2017.08.14 Monday
9世紀のアイルランドの物語を描いた長編アニメーション「ブレンダンとケルズの秘密」を横浜のミニシアターに観に行ってきました。ヴァイキングに両親を殺された若い修道士ブレンダンが、厳しい修練の果てに「ケルズの書」の最も神々しいページを描くことを縦糸に、ケルズ修道院長である叔父とブレンダンの葛藤を横糸に、「ブレンダンとケルズの秘密」は物語を紡いでいます。「ケルズの書」を書くためのインクの実を探しに魔法の森を彷徨うブレンダン、そこに妖精アシュリンが登場してブレンダンを助けてくれます。さらに細かい文様を描くためにクリスタルが必要で、森の中にある「嘆きの地」へ足を踏み入れたブレンダンは、アシュリンの必死の救済でそれを手中にするのです。ケルズ修道院にはヴァイキングの侵略が迫っていて、修道院の壁の内側では人々が混乱と闇に打ち拉がれていました。ブレンダンが書き上げた「ケルズの書」で人々の心に光を灯すことが出来るのか、聖なる本が人々の魂や慈しみと秩序を与えていけるのか、この物語はブレンダンと叔父の和解を結末として、神秘と伝承に満ちたファンタジーに仕上がっていました。ケルト文化はヨーロッパでは異質なものではなく、ヨーロッパの中心文化であるヘレニズム的市民社会やヘブライ的宗教性や道徳観では説明の出来ない、ヨーロッパに息づく文化の一つなのだということをどこかで読んだことがあります。日本に馴染みのある自然信仰や多神教がヨーロッパにもあったというもので、ケルト文化の組紐文様や渦巻文様は生命の継続や再生を意味していることもどこかで聞いたことがあります。ケルト文化の渦巻文様が縄文土器の装飾に似ていると指摘している書籍もあります。ケルト文化に興味関心が湧くのも、日本人の自分には自然なことのように思えます。アニメーションの背景を彩る装飾の美しさに心奪われたのは、きっとそんな日本人としてのアイデンティティがあるためかもしれません。
2017.08.13 Sunday
三連休の最終日になりました。今日も朝から工房に行きました。中国籍のスタッフも来ていました。彼女は工房の床に畳大のパネルを置いて、下塗り材を施していました。現在も大きめの平面作品をやっていますが、さらに大きな作品に取りかかるようで、彼女の静かな意欲を感じました。美大の助手を勤めて3年経ち、アーティストとしてここで何とかしなくてはならないという気概を持っているのが私にも伝わってきました。私は先日から不具合を生じている土錬機の分解掃除をしました。この土錬機の分解掃除は2回目です。前回は中に詰まった陶土が固まって、それを取り出すために分解したのでした。今回は業者に電話したところ、モーターに付加がかかっているのではないかという返答があったので、やはり詰まっている陶土を全て取り出すことにしたのです。動力部分と土連部分を連結するボルトナットが錆びていて、これを外すのに一苦労しました。土連部分はプロペラ周囲に陶土がこびりついているため、プロペラとそれを覆う金属を本体からはずすのにも苦労しました。こびりついていた陶土を剥ぎ取り、漸く掃除が終わったところで、土錬機を元に戻しました。業者の指示通り、暫く電源を入れて動かしてみました。とくに問題がなく1時間程度モーターは普通に動きました。土錬機の生産元の信楽町にお盆明けに連絡して、専用油を送ってもらおうと思っています。それにしても今日は疲れました。汗が噴出しシャツがびっしょりになりました。次回からは新作の木材部分に取りかかります。陶彫はもう少し時間を置いてから再開したいと思いますが、このまま土錬機が元通りになるのかどうか不安もあります。
2017.08.12 Saturday
三連休の中日です。今日も朝から工房に篭って、昨日作った陶彫の成形に彫り込み加飾をやっていました。これで新作の陶彫部品は2点目になり、乾燥を待つことにしました。昨日から土錬機の不具合があって、今月の目標にしていた陶彫部品6点は出来そうになく、今日までの2点で陶彫は暫し休むことになりそうです。今日も朝から中国籍のスタッフが来ていました。彼女も自身の制作に熱心に取り組んでいました。今日特筆すべきことは工房の陶彫制作のことではなく、自宅で夜の時間帯にコツコツやっているRECORDのことです。一日1点ずつポストカード大の平面作品を作ることを自分に課して10年以上が経ちました。これをRECORDと称していますが、最近は下書きだけを毎晩終わらせて、彩色や仕上げを後日に回す傾向にあり、それが山積みされていました。休庁期間に入ってから一念発起をして、山積みされたRECORDの彩色と仕上げを懸命に進めていました。