2015.06.17 Wednesday
20世紀を代表するシュルレアリスムの巨匠ルネ・マグリットは、自分にとって馴染みのある芸術家です。十数年前の日本での大がかりな展覧会も見た記憶があります。今回は混雑を避けて金曜日の夜の時間帯に家内と六本木の国立新美術館に出かけました。ゆっくりと鑑賞できて良かったと思いました。マグリットはシュルレアリスムの古典とも言うべき画家で、見慣れた画風であるにも関わらず、やはり面白さが伝わってきました。その中でもニューヨーク近代美術館からやってきた「光の帝国Ⅱ」の面白さを今回改めて確認しました。マグリット自身が語っているコトバが図録に掲載されていました。「この夜と昼との喚起は、私たちを驚かせ、魅了するような力を帯びているように、私には思われます。私はこの力を、詩と呼びます。この喚起がこのような詩的な力を持っていると私が信じているのは、何と言っても、私が常に、夜と昼とに対して最大限の関心を抱いているからです。~以下略~」街灯が灯る夜の風景に、白い雲が浮かぶ青空が同じ画面に共存している風景画は、綿密に計算されて描かれているからこそ不思議な説得力があるように思います。正確な具象絵画ではあるけれど、どこか超自然な世界が、見る人を魅了するシュルレアリスムの王道が、そこにありました。
2015.06.16 Tuesday
ジークムント・フロイトはウィーンに関わりの深い20世紀最大の精神分析の権威です。私は1980年から5年間ウィーンに滞在していましたが、フロイトの業績に触れることなく過ごしていました。フロイトの存在は知っていました。あまりにも偉大な学者で、自分の辿々しい幼稚なドイツ語では太刀打ちできないと、初めから思っていたので、原書を開くこともなく、自分の得意とする芸術以外の専門分野には、敢えて近づかないことにしていました。今回読もうとしているのは、フロイトの有名な著作「Die Traumdeutung」です。自分が日本での学生時代にフロイトの概観を辿った時は「夢判断」と邦訳されていた著作ですが、deutungには「解釈」という意味もあり、中公クラシックスから刊行されている「夢解釈」(フロイト著 金関猛訳 中央公論新社)上・下巻を読むことにしました。本書の前書きで「判断」より「解釈」が適当とする一文がありました。読んでいるうちにその意味するところもわかるでしょう。読書にどのくらい時間がかかるものか、時として途中で浮気をして軽い書籍を差し挟むこともあろうかと思います。昨年のハイデガーに続く今年のフロイト。原書はドイツ語でありながら、まるで境遇の異なる世界で活躍した2大思想家。ただし学問の追究に民族の壁は存在しません。それは芸術文化も同じです。フロイトが唱えた学問は、精神分析学や臨床心理学となって、現在の職場にも応用され、身近な医療になっています。その源泉を辿る思索の旅に出るのは、現在の自分にとって充分意義のあることだと考えます。この書籍を通勤時間の友にするのには、あまりにも気難しい友と言わざるを得ませんが、じっくりと時間をかけて付き合っていこうと思っています。
2015.06.15 Monday
私は勤務時間の約1時間前に出勤して、職場が取っている4社の新聞に目を通します。自分の業界に関する記事は、時に複写してスクラップをしていますが、美術的な記事やその他の内容にも目を凝らします。今日は新聞休刊日なので、昨日の日曜版がテーブルに置かれていました。その中で朝日新聞の「シュルレアリスム」に関する記事と日本経済新聞の「文化欄 なぜ『6時半』か」に注目しました。日本経済新聞の「文化欄」はたわいのない記事でしたが、文面に心を落ち着かせる不思議な雰囲気がありました。寄稿した天沢退二郎氏は自宅の書棚に詩集があり,自分は詩人として知っていましたが、記事では日常の何気ない風景が目前に広がり、自分も共感する「体内時計」が脱力した文章で描かれていて仕事前の緩やかなスタートタイムに最適でした。「体内時計」は自分も意識しています。今は公務員として決まった時間に職場に出勤していますが、退職後はこの習慣が「体内時計」として残り、きっと自分は6時には起床してしまうだろうと思っています。週末もつい6時に起床してしまい、工房へ行くまでの時間をダラダラと過ごしているのです。工房では9時にスタッフがやってくるので、それまでは怠惰に過ごすのが休日を休日と感じる唯一の楽しめる時間帯と言えるのです。このような「体内時間」は誰にも存在しているのではないかと思っています。
2015.06.14 Sunday
今日は若いスタッフ2人と私と同じ職場で働いている女性スタッフが工房に来てくれました。私以外は全員女性でしたが、先日まで用意していたエアキャップのついたビニールシートで、「発掘~群塔~」の7点と「発掘~丘陵~」の4点を手際よく梱包してくれました。梱包作業は2時間程度で終了し、残りの時間はそれぞれが自分の創作活動に戻りました。私は陶彫部品を収める木箱作りを行いました。今日の午後だけで4箱出来ました。搬入日までに何とかなりそうだと思いました。若いスタッフの一人で中国籍のアーティストがいます。次の火曜日に展覧会があって、大学から出品するように要請されているらしく、水を描いた大きな作品2点を額装しました。パネルに透明アクリル板を張り付ける作業でしたが、自分がネジ留め等を手伝いました。なかなか見事な作品になり、展覧会が楽しみになりました。もう一人の若いスタッフはサブカルチャー的な要素の強い平面作品を描いています。現在連作に挑んでいて、通常の彼女の作品ならパソコンで仕上げるところを、今回は工房を使ってアナログに挑みます。もともと美大の油画科出身なので、油絵の具は学生時代に扱っていて、久しぶりの原点返りなのかもしれません。どんな雰囲気になるのか私も楽しみにしています。同じ職場の人は工房で油絵を学んでいます。彼女は美術の専門教育は受けていませんが、とても優れた絵画センスを持っていると私は思っています。私と同じように公務だけではなく、生涯学習として美術の道を歩もうとしているのです。工房に出入りしている事情は人それぞれですが、撮影や梱包を手伝ってくれるのが有り難いと感じるこの頃です。
2015.06.13 Saturday
「発掘~群塔~」と「発掘~丘陵~」の搬入用梱包を始めています。「発掘~群塔~」は木彫の接合された厚板7点、「発掘~丘陵~」は厚板の積層による土台4点があり、それらは全てビニールシートにエアキャップを貼り付けた覆いを用意しました。1枚のシートの大きさは約4畳で、計11枚用意しました。明日から実際の梱包作業に取り掛かりたいと思っています。陶彫部品を納める木箱も用意したいと思っています。今日はその木箱にする板材を購入してきました。木箱は多めに見積もって15箱作ろうと思っています。梱包は作品を保管する上で大切な作業です。私の作品は集合彫刻なので、それぞれの部品を箱詰めして、搬入日にギャラリーで組み立てます。梱包は創作行為ではないため、大切なことはわかっていても今ひとつ仕事に意欲が湧きません。毎年この時期は新作と併行して梱包作業をやっていますが、今年は時間が押しているため、新作への取り組みは後回しにして、梱包のみを行おうとしているので、退屈しているのかもしれません。それも仕方ないことで、とにかく7月の搬入日までに梱包を終わらせないといけないので、頑張っていくしかありません。