情緒に溢れていました。ユーゲントステイールの工芸品も売られていました。「昔はもっと良い物があった」と昔から利用している住民から聞いていましたが、それでもなお西洋臭さが残る雑貨を見て、大いに楽しめました。
    アールヌーボー様式
    ドイツ語ではユーゲントステイールと言っていました。20世紀初頭に流行した美術様式で、建築から工芸品にいたるまで、それとわかるフォルムをしています。植物の葉・茎や蔦の曲線をデザインに取り入れて、自然に独特な解釈を加えて優美なカタチを創っています。ウィーンにはそれらユーゲントステイール様式の建築物や工芸品がたくさんあって、研究者でなくても興味をそそられました。エミール・ガレやルネ・ラリックの製品を買えない留学生としては書物だけはたくさん手に入れてきました。そのうち当時の何人かの作家に注目するようになりました。同じように見える様式美の中でも、やはり個性的な作品が生まれていたのかと改めて思い返しています。
    佐藤和美展によせて
    自分と同年代で、茨城県に工房を構えて作陶を続けている佐藤和美さんの個展に行ってきました。神奈川県藤沢から江ノ電に乗って、ひと駅目に目指すギャラリーがありました。閑静な住宅の中にある陶器専門の店でした。そこには土肌を生かした壺や皿が並べられていました。作品のことはそっちのけで、プライベートな話ばかりになってしまいましたが、この歳になると肉親のことや諸々の雑事で創作がままならなくなるのは誰しも同じなんだと思いました。そんなことで納得できる作品が出来ていないと和美さんは言っていましたが、何はともあれ創作を続けている仲間がいることは嬉しく感じています。