今晩やっと追いつき、山積み解消となりました。初心の頃のように毎晩しっかり完成させていたら、こんな思いをしなくても済んだのにと思いつつ、これからは気持ちを改めていこうと決めました。RECORDは4000点近い作品があります。ここまでくると陶彫に匹敵する表現活動になっていると言っても過言ではありません。夕方は家内を整骨院に車で迎えに行って、そのまま横浜のミニシアターに映画を観に行きました。私は前からアイルランドに伝わるケルト文化に興味を持っています。古代の渦巻模様が残る遺跡を図版で見たときから、その装飾性にも関心があります。ダブリン大学図書館に所蔵されている「ケルズの書」も一度見てみたいと思っています。そんなテーマを扱った長編アニメーション「ブレンダンとケルズの秘密」が上映されているのを知って、早速観に出かけたのでした。アニメはあらゆる場面で画面構成が美しい一言に尽きると感じました。デザインの水準の高さも然ることながら、緻密な中世絵画を見ているような錯覚を持ちました。平面性を追求した画面が滑らかに動いていく完成度の高さに驚きました。内容や感想は後日改めますが、ケルト文化に関する興味が益々湧いてきて、本腰を入れて研究してみようかなぁと思います。
2017.08.11 Friday
今日は山の日です。今日と週末を足して三連休になりますが、職場は休庁期間に入っていて、そのおかげで今週は年休を取得して休んでいるため、三連休の有難味は半減しています。工房での制作は良い具合に進んでいて、充実した夏季休暇になっていると実感しています。今日は久しぶりに若いスタッフが工房にやってきました。彼女は度々NOTE(ブログ)に登場している中国籍のアーティストで、大きなパネルに波型をモティーフにした作品を作っているのです。先日、彼女は家内と懇意にしている呉服屋さんで浴衣を購入して、八王子のお祭りに出かけたようです。彼女が言うに自分の部屋ではなかなか制作が進まないので、今日は工房に顔を出したのでした。私は先日大きなタタラを5枚作っていたので、それを使って陶彫部品の成形をやっていました。新作の陶彫部品としては2点目になります。明日は成形した部品に彫り込み加飾を施します。さらに陶土を土錬機にかけようとしたところ、モーターの不具合が生じました。時折、動力が停止してしまうのです。これはいよいよ分解掃除をして、業者に見て貰うしかないと思いました。今はお盆休みに入っているので、今月下旬に連絡を取ろうと思います。この土錬機は工房にやってきて何年経ったのでしょうか。動力に変速ギアもないし、単純な作りなので滅多に壊れないはずと思っていましたが、いざ使えなくなると大変不便です。今が来年の個展からすると一番遠い時期なので、修理するとなれば不幸中の幸いなのかもしれません。新作の陶彫は暫く休んで、木材の加工を進めようと思います。来年の新作は、大きなテーブル彫刻の他に小さめのテーブル彫刻を複数作っていくイメージがあるため、近々木材店に素材を見に行こうと思っています。今日作った陶彫部品は明日も作業続行です。
2017.08.10 Thursday
祈りを捧げる時、人は両手を合わせて合掌します。その姿は宗教や宗派を超えて祈る姿の美しさを内面から醸し出して、信仰の薄い私ですら感銘を受ける時があります。両手を合わせる合掌は、どんなところからきているのでしょうか。このお盆の季節に先祖の墓参りに行って自然に手を合わせる行為に、何故このようなことをするのか疑問をもったのは私だけでしょうか。今朝、自宅に配達されていた朝日新聞の小欄に、偶然目に留まった箇所があり、合掌のもとになったであろう一文がありました。それは「折々のことば」欄で、筆者は鷲田清一氏です。宗教学者山折哲雄氏の一文を取上げて解説した箇所が、私の心に引っかかりました。短いので全文掲載させていただきます。「永平寺で坐禅の手ほどきを受けた宗教学者は、雲水たちが沢庵をかじるときも汁をすするときも一切音を立てないのに驚く。それはすぐに見習えたが、食器をお膳に戻すときにどうしてもカタッと音がする。見れば雲水は食器にいつも両手を添えていた。そして、何かを両手で大切にいただくその作法が合掌の姿に結晶したのではないかと思い到る。」この小論の中で、何かを両手で大切にいただくその作法云々、という箇所が私の気持ちにストンと落ちました。相手に両手を添えて書類を渡す、相手から何かを受け取るときは両手を差し出す、それは職場でよくある行為で、人を敬う無言のコミニュケーションなのかもしれません。合掌に到る行為は何も信仰だけではなく、人間関係の中でも通用すると考えます。寧ろこんなちょっとした気遣いが職場環境を円滑にするとも考えられます。