Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • 金曜日は勤務終了後に展覧会へ
    今日は私用があって2時間ほど年休をいただきましたが、年休を取らなくても金曜日の夜は美術館の開館時間が延長されているため、仕事帰りに美術館に立ち寄ることが可能です。私用はあっという間に終わり、今日は家内と連絡を取って、東京の美術館に行くことにしました。後輩の彫刻家が毎年二科展に出品していて招待状をいただいているのです。二科展の会場は国立新美術館で、公募団体としては規模が大きく見応えのある作品もあって、私は毎年必ず見に行っています。後輩の彫刻家は抽象的な木彫作品を作っています。彼は技術面で優れていて、厚板を刳り貫いて有機的な文様が立体化された作品を作っています。今年は球体に取り組んでいました。球体は空洞になっていて、表面には彼らしい文様が刳り貫かれていました。相変わらず巧みな作り込みだなぁと思いました。技術が進むと軽ろやかな形態になり、重量を感じさせなくなります。その軽やかさは表現の売りになりますが、危険も孕んでいます。彫刻は技術面も重要ですが、造形に対する精神性が問われます。その度合いが工芸やデザインよりも強いのではないかと私は感じています。彫刻が人の心を打つのは技巧ではなく、もっと別の次元です。技巧に走りすぎると、表現として訴える力が萎えてくるのです。技巧を超えるインパクト、空間に置かれる立体構造物にどんな意味を持たせるのか、哲学を要する造形思考がそこにあります。そんなことを考えながら、彼の力作を見ていました。その後、六本木の国立新美術館から上野の国立西洋美術館に移動し、話題の「アルチンボルド展」を見ました。すでに延長開館時間になっていましたが、多くの人が来ていました。「アルチンボルド展」の詳しい感想は後日にしたいと思います。
    「美術家の健康と安全」について
    今年の7月に日本美術家連盟から「美術家の健康と安全」という冊子が送られてきました。これは造形美術の分野別ハンドブックで、画材や彫刻素材、溶剤や接着剤などが細かく記載されていて、とても便利です。とりわけ危険有害性物質や有機溶剤は、安全に扱うための注意があって、有り難いなぁと思いました。彫刻は素材によって有害物質があり、扱い方や対処法の記載が的確です。作家からの聞き取りがあるらしく、注意点に書かれたものは自分でわかっていても一読した方がいいなぁと思いました。自分が扱ったことがない素材に関する知識や道具の種類にも私は興味関心があるので、この素材を使うにはこんなことを心がけなければならないのかと頁を繰りながら思いました。他の分野ではとりわけ版画に注目しました。銅版画は私が新たに取り組みたい分野ですが、腐食液を使用するので、この扱いに留意しなければならないと思いました。市販されている他のハンドブックに見られない具体的な製版方法や使い終わった後の処理の方法まで書かれていて、作家の目線による注意喚起は大変役立つものと思います。ただし、作家以外の人には詳細すぎる部分もあるので、これはあくまでも作り手にだけ伝わるハンドブックなのだと理解しています。
    9月RECORDは「のびる」
    RECORDのテーマの内容として、今月の「のびる」は新しいものではありません。「のびる」は漢字で記すと、「伸びる」や「延びる」があり、実際に伸びてゆくものがあれば、延長されるものがあって、イメージの発展性はあるかなぁと思っています。このテーマを思いついた当初は、夏の夕暮れに見られる影法師のような画像が浮かんできました。夏に草木が生繁って伸びていく情景も浮かびました。春先の「のびる」とは違い、この時季の「のびる」は、次の段階で枯れていく情緒を醸し出して、光と影のコントラストに哀しみを見るような感覚があります。そんな情景を象徴化して描けるかどうかわかりませんが、挑んでみようと思っています。9月に入ってからの私は、夏の名残りを惜しむ間もなく、仕事に追われる日常ですが、多少でも余裕を持ちたい気分です。RECORDは一日1点制作に取り組む平面作品で、そもそもRECORD自体が余裕を与えてくれない媒体ですが、書類の忙殺を免れている現在は、職場でも頭の中で画像をイメージすることは可能かなぁと思っています。今月も日々頑張っていきたいと思います。
