Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • アトリエの巨匠・100人
    表題は写真家南川三治郎氏が海外のアーテストのアトリエを撮影した写真集で平成6年に出版されています。昨日のブログ同様、繰り返し眺めては刺激をもらえる大切な冊子になっています。あとがきに「アトリエは、芸術家たちにとって秘密工房だといえる。私は、その秘密の工房の中に潜入したいと考えた。」とあります。彫刻家の端くれである私も他の作家のアトリエを覗き見たいと思います。海外の巨匠であればなおさらです。アトリエはその作家のもつ作品の雰囲気を端的に伝えるところだからです。写真から現れるものは作家の強烈な個性を物語る個性的なアトリエばかりで、なるほどこういう作風の人はこういうところに住んでいるのかと妙に納得してしまいます。本の中で会ったことのある巨匠はフンデルトワッサーで、独特な曲線をもつ建築の前で撮影されていました。植物の生い茂るアトリエの写真に懐かしさを感じてしまいました。
    レバインによるムアの肖像
    女性写真家のジェマ・レバインによる「ヘンリー・ムアとともに」という写真集が手許にあります。かなり昔に購入した洋書です。何気なく書棚に手を伸ばし、貢をめくっているとムアのアトリエにある様々なモノが気になりだしました。それは石ころだったり、貝殻だったり、動物の骨だったり。彫刻の雛型も棚にいっぱい並べられて、ムアの作品世界をよく伝える写真集になっています。ムアの表情も豊かです。巨大な作品の運搬風景や助手との打ち合わせや自らの作業風景が、スケールの違いこそあれ自分と似たことをしているので親近感があります。たしかこの本を購入した当時は、写真の中で活動する巨匠の姿が羨ましくて仕方がなかったのを思い出します。あれから20年自分も彫刻をやり続け、環境は変わっていないと思うのですが、やはり意識が変わってきたのかもしれません。
    「構築〜解放〜」柱の荒彫り
    来年発表する予定の新作「構築〜解放〜」は円卓のついたテーブル彫刻です。円卓になる板材は、先日より少しずつ作り始めています。今日はこの円卓を支える34本の柱を彫り始めました。まだ1本目ですが全体を気にかけながら、どんなカタチを彫り出していくかを決定する重要な一歩です。昨年と似た仕事なので迷うことはありませんが、作品の傾向がやや違うので円卓の重量に耐えられるかどうか不明です。昨年は雛型を作りましたが、今年はいきなり作り始めています。昨年より柱を斜めにして組み立てる計画なので、その角度やバランスが少々気になりますが、雛型でうまくいっても実寸の作品では無理が生じることがあるので、このままやってみようと思っています。明日は大小の鑿を研がなくてはなりません。
    街の中の落書きアート
    出張の帰りに横浜の桜木町のガード下を歩きました。ここは有名なウオールペインテイングが描かれているところです。これら作品を見ながら歩いていると感覚が刺激されて愉快な気分になります。上手いなあと思う作品があると思わず立ち止まってしまいます。初めの頃、ここは本当に落書きで、よくガードレールにあるスプレーで雑に書かれたものとたいして変わらないものでしたが、今自分の目の前に広がっている作品はアートと呼んでいいくらいの表現に到達しています。最近は店舗のシャッターに絵が描かれていたりしますが、やはり桜木町ガード下のアートに比べると、やや見劣りします。ヨーロッパの街でも広場で、チョークでキリスト像を描いている若者を多く見かけました。こうした表現活動がもっと増えれば、街の散策はもっと楽しいものになるでしょう。
    制作途中の素材
    作業場の片隅に制作途中の板材を置いています。週末しか制作できないのですが、途中の作品を見てあれこれ考えることは毎日しています。次の週末は板材に組み込む柱材を彫ってみようとか、どんなカタチを彫りだそうかとか、考えているだけでも楽しくなります。本当に作ることが好きなんだなあと自分のことながら呆れてしまいます。制作途中の素材はいろいろなことをこちらに語りかけてきます。途中のままギャラリーに置いてもいいかもしれないと思う時があります。部分的にカタチを彫りだした素材は結構美しいものです。完成に近づくたび、作品がこじんまりしていくことを実感すると、あえて途中でやめてもいいかもしれないと思うからです。まだそこまで達観できない自分がいることも確かですが。週末が楽しみです。