Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • 映像による表現
    今日は図録を撮影してくれているカメラマンとの打ち合わせがありました。夏に試みた陶彫によるランプシェードの撮影日時、現在進行中の365点の連作をどんなふうに撮影し、どうホームページに生かしていくか、ホームページに追加予定の販売用の作品について等々お互い意見を出し合いました。自分は制作することだけに専念したいので、こうした人たちの力を借りています。その方が世界が広がると感じています。カメラマンの存在が大きいのは、自分の作品が組み立てを必要とするため実物を見せるのが困難で、それだけに写真が大切な役目を負っているからです。写真は雄弁に作品を語ってくれる力があると思っています。絵画と違うところは立体作品は光をあてて周囲の空間を取り込まなくてはならず、そこを映像がやってくれるのです。自分のように色彩が渋い作品はなおさらです。映像による表現は実物のイメージを補って、さらに膨らませる要素があるので、自分にとっては実物と映像が両輪のようになって表現世界を作るのだと考えています。 Yutaka Aihara.com 
    落款 彫りと押印
    夏からやり始めていた落款が完成しました。彫刻の新作を作るたび、新しい印を彫ります。自分の作品は集合体で見せるため、パーツひとつひとつに番号をつけて組み立てるのです。パーツ(ユニット)が完成したら、和紙に落款を押して番号を書き込んでいくのです。和紙は作品の目立たないところに貼っていきます。和紙に押印した落款はいわばサインの代わりです。パーツが増えていくと、旧作と新作の間に混乱が生じるので、落款のデザインで見分けられるようにしてあります。今回の落款は大きさでは今までにない巨大なサイズです。通常の朱肉や印泥ではサイズが合いません。字のカタチは昨年まで試みていた抽象化された名前ではなく、篆書体を使って名前を彫りました。それでも豊かな構成をもった落款ができました。彫りあがった柱に貼っていこうと思っています。作品の本流とは違った楽しみ方をしています。Yutaka Aihara.com 
    色彩コンプレックス
    高校時代に大学の工業デザイン科に入りたくて、デッサンや色彩構成の基礎学習をやっていました。デッサンも初めから上手だったわけではなく努力して獲得した技能でしたが、色彩構成に至ってはひどいものでした。自分には色感がないと気づいた途端、矩形を色面で分割する構成が嫌になりました。絵画やグラフィックデザインの道はまずありえないと思っていました。彫刻への道は色彩コンプレックスからの解放だったのかもしれません。ところが、イタリア彫刻界の巨匠マリーニが豊かな色感を持っていたのに衝撃を受けて、色彩に対して敏感になりました。自分は重い色感をもっていることがわかり、現在作っている陶彫や木彫に自分らしさを追求した色彩を用いています。明るい色彩は今でも使えません。自分には加齢するほど色彩を明るくしたいという願望があります。豪奢で華麗なレリーフ屏風を絶筆として作り上げ、自分の葬儀を絢爛たる造形で飾りたいと妙なことを考えているしだいです。色彩コンプレックスの克服が今の自分の課題のひとつです。    Yutaka Aihara.com 
    マリーニの色彩
    イタリア彫刻界の巨匠であったマリノ・マリーニの大規模な展覧会があったのは、もうかれこれ30年近く前になるでしょうか。当時自分はまだ学生で彫刻を学び始めた頃でした。同じテーマで何度も塑造を試みる巨匠の作品に畏敬の念をもっていました。中でも驚いたのは壁に何点も掛かっていたタブロー(油絵)でした。その色彩豊かな世界は、立体にも通じ、また立体では伝えられない思い切った色面構成がありました。自分にはこれほどの色彩感がなく、色を楽しんで使っているマリーニが羨ましく感じました。イタリアの開放的な太陽が、大らかな形態と色彩を育んでいると想像しました。立体と併行して平面作品を作っている自分はこんなところにルーツがあるように思います。学生時代に目に焼きついた名作の数々はなかなか頭を離れることがありません。                           Yutaka Aihara.com 
    無対象の造形
    画家カンデインスキーが推進した無対象絵画(抽象絵画)の考え方が、立体の場合はどんな現れ方をしたのか興味のあるところです。ロダンのもとを離れたブランクーシあたりが抽象彫刻の草分けでしょうか。バウハウスが抽象要素のある立体構成を導入したのでしょうか。ともあれブランクーシに見られる永遠の柱は、完全な無対象造形としての考え方をもっていると言ってもよいと思います。自分の制作する彫刻もこうした無対象の構成に基づいています。単純化した形態を構成要素として再構築する作業をしていて、小さなカタチで集合体を組んで、置かれる空間を意識した作品を作りだそうとしているのです。自分の作品に対する考え方を整理し確認するために、このところカンデインスキーを初めとするドイツ表現主義の考え方に、自分は接近しているのだと思います。                         Yutaka Aihara.com