2021.04.15 Thursday
先日、東京都現代美術館で開催中の「マーク・マンダースの不在」展に行ってきました。「ライゾマティクス_マルティプレックス」展を見た後、他の展示会場で大掛かりな立体作品を展示する個展が開催されていて、その素材の持つ存在感と不思議な空間に魅了されて「マーク・マンダースの不在」展に足を踏み入れました。マーク・マンダースは1968年オランダ生まれで、ベルギーに工房を構え、30年以上も「建物としての自画像」をテーマに作品を作り続けている作家であることを知りました。「建物」という枠組みを用いて構築するインスタレーションは、展示全体をひとつの作品として構成されていたように思います。塑造された巨大な頭像が未完成なままゴロンと横たえている状況に、これは物質が展示会場全体に及ぼす空間的な影響力を、私は感じ取りました。風化して今にも崩れ落ちそうな具象的形態。粘土の危うい質感にこれから何かが起きそうな気配を喚起させ、あたかも時間が凍結したような瞬間がそこにありました。また制作途中で立ち去った作家の痕跡もあり、それがタイトルにある「不在」を示すものかなぁとも思いました。ともかくこの日、私はデジタル技術を駆使した「ライゾマティクス_マルティプレックス」展を見た後だったので、「マーク・マンダースの不在」展の粘土や木材といった実材の存在感が際立ってしまい、デジタル表現とアナログ表現の両極端の違いを見せつけられた按配になりました。私は20代から彫刻の塑造表現に慣れ親しんできた者で、今も陶土に変えて塑造集合体で構成する立体作品を作り続けています。そのためか「マーク・マンダースの不在」展に内心浮き足立って、大いに刺激を受けてしまいました。それにしてもよくもこんな巨大な立体作品をヨーロッパから運んだものだなぁと思いました。今にも崩れそうな粘土はブロンズに鋳造していることが作品リストから分かりましたが、ついその労力を考えてしまうのは展示の裏側を知る自分の癖なのです。幸い同展の鑑賞者が多く、作品の雰囲気が不在を示しているにも関わらず、多くの人が作品を見ていたため、空虚な感じはありませんでした。作品リストに掲載されていた作家のコトバを引用いたします。「彫刻を作る中で一番興味深いのは、作り手の思考のようなものが見えることです。作品に本当にたくさんの意思決定の段階、例えば金属や粘土を使う、それぞれのプロセスに作り手の思考や意志、決定事項が見えます。」うーん、意外にも普通なコトバで、まとも過ぎる考え方に不意打ちを喰らった感じです。
2021.04.14 Wednesday
先日、東京都現代美術館で開催中の「ライゾマティクス_マルティプレックス」展に行ってきました。ライゾマティクスという異能集団には、アーティストやエンジニア、建築家や研究者もいて、それぞれが専門分野で分担し、ビッグデータの視覚化や多様なデジタル表現を通して、マルティプレックス(複合的)な演出を手がけていました。展覧会で紹介されていたパフュームの舞台映像は私も知っていて、その彼らが美術館で大掛かりな展示を試みていたのでした。最近見たNHK番組の「日曜美術館」で「ライゾマティクス_マルティプレックス」展のことを知り、是非行ってみたいと思っていました。私は学校に勤めていた頃に、教え子たちを連れて、東京お台場にあるデジタルアートミュージアムに行ったことがあります。その時は、彼らと学校体育館の内部で試みたプロジェクション・マッピングのことをもっと学びたくて、チームラボの人たちに会ってきたのでした。そうした動きはさまざまな場面で生かされていて、アートの主要な媒体として私は注目しています。同展でまず心を動かされたのが、白い5個の立方体が前後左右に動き回り、そこに光を投影してアクティヴな空間を創出していた部屋でした。映像には立方体にダンサーが配置され、彼らの動きとコラボレーションしていましたが、実際の部屋にはダンサーはおらず、光でその残像が映し出されていました。次に注目したのが、小さな球体がカーブを描いて流れてくる巨大なレールのオブジェで、球体は自ら光を放ち、その不規則性に不思議な雰囲気を感じさせ、まるで球体が生きているかのような錯覚を齎せていました。音響も空間演出に重要な役割を果たしていました。立方体にしろ、巨大なレールにしろ、アナログな物質とデジタルな仮象を組み合わせた世界観は、忽ち私を虜にしました。図録が後日届くことになっていますが、その背景となる思索や多様な試行錯誤のことも図録にあれば知りたいと思っています。これは現代が生み出した新しい表現形態ですが、美を享受する心は普遍的なものではないかと私は改めて思った次第です。
2021.04.13 Tuesday
今日は工房での作業は止めて、家内と東京にある美術館に出かけました。コロナ渦の影響で最近ではネットによる予約が一般的になっていて、入館時間も決められています。今日は2つの美術館、3つの展覧会を巡りましたが、一日中工房に行かない日とあって、昨日は乾燥の進んだ陶彫部品2点に仕上げと化粧掛けを施し、窯に入れておきました。今日一日は、工房では焼成のために他の電源が使えなくなるのです。さて、今日巡った展覧会ですが、朝9時に自宅を出て、まず木場にある東京都現代美術館に向かいました。そこで開催されている「ライゾマティクス_マルティプレックス」展と「マーク・マンダースの不在」展を見てきました。東京都現代美術館は久しぶりにやってきました。地下鉄の清澄白河駅から歩きましたが、途中に深川資料館があってレトロな町並みが再現されていました。「ライゾマティクス_マルティプレックス」展はテレビで紹介されていて、デジタル・アートの方向性が興味深くて、是非見てみたいと思っていたのでした。彼らは設立15周年を迎える団体で、アーティストやエンジニア、建築家、研究者たちで構成し、美術館では初になる発表をしているのだそうです。