2011.02.07 Monday
今年のRECORDは抽象表現による平面構成です。正方形をベースにした画面をまず作り、そこから構成を考えます。今まで以上に抽象に拘った連作になっています。いったいこの表現で自分がどのくらい耐えられるのか、展開の可能性はどこまで続くのか、自分を試そうと思っているのです。彩色にも条件をつけていて、1ヶ月ごとに同じ方法で彩色していきます。あえてマンネリ化した世界に自分を押し込めて、そこから何かを掴もうとしています。先月の彩色は「擦れ」を使ったものでした。今月は「滲み」を使います。いわゆる「垂らし込み」です。幾何形体に「垂らし込み」をどう生かすかが課題で、そこに面白みがあると言えます。
2011.02.06 Sunday
今日も朝から工房で制作です。7月個展に向けて陶彫部品を作っています。相変わらずの週末の光景ですが、ふとしたことで次のイメージが湧いてきました。来年発表の作品は「発掘~鳥瞰~」の発展形で6点屏風になる予定です。それに対峙するように平面の6点屏風を置こうと考えました。イメージの源泉はRECORDです。6枚の大型パネルにアクリルガッシュを使って陶彫レリーフを平面に仕立て直して、陶彫表現で不自由していた空間処理をやってみようと思ったのです。陶彫レリーフによる6点屏風とアクリルガッシュによる同じ大きさの6点屏風。相互の作品によって、今までにない世界が創出できればと考えています。まだ、イメージは靄の中にありますが、突き詰めればモノになりそうな気がしています。作業中に湧いたイメージ。今後の作品の指針にしたいと思います。
2011.02.05 Saturday
週末になると工房に通ってきているボランティアがいます。その子は私の陶彫に使う陶土の調合や、個展の搬入搬出の手伝いをやってくれます。工房の一角を使って自分の作品も作っていて、今月その作品を3人の仲間と共に発表するのです。会場は横浜の観光名所として知られる山手の洋館です。港の見える丘公園や外人墓地のあるエリアで、洋館の地下ギャラリーを借りているのです。今日は工房にグループ展を開催する仲間と共にボランティアの子がやってきて、打ち合わせをしていました。自分は彼らを横目で見ながら制作をしていましたが、初めて展覧会をする気分が伝わってきました。自分も大学在学中に版画によるグループ展を、東京の京橋にある画廊で開催したことが思い出されます。中途半端な作品を出していたことが今となっては悔やまれますが、あの頃はそれでも一生懸命だったように思います。彼らの発表が最初で最後にならないよう祈るばかりです。
2011.02.04 Friday
絵画表現を媒体にして、政治や社会問題に対して発言する故・山下菊二。かなり以前に「人人展」という大きなグループ展で山下作品を見た記憶があります。人間をモチーフにした個性的な画家が集まった会でした。現在、神奈川県立近代美術館鎌倉別館で「山下菊二コラージュ展」が開催されています。出品作の中でとくに圧巻なのは戦争と狭山差別裁判をテーマにしたシリーズです。コラージュをいう切り抜き技法を用いて、描く行為とは異なる世界観を持った作品群です。「写真は私の介在しない映像である。コラージュはそれをつなげ、ものとものとの関係で思想を表現する。言葉による伝達と同じように、一目拒否する前に、ある一歩をおいてみてくれるのではないかと思う。コラージュは私の思想を表現し、伝達する有力な媒体である。」(図録より抜粋)山下菊二は、社会の枠の中に閉じ込めて自由を束縛する制度に対し、絵画表現を持って抵抗した思想家とも言えます。最近では社会性を持った作品を見る機会が減ってきたと感じています。時代が求めるものが変わってきたように思うのですが、情報社会といわれる現代社会にあって、むしろ巧妙に管理される体制ができていて、私たちがそれに対し警戒心が薄れているのかもしれないと感じているこの頃です。
2011.02.03 Thursday
陶彫は土そのものを焼成して石化させるので、塑造といえども鋳造して保存する作品とは根本的に異なります。使用している素材のまま保存可能にしてくれるので自分にとっては大変魅力的です。自分は学生時代に人体塑造をやっていて、石膏取りをしていました。粘土の状態と石膏になった状態とでは同じ形態であっても別な作品のように感じます。素材の持つ特徴が異なり、当時の自分は粘土のまま固めてもいいのではないかと思っていたくらいなのです。陶彫はそういう意味でも自分にとっては大きな素材発見でした。その陶彫は現在、神奈川県立近代美術館で開催している「辻晋堂展」に多く出品されています。20代そこそこだった自分が初めて遭遇した陶彫作家が辻晋堂でした。京都で陶によるオブジェを提唱して実験を繰り返していた走泥社の作家たちとの触れ合い、後世の現代彫刻界に影響を与え続けた彫刻家堀内正和との交流を通して、写実木彫作家の辻晋堂は、土そのものを生かす陶彫作家の辻晋堂に変貌していくのです。一作家の遍歴を辿ると別人が作った作品のように作風が何度も生まれ変わり、最終的には圧倒的な実在感を示す作品群になっています。辻晋堂の陶彫は、もう一度自分を揺り動かし、自分を陶彫に向かわせる意欲を与えてくれるのです。