2017.09.23 Saturday
今日は秋分の日でした。職場は週休2日なので、連休の実感はありませんでしたが、このところ秋の気配を感じているのは確かです。今日は早朝に工房に行って、明日の陶彫成形のために大きなタタラを7枚作りました。午前10時くらいに自宅を出て、東横線都立大学駅にある画廊に向かいました。茨城県笠間近くで陶芸をやっている佐藤夫妻が個展をやっているので見に行ったのでした。奥さんの和美さんにお会いできました。このところなかなか笠間に行けないことをお詫びして、最近の佐藤陶房の新作を見せてもらいました。相変わらず土臭いモダンさがあって気持ちが良くなりました。私とは同世代なので、お互い健康に気遣ってこれからも仕事を続けていきたいものです。次に東横線から日比谷線に乗り換えて銀座に向かいました。職場に私と同じ二足の草鞋生活を送っている職員がいます。彼はモダンアート協会に属し、例年仲間とグループ展をやっているのです。会場は美術家連盟画廊でした。私は連盟に所属しているくせに事務局に顔を出したことがなく、この機会のグループ展にお邪魔するだけになっています。彼のタブローは、消去された空間がますます冴えて切れ味が良くなった印象がありました。彼も私と同世代なので、ずっと創作活動を続けて欲しいと願って止みません。次に私が向かったのは渋谷でした。Bunkamuraザ・ミュージアムで明日まで開催中の「ベルギー奇想の系譜」展を、終了間近になって慌てて見に行ったのでしたが、会場は大変混雑していました。最近になってボスやブリューゲルの人気が高まり、加えてマグリット等近現代のアーティストの作品が展示されていたので、混雑していることは分かっていました。私は奇想の芸術が好きなので満足を覚えましたが、ベルギーという国を美術史の観点から見つめたことがなかったので、地域性を含めて考えてみたいと思いました。「ベルギー奇想の系譜」展の詳しい感想は後日に改めますが、展覧会が終了した後になってしまうことをご容赦ください。帰路に蒲田で画材を購入して自宅に戻ってきました。今日は秋分の日に相応しい芸術鑑賞の日になりました。明日は制作を頑張ります。
2017.09.22 Friday
昨夜、常連になっている横浜のミニシアターに米英合作の映画「ウィッチ」を観にいきました。これは魔女に纏わる伝説や伝承を基に、1630年代に遡った時代を描いていて、場所は米国ニューイングランドに設定しています。敬虔な清教徒である一家が人里離れて暮らし、信仰心だけを頼りに生活を営む様子は、観ている私を始源的で魔訶不思議な世界に導いてくれました。それは時代考証に基づいた現実感溢れる生活環境を描いていて、その中でも周囲の大自然が持つ潜在的恐怖を感じさせてくれました。森に彷徨う姉弟に忍び寄る得体のしれない何か、幼い子らが口ずさむ謎のような童謡、夜の蝋燭や暖炉の炎、悪霊が登場するわけではないのに、ひしひしと伝わってくる生活の中に存在する恐怖は、映画全体の演出とも相俟っているようにも思えます。まず色彩がグレートーンで美しいと感じました。音響が不協和音に効果を持たせ、観客を中世の闇の世界に誘っていました。悪魔憑きを表現する子どもたちにも感心しました。とりわけ長女トマシンは宗教に溺れない強さを持っていて圧倒的な存在感がありました。演じたテイラー=ジョイの美しさにも魅了されました。映画を観終わった後、やはり私が理解できないのはキリスト教の宗教観でした。神との契約、それに対峙する魔女の図式がしっくりこないのは、私の成育歴で培われた感覚であろうと思います。家族の絆を、特定宗教を中心に据えて守り抜こうとした一家が、自然の畏怖を前にして、その心理反映を憑依という圧迫によって、次第に崩壊していってしまう、その過程を描いた映画なのかなぁ、私が下したこの映画の解釈ですが、いかがでしょうか。
2017.09.21 Thursday
