Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • 思索集 藤田昭子の原風景
    何年か前に神奈川県の大山の麓にある小さな美術館で藤田昭子さんが個展をされていたので見に行って、本人にお会いしました。昔から野焼きによるモニュメントを多く作られていて、住居ともオブジェとも言える造形に注目し、また羨望の眼差しで作品を追いかけてきました。表題の本はその個展の時に買ったもので、丁寧にサインをしていただきました。自分も陶彫による造形を手がけていて、やはりパーツに分けて窯に入れて、ひとつの大きな作品にまとめています。そこは藤田ワールドに共通するものがあって、展覧会があれば必ず見に行っています。この思索集も時々読んではまた本棚に戻す書籍のひとつです。昨日ブログに書いた「石のコトバ」も「思索集」も身の周りに置いて参考にする資料です。
    デイータ・ロンテ「石のコトバ」
    海外で生活していた頃に購入した「STEINSPRACHE」という写真集があります。ドイツ語を和訳すると「石のコトバ」。繰り返し見ているので、表紙が黄ばんできています。ただイメージを掴むには大変いい写真が収められているのです。風景の中に何気なくある大きな石。そこにチョークで縞模様や幾何形体が描かれています。作為の施された大きな石と風景がモノクロの写真で撮影され、そこに不思議な調和が生まれています。まるで洞窟壁画や地上絵のように石器時代の産物のようです。環境芸術のひとつと言えます。自分の作業が始まり、またこの写真集を手にとって見ています。
    ブガッテイを運転する女性像
    1929年に描かれたタマラ・ド・レンピッカの「自画像」は「デイ ダーメ(ドイツ語で婦人)」の表紙を飾り、そのイメージは自立する女性像、流行の車に颯爽と乗るモダンガール、そしてアールデコの象徴として印象づけられました。今もレトロな感覚とともに新鮮な印象を残します。ブガッテイは緑色のオープンカー、乗っている女性はシルバーのヘルメットをかぶり、近未来的な雰囲気さえ漂います。私の趣向として、こうした世界が大好きなのです。自分もレトロな車体をもつクライスラーに乗っています。その感覚はひょっとして無意識に自分の作品にも反映しているのかもしれません。歯車のイメージが前時代的な工場と結びつくと人に指摘されたことがあります。確かに陶彫や木彫を素材として私は人工的な世界を作っています。タマラ・ド・レンピッカの油絵も、モチーフが人物や静物、たとえ花を描いたとしても人工的に見えるのは私だけでしょうか。私がタマラ・ワールドのファンなのはそんなところにあるのかもしれません。
    タマラ・ド・レンピッカの世界
    タマラ・ド・レンピッカの絵は、現在に至るまで評価が二転三転したそうです。絵を見るとアールデコの時代をあまりにも象徴する空気をもち、レトロな雰囲気が漂っています。ただ、とても巧みな技術をもった画家だと思います。キュビズムにしても表現主義的な色彩にしても画面の中にきっちり収めて、心地よい画風を作り上げています。絵が壁を飾るファッションのように思えないでもありません。デカダンな空気を感じてしまうのは私だけでしょうか。描画方法においては、面でカタチを追っているので、彫刻的な捉えをしています。そんな要因があって私はタマラ・ド・レンピッカの絵が大好きなのです。なかなか日本では馴染みのある画家ではありませんが、また本物の絵画に接したいと感じるこの頃です。
    画家タマラ・ド・レンピッカ
    画家の生涯を映画化するとしたら、タマラ・ド・レンピッカがいいと思っています。今までフリーダ・カーロやグスタフ・クリムトの生涯が映画化されています。古くはカーク・ダグラスがゴッホに扮した「炎の人」があります。何故タマラ・ド・レンピッカかというと、彼女が絶世の美人画家であったこと、彼女の生涯が多彩で波乱に満ちていること、謎の出生地など話題性に事欠かないからです。作品も当時流行したキュビズムやアール・デコを学んで、肖像画で時代の寵児になるほど絵画的な表現力に溢れています。10年ほど前に日本で展覧会があって、たちまちタマラ・ワールドの虜になってしまいました。作品を語るのは別の機会にしますが、彼女の美貌にも驚き、女優やモデルとしてもやっていけるのではないかと思いました。