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  • ウィーン分離派と邦人建築家
    ウィーン分離派は、自分にとってどのようなものかを考えてみると、予備知識もないままウィーンに住んで初めて知った革新的な芸術運動で、その美的なるものに感動を覚えたのが分離派でした。現代は芸術の捉え方、表現方法も多様化して、美的なるものの存在が問われるような前衛がありますが、それから考えればウィーン分離派は古典的な美しさが確かに存在していると言ってもよいと思います。当時、日本にも分離派は紹介されて、とくに村野藤吾や吉田五十八、堀口捨己といった日本の近代建築を代表する人々が影響を受けているとは、帰国するまでまったく知りませんでした。日本の建築界においてウィーン分離派はどのような受け入れられ方をしたのか興味は尽きません。自分の印象としては、分離派は完全には前衛になりえないところがあって、過去の遺産を否定していないと思うのです。むしろ過去の様式を当時の生活様式に合うようにアレンジしているように感じます。邦人建築家も日本の古い家屋を生活スタイルに合わせたカタチにアレンジしてみせたのではないでしょうか。
    立体作品の絵画的要素
    自作の「構築〜包囲〜」は厚板に砂を硬化剤で貼りつけ終わり、いよいよ次の段階に入りました。この砂の面に油絵の具を染み込ませていく作業です。これは油絵の具を均一に塗る作業ではなく、色彩を調整しながら最初に思い描いたイメージに近づけていきます。自然に風化して色が変色したような壁を作る作業です。最終的には立体作品になるのですが、現段階では絵画的な仕事です。「発掘」シリーズでも陶彫を設置する台座(あるいは作品の一部)に砂と油絵の具による壁を表現しました。砂の微妙な凹凸面に染み込んだ絵の具がマット状になる効果が大変気に入っていて、絵の具の塗り方も考えます。アクションペインテイングをやってみたり、霧吹き状に絵の具を散らしてグラデーションを作ったりします。いつ終わるとも知れない作業が続き、平面上での実験を繰り返しています。立体と平面の両方から作り上げる作品ですが、見極めが難しいところです。
    オルブリッヒのセセッション館
    昨年のブログに、ウィーン美術アカデミーの窓から、鉄製の植物を模った球体のオブジェをのせた不思議な建物が見えていたと書きました。このブログでウィーン分離派のことにも触れたと思いますが、この分離派の中心的な活動の場であったセセッション館は、オットー・ワーグナーの弟子ヨゼフ・マリア・オルブリッヒの作品でした。自分がウィーンに行った当時は改装のためセセッション館は閉鎖されていました。分離派にもオルブリッヒにも予備知識がなかった自分は、この不思議な建物に興味津々でした。まもなくセセッション館の壁面を飾るクリムトの大作「ベートーベン・フリーズ」の修復が終わって、内部を見ることができました。アールヌーボー様式とはいえ簡素な空間で、ギャラリーとしてはなかなか優れた空間ではないかと思いました。当時はクルムトやシーレ、ワーグナーらが集い、革新的な展覧会があったことを思いながらセセッション館内を巡ったことを思い出します。
    ハンス・ホラインの店舗
    ウィーンの中心にある聖シュテファン寺院の向かいにかなり現代的な建物が出来たことで、ウィーン市民の間で物議を醸しだしたという話を聞きました。自分の帰国後のことで実際には見ていませんが、ネットで調べると曲面の美しい斬新なデザインの建物のようです。自分にとってはとても気に入ったデザインです。以前ここにあった建物の最上階のフンデルトワッサーのアトリエはなくなってしまったんだと思いました。この建物の設計者はハンス・ホライン。自分がウィーンにいた時は目抜き通りに洒落た店舗をデザインしていて、よく眺めていました。入り口を故意に狭くして興味をひくように作られ、その構成は大変美しいバランスをもっていました。オットー・ワーグナーが生きた時代とは別の意味で、ウィーンの都市空間に合っているように感じています。店舗の面白さで散歩が楽しく出来る街。建築がアートになっている街。そんな現代ウィーンが生まれつつあるように思います。
    フンデルトワッサーの建築
    自分がウィーン美術アカデミーに学んでいた頃、フンデルトワッサーが教室をもっていたので会いに行ったことがありました。フンデルトワッサーは絵画に留まらず、陶芸やタペストリーを制作していました。とくに建築に興味があって環境に関する提案をしていました。自分が帰国した後、フンデルトワッサーのデザインによる建築物が建てられ、一目見たいと思っています。浦和の美術館での個展で、模型や写真でそれらを知りました。フンデルトワッサー・ハウスの住所を確認したら、自分がいた当時、そこは目立つものがない一角だったように思います。フンデルトワッサーの建築は、20世紀初頭に活躍したワーグナーや現代のホラインとは違い、建築家の仕事と考えるのは難しいと思います。むしろ絵画世界を発展させた造形物と思った方がいいでしょう。だからこそ自由さと楽しさに溢れていて、そこが面白いと感じています。