Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • 「種子を粉にひくな」
    表題はドイツの女流画家ケーテ・コルヴィッツの日記につけられたタイトルです。ブログでは8月11日に「ケーテ・コルヴィッツの肖像」の感想を書いています。同時に読み始めた2冊のコルヴィッツの本でしたが、かなり時間差がついてしまいました。日記の方は鈴木東民・訳によるもので、内容は芸術家というより一人の人間としてのコルヴィッツの心情が語られていて、じっくり味わいながら、中断も余儀なくされて、今やっと読み終えたところです。家族を思い、母として生きたコルヴィッツ。第一次大戦で次男を失い、第二次大戦で孫を失い、ナチスによって芸術活動を封じられ、ヒットラー政権が終わる寸前に他界したコルヴィッツ。作品に込められた思いが伝わる日記の内容でした。「種子を粉にひくな」という副題は、戦争でこれ以上若者を失うことに身をもって反対したコルヴィッツが、ゲーテの言葉を引用したものです。この夏は、社会的表現にその才能を捧げた画家を今一度振り返ってみる機会を持ちました。                    Yutaka Aihara.com
    憧れのアトリエ
    長野県にある彫刻家池田宗弘先生のアトリエを訪ねると、いつも先生の彫刻作品よりアトリエの雰囲気が雄弁に先生の内面を語っているように感じます。調度品やコレクションがまさに先生の作品の一部なのです。ダイニングテーブルから椅子、各種棚、扉、床に至るまで厚板が使われ、しかも時代を経た渋い雰囲気を醸し出しています。作業台も同様です。この環境あってこそ作品が生きるし、創作に結びつくのでしょう。自分はどうなのか、明らかに先生とは異なる個性を持っているので作業場は簡素でいいのかもしれません。古い民家を改造した蔵のようなアトリエを夢見たことがありましたが、実際には工場のような空間が自分には相応しいと思います。自分もそろそろ自分の作品より雄弁に自分を語る作業場をもたなければいけないと感じています。自分はアトリエではなく作業場というのが合っていると思います。もっと広い空間、何も無い空間、必要な道具が必要な分だけある空間、そんな作業場を夢見るようになりました。                  Yutaka Aihara.com
    彫刻家池田宗弘のアトリエ
    大学で彫刻を教えていただいて、私の結婚式の仲人もしていただいて、さらに師匠として先輩として圧倒的な仕事をしている池田先生は、自分の目標であり、創作活動への意欲を喚起させられる人です。長野県麻績村の修道院のようなアトリエで一人暮らしをしていられるので、1年に1回は様子を伺いがてら刺激をもらってきます。昨日は奥様の月々の命日(2月27日が命日)にあたり、東京から神父さんが2名お見えになって礼拝をしておりました。先生のアトリエには奥様の墓所があり、アトリエそのものも教会のような造りになっています。1階は墓所のある屋内作品展示室とコンクリート床の野外作業場。作業場には真鍮直付けの具象彫刻が所狭しを置かれていました。2回は書庫を兼ねたリビングとキッチン、そこに現在制作中の礼拝堂。3回は寝室。地下にも石膏や鍛冶のための作業場があります。大きな真鍮の作品はアトリエを囲む木立の中に点在しています。とにかく置かれている大小の作品量には圧倒させられます。小さなものでも大切に保管している先生の姿勢を見習いました。たった一日、されど一日。この刺激をもってまた1年間。来夏まで創作活動を頑張っていこうと誓いました。        Yutaka Aihara.com
    師匠、友人を訪ねて…
    茨城県に陶芸家佐藤和美さん、京都府に版画家渡辺聖仁さん、長野県に彫刻家池田宗弘先生がアトリエを構えていて、1年のうちに必ず1回はこの3人を訪ねるようにしています。仕事上の刺激をもらい、また自分の制作を報告できる大切な師匠と友人たちなのです。5月の連休は陶炎祭が茨城県笠間であるので佐藤さんはこの時季、8月のお盆過ぎに古美術巡りに京都を訪れるので渡辺さんはこの時季、そして最後は自分を高めてくれる師匠のもとへ…という具合にそれぞれ楽しみをもって訪ね歩きます。今日は長野県に出かけます。師匠の池田先生宅で過ごす時間は、他の友人たちとは違い、自分は厳しい気持ちにさせられます。背筋が伸びる心境なのですが、1年に1回くらいはこんな機会を持たなければならないと思っています。妥協しない仕事をしている師匠にどう立ち向かったらいいのか、優しいけれど決して甘くは無い環境に再び自分の身を置いて、大いなる刺激を貰おうを考えています。 Yutaka Aihara.com
    京都「下村良之介展」
    関西旅行を振り返って、今日は京都国立近代美術館で開催されている「下村良之介展」の感想を書くことにしました。実際に見た日は21日(木)です。昨年は同近代美術館で「麻田浩展」を開催していて、興味深い幻想画家の展覧会がちょうど見られてよかったと思いましたが、今年も「下村良之介展」はとてもラッキーでした。紙粘土で画面に凹凸をつくり、レリーフ状になったところに紙を貼って彩色する下村流技法は、時に古代文様のようであったり、鳥が飛ぶイメージであったりして壁画的な重厚感に溢れる作品でした。自分も陶壁の作品があり、さらに発展させたい願いがあるので、今回の「下村良之介展」は大変参考になりました。イメージを大きなスケールで、また深く追求したい意図が感じられて、自由闊達な作風に自分も勇気づけられた展覧会でした。                         Yutaka Aihara.com