私たちの職種は超過勤務が常態化していて、新聞等で指摘を受けることが少なからずあります。私が今まで転勤してきたどの職場でも、意欲的な職員が多く仕事だけが生きがいと思っている人がいる反面、過労死ラインを超えている人も見受けられました。これに関しては、国や市町村で対策を急いでいる現状がありますが、私たち管理職の勤務軽減努力も必要です。私も若い頃にこの職種に就いてから超過勤務が当たり前の生活となり、生涯の夢である創作活動との狭間で揺れてきました。自分自身を取り戻せたのは仕事に慣れて余裕が持てたからで、それまではこの職種はそんなものだろうと思っていました。管理職になった今は、若い世代の人たちにそんな思いをさせたくない気持ちで、私はワーク・ライフ・バランスを提唱するようになりました。私もワーク・ライフ・バランスを実践し、創作活動にも弾みがつくようになりました。余暇が楽しめるのは、ウィークディの仕事にも効果があると今では実感しています。残業せず職場をでて、私は帰りがけに美術館へ行くことがあり、その日は何とも言えない充実感がありました。今日は常連のミニシアターに行きました。観た映画は米英合作のダーク・ファンタジー・ホラーの「ウィッチ」でした。中世の魔女を現代的解釈を加えて描いた野心作で、敬虔なキリスト教信者の家族を、中世から残存する伝承を基に物語を紡いでいました。映像全体を通して色彩を控えた美しさが充満し、音響効果も際立っていました。詳しい感想は後日に回しますが、今日はワーク・ライフ・バランスとして充実した一日を送ることができました。
2017.09.20 Wednesday
「陶彫。『発掘』シリーズⅨ。巨大作2点。1つは4本柱の台に吊り下がる筒型板。もう一つは帯状文や四角い板などで構成された長大な台。発掘品みたいな古びた感じが特徴で、見処。だが以前に比べ、整理され、すっきりした印象を受ける。他に小さい筒型の置き物も5点。」ビジョン企画出版社が出している新報掲載の一文です。執筆者は瀧悌三氏で、個展の初日に来てくれました。図録を差し上げてお話をさせていただきました。思えば日本の古代遺跡である直弧紋について提言していただいたのも瀧氏でした。毎回作品を見ていただいて、率直な意見をいただきましたが、すっきりした印象という話には及びませんでした。1つの素材を使って長い間作品を作っていると、イメージ的にも思考的にも整理されてくる傾向があります。私の場合は緩慢に流れてしまうのを怖れていて、初めのイメージとそれを裏付ける思索をじっくり煮詰めていくことを何よりも大切にしています。その上に技巧があると考えているのです。陶技法も装飾性が目立つようになれば、それはもはや彫刻とは言えないと思っています。長く続けていればカタチが整理されてくるのは当然ですが、それならばより深い簡潔性を求めていきたいと考えています。彫刻の基本であるモノが存在する空間とは何か、私の場合はモノが発掘されて地表に出た時の驚き、発掘現場の空気の震えのような状況を見る人に伝えていければいいと思っています。
2017.09.19 Tuesday
夏に台湾に出かけた目的は、國立故宮博物院の所蔵する宝物を鑑賞することでした。宝物はどれもが素晴らしく、すべての作品を目に焼き付けておきたいと思いましたが、その数の多さに圧倒されて、所蔵品の資料を求めてミュージアムショップに駆け込みました。ショップでは日本語に翻訳された資料の中で所蔵品を網羅している書籍がないものか探してみましたが、全所蔵品を一冊にまとめることは不可能だろうと思いました。おまけに日本語の書籍が少なかったので、自分が興味関心を覚えた分野に限ってショップに並んでいたものを物色していました。「国宝菁華」は日本語に翻訳された冊子の中で「器物篇」と「書画・図書文献篇」の2冊がセットになっていて、重厚な装いが気に入りました。これには主だった所蔵品が掲載されていて、図版も鮮明だったので購入してきました。今も「国宝菁華」を飽くことなく眺めています。自分が興味関心がある西周晩期の銅製品に彫り込まれた古代文字の美しさが目に留まります。古代文字を使ってどんなことが書いてあるのでしょうか。先月のRECORDは「ひびく」というテーマでしたので、心に響いたこれらの作品を描きました。水墨画では誇張されたところがなく、精密な写実に基づいた描写が目立ちます。日本のデフォルメされた世界とは違い、現実の生活を描いているように感じます。しみじみとした味わいが漂っていて、歴史に裏打ちされた確かな表現力が伝わってきます。私たちが考える東洋的で高いレベルを持った作品群がここにあります。