アナログなオブジェとデジタルな光と影が織り成す不思議な空間を体験しました。詳しい感想は後日改めます。同館では巨大な彫刻を展示していた「マーク・マンダースの不在」展もやっていて、塑造と木材の構成による始原的な面白さを改めて見せられて、私の心は浮き足立ちました。よくもまぁ、こんな大きな塑造作品をオランダから持ち込んだなぁと思いましたが、土の色に彩られたブロンズ像は、あたかも今まで粘土で塑造されていた現場の臨場感があって、西洋美術として遠い過去から伝承されてきた具象の様式美がずっと凍結されてきた雰囲気を感じました。この展覧会の詳しい感想も後日に改めます。今回の2つの大掛かりな展覧会の図録は後日発送されることになっていて、ギャラリーショップでは注文を受け付けていました。図録が届いたら、それを読みこんで改めてNOTE(ブログ)に起こそうと考えています。次に向かったのは東京国立近代美術館で、ここも久しぶりに訪れました。開催していたのは「あやしい絵展」で、これはポスター等の広報によって知り得た展覧会でした。私たち日本人は微妙な翳を宿した表現が好きなのではないかと思っています。私たちはネットで予約をしてきましたが、ウィークディにも関わらず、かなり多くの人たちが鑑賞していたので、日本が元々陰湿な風土を抱えていて、そこに眠る情念を擽られることを企画した展覧会だったように思いました。退廃的な雰囲気は誰もが一度は好きになる面を持っていて、そうした絵ばかりを集めた展覧会はなかなかの入場者数を獲得するかもしれないと思いました。同展の詳しい感想も後日改めます。今日は2つの美術館、3つの展覧会を巡り、充実した一日を過ごしました。
2021.04.12 Monday
春一番に限らず、この季節は風の強い日が多いと感じます。満開の桜の花びらが風に舞っている様子を見て、今月のRECORDのテーマを思いつきました。「乱舞する群れ」は花びらだけではなく、人間のイメージもあって、例えば画家アンリ・マティスが描いた「ダンス」もそのひとつです。20代の頃、旅したルーマニアやギリシャの民族舞踊も記憶にあり、その躍動感に心を奪われたことを思い出しました。私は映像でしか知らないアフリカの始原的な民族舞踊も興味があります。それらを象徴して記号化するのも面白いのではないかと思っています。乱舞には風に舞う自然現象もあれば、人が紡ぎだす楽曲に合わせて踊る要素もあります。最近はコロナ渦の影響もあって、劇場で舞踏を観る機会がなくなりました。コロナ渦が落ち着けば、暗黒舞踏の流れを汲む集団による舞踏を観に行きたいと思っています。学生時代はアンダーグランド演劇と併行して、私は暗黒舞踏にも出かけました。世代的には土方巽以降の舞踏家がやっていましたが、肉体言語と化した表現に彫刻の空間解釈に通じる世界を見取っていました。今月のテーマを考えているうちに、昔の記憶を手繰り寄せてしまいましたが、RECORDのテーマは1ヵ月分の展開があるので、さまざまなバリエーションを試すことが出来ます。そこがRECORDの長所でもあるのです。この4月から創作活動一本になったことで、RECORDのイメージを膨らませるのには都合が良くなりました。ただ、今月に入って陶彫制作に先走ってしまい、RECORDは下書きのみが先行する悪癖が出てしまっています。イメージの蓄積は日々やっているので、あとは時間をどうにか作って制作をするだけですが、公務員をやっていた頃よりは気分的に解放されているので、すぐ挽回できるだろうと思っています。
2021.04.11 Sunday
日曜日になりました。今日も朝から工房に引き篭もって制作三昧でした。現在、新作の比較的小さな陶彫部品数点を同時に作っていて、今日はそれぞれ陶彫成形が終わっている作品に彫り込み加飾を施していました。このところ日々制作しているので、気持ちがすぐ制作姿勢になり、忽ち集中力が出てくるのを感じています。朝9時から夕方4時までの7時間を、休むことなく工房で過ごしました。昼食はいつも来ている美大受験生たちと取りました。美大受験生たちと書いたのは、今日から受験生が2人になったのでした。前のNOTE(ブログ)で私の身分が教員だったことを明かしているので、この受験生たちは私の教え子です。この子たちと知り合った時は、私は校長職にあったので、直接授業はやっていませんでしたが、美大を希望する子たちが校長室へ相談に来るようになって、私が面倒を見ることにしたのです。染織科希望の子は高校3年生になったばかりで、昨年度は毎週日曜日になるとデッサンを描きに工房に来ていました。この4月から美大受験用の予備校に通うようになり、これからは予備校で出される課題をやりに工房へ来ることになりました。もう一人の受験生は高校2年生になったばかりで、以前から通っている子のひとつ後輩になります。この子はグラフィックデザイン科を希望しています。相原工房には今まで多くの教え子たちが出入りをしていました。彼らは大学に入った後も、大学での課題をやりに工房にやって来て、時折私の作品を手伝っているのです。私の個展の搬入搬出やロフトへの荷揚げなどの他、砂マチエールの作業などもやってくれているので、私は彼らをスタッフと呼んでいます。スタッフは美大を卒業して社会に出る年齢になると、工房には顔を出さなくなりますが、大学でのさまざまな経験を持ち込んでくる子もいて、失恋を思い出してすすり泣く子もおりました。彼女にとってみれば課題に集中していた工房の空間と時間が何より身近だったのでしょう。そのスタッフたちに私は背中を押されて、自らの制作に励む起爆剤として彼らを利用しています。彼らも工房にいると集中力が増すらしく、お互いが良い関係を築けていると思っています。これからも毎週末は受験生が出入りすることになりそうです。