2012.01.23 Monday
「発掘~混在~」は今年の夏の個展で発表する三双屏風からなる半立体の作品です。つまり畳大のボックスを縦に6つ、屏風のように置いてみようと考えているのです。ボックスには陶彫部分と木彫部分があって、それを仕切る木枠があります。木枠は作品の表面に出てきませんが、割合を決定する重要な役目があります。その木枠部分が昨日完成しました。木枠は所々曲面があります。厚板を鑿で彫って曲面を作りました。この木枠の上にレリーフした木彫の板をのせて固定するのです。私のHPのギャラリーページに「住居」と「棟」という床置きの作品がありますが、「混在」はこの「住居」「棟」を壁に立たせた作品と考えると、現在作っている「混在」のイメージが掴みやすいかもしれません。木彫と言っても表面には全て砂マチエールを施すので木材には見えなくなります。陶彫と一体化を図るために砂で表面を覆うのです。今のところ60パーセントの制作工程まで辿り着きました。図録撮影の日まで精一杯やっていかないと間に合わなくなります。毎年こんな綱渡りをやっています。締め切りまでの緊迫感に慣れはしたものの作業の多さには一向に慣れません。
2012.01.22 Sunday
朝早く業者から連絡があり、エッチングプレス機が工房に届きました。新品ではありません。不要となった古いエッチングプレス機を頂いてきたのです。修理代は少々かかりますが、新品を買うより安上がりです。学生時代、ドイツ表現派の影響で木版画に手を染めていた私は、ほとんど銅版画をやったことがありません。でも銅版画をいつかやりたいと思っていて、その頃から30年も経ってしまいました。当時自分の後輩が手の込んだ技法を使った銅版画をやっていて、それを自分でもやってみたいと思っていました。後輩に技法を真似てもいいかと言ってみたところ、OKという返事が返ってきました。それはエッチングとアクアチントの併用による不思議な世界が表現できる方法です。あと数年で定年になる私は、現在の陶彫や木彫に加えて銅版画をやりたいのです。30年越しの念願を叶えるために以前からエッチングプレス機を探していました。ようやく手に入れたエッチングプレス機です。制作できるその日がくるまでイメージを貯めておこうと考えています。
2012.01.21 Saturday
今日は大寒で、その名の通りの寒い一日になりました。今日は制作三昧とはいかず、昼ごろに職場に出かけて行きました。職場近くの地域での賀詞交換会に出席するためで、工房に帰ったのは午後2時過ぎになりました。制作は遅々として進まず、明日に期待をかけたいと思います。それにしても工房の寒さは凄いもので、仕事着を重ねて着ています。ストーブの傍を離れられず、少し作業してはストーブの傍に暖を取りに戻る繰り返しです。工房は断熱材はなく内装もしていないので、気温は外と変わりません。雨風が凌げるだけの建物です。農業用倉庫として建てたものなので、仕方がないのですが、寒い日が続くと身体に負担がかかります。思い出せば夏も暑くて耐えられない日がありました。定年になれば時間が出来るので、気候の厳しい時は制作を止めるのですが、今はそういうわけにはいきません。身体を気遣いながら制作を進めたいと思います。
2012.01.20 Friday
横浜では雪は滅多に降らず1年のうちでせいぜい数回程度です。その雪が今日降っていました。早朝の出勤でバスを待っていた時に寒くて手が悴んでいました。明日の工房は相当な寒さを覚悟しなければなりません。自分は体調がなかなか戻らず、この1週間はマスクをして過ごしました。喉にまだ違和感があるし、咳が止まりません。寒さなのか疲れなのかよくわかりませんが、仕事は休めず、制作は佳境に入るという按配です。公務や創作活動の調子が良いような気がしているので、何とか体調を戻したいところです。身体を冷やしてはいけないという当たり前なことを、体調不良になってようやく気付いたのです。明日からの制作で思い切り頑張れるように今晩は早く寝ようと思います。
2012.01.19 Thursday
画面の下半分には麦穂がたわわに実っている様子が描かれ、農夫がそれを眺めながら一人佇んでいる絵があります。アメリカ人画家ベン・シャーンによる「至福」という題名のついた絵です。「至福」はテンペラの他に同じテーマによるデッサンや版画等がありますが、自分は大きな画面に広がる世界とパステルカラーのような微妙なニュアンスをもつテンペラが一番気に入りました。先日出かけた神奈川県立近代美術館葉山館で開催されている「ベン・シャーン展」で、自分の印象に強く残った作品を何点か挙げるとこの「至福」が入ります。まるでドライポイントで描いたような線描。塗り残しのような淡い色彩。FSA(農村安定局)の写真家ドロシア・ラングの撮影したものがイメージの土台になっているようですが、「至福」という題名がついているにも関わらず、農夫の表情はどことなく不安な面持ちをして神妙な雰囲気を与えています。麦穂はデザイン化されて気持ちのよいリズムを感じます。そうしたグラフィカルな画面が一瞬にしてその世界に誘いこむ効果を上げていると思います。図録によると「一旦取りかかったがその後3年放っておいた」とシャーンは言っているようですが、未完成と思しき部分も全体の中で生きていて、これで良しとする説得力があると私には思えました。