Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • 陶彫ランプシェード「街灯」
    三連休の中日にあたる今日は陶彫ランプシェードの新作成形をやっていました。ランプシェードの題名は「街灯」にしました。昨年「街灯−A」と「街灯ーB」を完成させています。今日は「街灯ーC」に取り組んでいました。いずれも照明器具が入って内側から陶彫を照らす計画です。「街灯」シリーズはまだまだ続く予定です。もうひとつ、「壁灯」と名付けている作品があります。これは板壁を照らすように作った作品で、照明器具を陶彫で隠しました。板面を照らすためマチエールや木目を見てから板材を選んでいます。板面に当たった光が木目を浮き立たせ、まるで炎のように見える時があります。これも面白い効果が期待できるので、まだまだ続けていこうと思います。というわけで、この三連休は次作に向かうイメージを広げる時間として大変貴重な休日です。先日のグループ展で発表した「構築〜解放〜」を制作している最中からスタートしている次作のイメージですが、本格的にはこの三連休から始まっていると言えます。
    ジャコメッテイ・肖像画
    ムアに防空壕に避難する人々を描いた素描があるとすれば、ジャコメッテイにも高い表現力をもつ素描や油絵があります。自分はこのジャコメッテイの平面表現に魅かれ、ジャコメッテイの展覧会がある度に、ジャコメッテイの素描か油絵を見られるのではないかと期待して出かけていました。06年の7月に葉山の近代美術館であった「ジャコメッテイ展」を見て、2年前のブログにその時の感動を載せています。油絵が何点も展示されて、いずれも灰色に塗られた画面から正面を向いた顔が現われ出ていました。真実を掴もうと格闘した跡。幾筋も引かれた線。消されて再び引かれる線。切り裂くような線。輪郭ではなく立体を掴もうと迷ったり走ったりする線。色彩も線と同じように描き出す要素として扱われ、絵の具を平たく塗る行為は見受けられません。そんな素描や油絵は、ジャコメッテイの作る細く削り取られた量感の無い彫刻と同じスタンスで描かれたものです。何をやってもジャコメッテイ。一目でわかる独自の表現。そんなところが偉大なのだと思います。  Yutaka Aihara.com
    ジャコメッテイ・現実を掴む
    ジャコメッテイの彫刻は、ムアからやや遅れて、図版によってその存在を知りました。細く削ぎ落とされた人体。大きめの台座から陽炎のように立ち、人の存在自体が無くなってしまいそうな表現。当時ムアばりの豊かな量感を求めていた自分にとって、初めジャコメッテイは関心のある作家ではありませんでした。そのジャコメッテイに興味を持ち始めたのは、日本人による書物によってでした。ジャコメッテイのモデルをつとめた矢内原伊作による著書を読んで、ジャコメッテイの真摯な制作姿勢に打たれてしまいました。ジャコメッテイが現実の空間を自分なりの解釈で掴むために、昼夜を分かたず奮闘し、作っては壊し、壊しては作る毎日を繰り返している様子が文章から伺えます。本人から見た立体を手前から後ろに至るまで、空間を正面から真っ直ぐに捉えようとして、あのように細くなってしまうようです。それは空間に関する新しい解釈であると感じました。量感を持たない彫刻表現に自分を向かわせた第一歩がジャコメッテイでした。
    ムア・防空壕の素描
    彫刻家が描くドローイング(素描)には傑出したものが数多くあります。ヘンリー・ムアの描いたドローイングの中でも、第二次大戦中に地下鉄の防空壕に避難した人々を描いた一連の作品は完成度の高さから言っても、世界最高の素描のひとつであることは間違いありません。自分は学生時代に美術館で見て、たちまち虜になってしまいました。人々が横たわる地下鉄構内は異様な雰囲気が漂い、黙して語らぬ群集がこうあってはならないと、表現として雄弁に語っている声が聞こえてくるようです。しかもムアの彫刻的イメージと結びついて、いずれ立体としても作れそうな描写です。当時20代の自分はドイツ表現主義の木版画に打たれ、こうしたムアの素描にも打たれて、生命の尊厳や激しさを求めていたのかもしれません。          Yutaka Aihara.com
    ムア・内なる空間
    豊かなボリュームをもつ彫刻で知られるイギリス彫刻界の第一人者ヘンリー・ムアは外に向かうボリュームだけでなく、彫刻の内側にもボリュームをもつ構造でも知られています。彫刻に穿った「穴」の造形をムアから知り、内側にも空洞というマイナスの空間があることを認識しました。つまり外と内にそれぞれ空間がある二重構造になっているのがムアの特徴です。これはあらかじめ内側を空洞にしなければならない陶彫の技法では、大変都合のよい空間解釈になります。陶彫は簡単に言えば陶器の壺に穴をあけることにより内側の空間を意識させるというものです。器の機能はなくなりますが、まさに外と内の二重構造をもつ彫刻に生まれ変わるのです。内なる空間は壁で遮られた空間であり、また秘められた部分とも思えて、覗いてみたい気持ちにさせられます。さらに全体構造を捉える意味で外と内に広がる空間は、視覚あるいは触覚を楽しませてくれるものでもあるのです。        Yutaka Aihara.com