2010.11.09 Tuesday
現在、横浜美術館で開催されている「ドガ展」には、デッサンや絵画の他に彫刻が出品されています。ドガは彫刻技法の中の塑造という可塑性のある素材を用いた立体造形をやっているのです。絵画と違って人の目に触れることの無かった塑造。これはドガ自身も発表する気がなかったようですが、この塑造がなかなか面白くて、ロダンを髣髴とさせるような造形感覚があるのです。ドガは絵を描くための形態把握として、踊り子や馬のさまざまなポーズを塑造にしているわけですが、大雑把に捉えた量感には彫刻家の習作と似たものがあって、自分は大変親近感をもつのです。それにしても上手いものだなぁと感心してしまいます。アトリエに残ったいくつかの彫刻を鋳造して、現在に伝えられ生き延びてきた作品群は、画家の試作とは思えないほど雄弁な表現であると改めて感じた次第です。
2010.11.08 Monday
昨日出かけた横浜美術館は、日本各地から集まった警察官に囲まれた厳戒態勢の中にありました。APECが横浜のみなとみらい地区で開催されているためです。それはさておき横浜美術館の「ドガ展」は、素描の楽しさを満喫できる内容で、パステルの美しさに惚れ惚れしました。有名な「エトワール」は意外に小さな絵なんだと思いきや「湯浴みする女」は思っていたより大きなサイズで、そんな図版で知っていた絵と実物の相違にちょっとした感動がありました。それにしてもドガの描きかけのデッサンはいつみても面白いと感じます。見せるための省略でもないでしょうに、と思いたくなるほど巧みです。若い頃のアカデミック絵画のしっかり描き込んだものは、完成度は高くてもあまり面白みがなく、ざらついたりフワフワしたりするパステル描写が何とも生き生きしていて、現代に通じる要素があるように思います。印象派を超えて、あと一歩で表現主義というところまできていると感じたのは私だけでしょうか。展覧会にはドガの彫刻も展示されていて、彫刻の感想はまた別の機会に改めて稿を起こしたいと考えています。
2010.11.07 Sunday
昨日の続きで朝から工房に行って窯入れしてきました。これで万事休す。あとは火の神様任せです。そこで今日は時間が出来たので、展覧会巡りをすることにしました。まずAPEC厳戒態勢真っ只中のみなとみらい地区へ。横浜美術館の「ドガ展」に開館と同時に入りましたが、思ったほどの混雑はなく、ドガの絵画やデッサン等を十分堪能できました。詳しい感想は次回へまわします。次は東京新橋にある汐留ミュージアム。パナソニック電工が経営する美術館で、企画が気になってよく訪れる美術館のひとつです。今回の「バウハウスキッチン」展は、バウハウスの台所用品に焦点をあてたもので、現代に通じる工業デザインの原点があって楽しく見ることができました。これも詳しい感想は次回へ。最後に北千住丸井のギャラリーで開催されている「太陽美術展」に行きました。職場に今年度より新任としてやってきた職員が、自分と同じ二束の草鞋を履いていて、彼が出品している油絵を見てきたのです。夏に欧州を旅した彼は、チェコの街並みを題材に80号大の具象絵画を描いていました。丹念に描きこまれた絵を見ていると、何事にも真面目に取り組む彼の姿勢が表れていました。まだ20代の画家なら、綺麗に仕上げるより、もっともっと具象を追究した方がよいと感じました。今後が楽しみな若手作家のひとりです。
2010.11.06 Saturday
いよいよ今週末に新作の窯入れを行います。今日は朝からその準備に追われました。まず陶彫土台8点のうち初めの1点目を小品と一緒に窯入れしようと思っています。自分の陶彫作品は、指の痕跡を消すため乾燥後にヤスリをかけます。これが結構時間がかかって、今日はほとんどヤスリがけで終わってしまいました。部分的に化粧がけも行いますが、釉薬をかけずに焼き締めをするため、いきなり本焼きに入ります。設定は通常の本焼きより時間をかけて温度を上げていくようにしています。今回の窯入れは新作の第1作目で、これで上手くいけば新作が出来上がっていく実感が沸きます。窯入れは、もう一日待って明日の日曜日にしました。今日は気ぜわしくて窯に入れる気にならなかったのです。
2010.11.05 Friday
ドイツのシュルレアリスムの画家であるマックス・エルンストは、自分の好きな画家の一人です。エルンストは、幼い頃はしかにかかって熱にうなされ、彼が寝ていた天井の羽目板の木目が目玉に見えたり、鳥の頭に見えたりしたことを覚えていて、それで幻想絵画を描き出したのを何かの本で読んだことがあるのです。自分にも似た体験があります。実家が農業を営んでいた旧家で、やはり天井の羽目板から、いろいろなモノが連想されて一人で眠るのが怖かった思い出があります。天井から誰かが覗いているという強迫観念がいつも自分を捕らえていて、布団を頭から被ると息苦しいし、かといって天井が見えるのも怖いという毎晩やってくる情景のつらさを思い出します。シュルレアリスムはそんな過剰なまでに現実感のあるものを表現したのではないかと後になって思うようになりました。通常の見慣れた世界の中に不意に感じられる意識過剰な世界。エルンストが描いた世界が好きになったのは、そんな幼い頃の体験によるもので、自分の内面世界にスポットを当てられた感覚を持ったからだと思っています。