2010.01.19 Tuesday
オランダ人画家ピエト・モンドリアンの絵画との出会いは、中高生の頃に美術の教科書に掲載されていた図版です。たしかカンディンスキーが「熱い抽象」、モンドリアンが「冷たい抽象」との記述がありました。そこには木の枝を描いたモンドリアンの絵画がしだいに時と共に抽象化をしていって、最後に太く黒い直線と三原色による単純な幾何学的抽象絵画になるまでの過程が載っていました。同じオランダ出身のファン・ゴッホが、モンドリアン18歳の時に若くして悲劇的な死を迎えたことを考えると、近代を代表するゴッホと現代の象徴のようなモンドリアンに、たいして世代の違いがないことにちょっとした違和感を覚えます。モンドリアンはピカソの10歳年上と考えると、モンドリアンの革新さは一層光ります。モンドリアンは当時の立体派ではなく、完全に絵画的空間を壊そうとした言わば前衛だったように思います。大学時代に版画雑誌でモンドリアンの「ブロードウェイ・ブギウギ」を知りました。そこには黒い線はなく、小さな色とりどりの矩形が並んでいました。そのグラフィック的な表現は、絵画とデザインのボーダレスの時代を生み、芸術が建築の世界にも広がる契機を作ったと思っています。モンドリアンの矩形の美は、永い追求の果てに見出されたもので、それ故画面に配置された複数の矩形の絶妙なバランスに魅せられてしまうのではないかと思います。
2010.01.18 Monday
「ノグチは陶器を彫刻として焼いている。すくなくとも彫刻家でなければ興味をもたない仕方で焼いているといってよいだろう。もちろん西洋流にいえばテラコッタ彫刻の伝統があって、そこから彼は一跨ぎで日本の陶器の世界にはいってきているのである。だからこれらの作品の多くが、生地をいかした焼き方であるのも自然である。ところが日本人のいまの概念からすれば、陶器は焼成技術による色彩と質感の洗練とともに形態も完成の域に達して、ほとんど固定してしまっているし、彫刻もまた東洋的なものであれ西洋的なものであれ、様式としては固定してしまっているといってよい。要するにジャンルとして発達し独立してしまった両者の正統的な立場からすれば、ノグチの作品は陶器でもなく彫刻でもないという不安定な状況に見えるかも知れないのである。」(「瀧口修造全集2」より)自分が彫刻の一素材として取りあげた陶による造形は、京都の走泥社より遡って、イサム・ノグチによって初めて表現されたものであることが上記の評論で知ることが出来ました。ノグチは埴輪を発想の源として、数々の陶彫を作り、独立して固定してしまった2つの領域に革新を与えたと自分には思えます。
2010.01.17 Sunday
今日は化粧土の配分を変えて化粧がけを行い、仕上がった作品5点を窯に入れました。いきなり本焼きで、ゆっくりなペースで温度を上げていくパターンを選んでいます。1230°になったところで上昇が落ち、あとは自然に温度が下がるのを待つのです。3日くらいはこのままです。先週と同じく水曜日くらいに様子を見にきます。陶彫成形は、昨日タタラにした陶土がまだ柔らかかったため作ることができませんでした。立体として立ち上げていくためには、タタラの腰がもう少し強くないとヘタってしまうのです。今日はRECORDの彩色をやって、早めに工房を出ました。普段から疲れが溜まっていて、今日は今ひとつ身体の動きが緩慢だったので、夕方は休息をとることにしました。長丁場の作業は無理をしないことです。とくに真夏や真冬の作業は、自分が意識している以上に身体は疲れているように思います。風邪を引かずに仕事が出来るのは、この身体と心の匙加減かもしれません。土壇場で一気呵成に仕事を片付ける人がいますが、自分はそうした方法で仕事が出来ません。若い頃ならともかく今は休まず焦らず仕事をすることが一番と考えます。
2010.01.16 Saturday
今週月曜日の夜に窯のスイッチを入れ本焼きを始めました。水曜日と木曜日の仕事帰りに工房に立ち寄って、窯の温度を確かめました。木曜日には100°台になっていたので、スイッチを止めて窯の扉を開いてみました。まぁまぁの出来かなと思いました。ウィークディは作品を窯から出して見る余裕がなく、結局週末になって本焼きされた作品をじっくり見ることになりました。化粧土の配分をもう少し変えようと思います。黒一色に近くなって面白みに欠けるようです。ともあれ5点の作品が出来ました。全体からすれば、まだまだ完成は遠いと言わざるを得ません。週末毎に窯入れしていかないと間に合わなくなりそうです。今日はボランティアの子に土錬りを頼んで、自分はタタラを用意したり、RECORDの彩色をしました。いつものような作業をしている週末の風景ですが、底冷えのする寒さに手が悴んでしまいました。陶彫の作業は手がガサガサになります。明日は成形の作業があります。手を労わりながらやっていくつもりです。
2010.01.15 Friday
新作には新しい印を彫って、それを押しています。とくにパーツで成り立つ集合彫刻では分解した時に、それぞれの作品のパーツがわからなくなる可能性があります。そこで新作には必ず新しい印を作って押すという習慣がつきました。陶彫の場合は和紙に押印して番号をつけ、それを陶彫の目立たないところに貼り付けています。保存状態が悪かった作品は、多少印が滲んだり番号が擦れたりしています。RECORDも同じです。小さな印を作って押して月日をつけています。現在「構築〜瓦礫〜」と4年目を迎えたRECORDが進行中です。そろそろ印のデザインを考える時がやってきました。印は篆刻の決まりに拘らずに自由に作っています。アルファベットでもいいのではないかと思っています。絵柄を入れてもいいかもしれません。陶彫用の印とRECORD用の印。これも楽しんで作ってみたいと思います。朱と白の織り成す小宇宙は、一番小さな抽象絵画とも言えます。