    夜の工房制作に思うこと
    先週末のNOTE(ブログ)に、ウィークディの夜に工房に行けるかどうかわからないという曖昧なことを書きましたが、今週は大きな陶彫成形に彫り込み加飾を行うべく工房に通っています。夜になると涼しくなって制作に向く気候になったことが要因ですが、仕事から帰ってくると既に疲れていて、工房に行こうかどうか迷うこともあります。工房に行ってしまうと、そこには魔物が棲んでいるので、疲れを忘れて制作に励んでしまい、NOTE(ブログ)やRECORD制作に支障が出ることもあります。ただし、確実に陶彫は進みます。夜の制作は就寝前に行うNOTE(ブログ)やRECORD制作のことを考えると、工房にいる時間は最大2時間かなぁと思っています。1時間を回ったくらいで引き上げるのがちょうど良くて、この程度なら他のことや翌日の勤務にも影響がないと考えています。毎晩1時間くらい継続して制作出来ることが理想です。習慣になればいいのですが、日によって超過勤務になり、遅く帰宅した時は無理かなぁと思っています。夜の1時間は、塵も積もればの諺通り、着実な進歩が見込まれるし、陶土の乾燥具合も確かめられるメリットがあります。とりわけ彫り込み加飾は、陶土の乾燥や軟度を気に留めて作業をするので、日々の制作がベストなのです。昨晩と今晩は工房で彫り込み加飾の作業をやりました。ここ2日間は職場を早めに切り上げているので、夜の工房制作が出来ました。
    映画「少女ファニーと運命の旅」雑感
    先日、横浜のミニシアターにフランス・ベルギー合作映画「少女ファニーと運命の旅」を観に行きました。この映画は別の映画を観た際に予告編が上映されていて、物語の輪郭が自分の好きな筋立ての作品であることを知って、必ず観ようと決めていたのでした。私が好む理由は、社会的に迫害を受けていた弱者が、未来に繋ぐべき闘争や脱出を試みる物語を、幾度となく映画で観ていて、そこに自分の人権感覚や生命謳歌に対する確信を持てるからです。ましてや子どもたちが主人公の作品は、絶対に裏切られることがありません。「少女ファニーと運命の旅」も期待通りの作品でした。1943年のフランスで支援組織に匿われていたユダヤ人の子どもたち。密告により施設を追われることになった子どもたちは、ナチスドイツ軍を避けながら、鉄道を乗り継ぎ、スイス国境まで逃走をしていくのです。そのリーダーを任されたのが13歳の少女ファニー。気丈に振る舞う小さな指揮官にも挫けそうな場面があったり、幼い子どもたちは遠足気分だったり、天真爛漫な集団は、やがて試練を乗り越えていくうちに強いチームとなり、固い絆で結ばれていきます。これは実話を基にしていて、当時の指揮官ファニーはまだ存命で、映画のインタビューに答えています。映画で描かれていない出来事は、という質問に対し「国境のフェンスを越える手前で、ドイツ兵を見つけて、木の陰に逃げ込んだ時のことでした。ジョルジョット(妹)の靴が脱げて『靴が…靴が…』と泣き始めたので、私は血が出るほど必死に、彼女の口を押えました。」とあります。鬼気迫る鮮明な記憶とともに、映画では実際の出来事をうまく反映しているとファニーさんは評価をしています。現在の国際情勢を考えると、「少女ファニーと運命の旅」は対岸の火事とは思えない状況があります。人類は嫌というほど戦争被害を経験してきたはずなのに、昨今のニュースで伝えられている隣国の国際社会への挑発を、私はまるで理解できません。私は戦争を知らない世代ですが、映画等の表現でその無残さを理解しています。近い将来、現状の国家同士の鍔迫り合いを告訴する表現活動が登場する日が来るのでしょうか。