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  • 河井寛次郎の木彫面
    365点の連作が5月に入って、今テーマとしているのは仮面のようなモノです。京都の五条坂に記念館のある陶芸家河井寛次郎は、民芸の世界で名のある人ですが、陶芸と併行して木彫を作った人でもあります。それも土俗面の雰囲気を残した抽象化された木彫面です。京都の河井寛次郎記念館で、このお面を見た時は、古い木造建築の中でひときわ異彩を放つ存在に驚きました。制作年代を見ると河井寛次郎が60歳から70歳にかけてこの木彫面を作ったことになっています。この年齢にして作品が放つ若々しい感覚はどこからきたものでしょう。名を残す作家は、若い頃いろいろな制約の中で技巧を見せ、円熟するにしたがって自分を解放し、あらゆるものから自由になるものでしょうか。
    新作の作業開始
    益子や笠間に行って若手陶芸家の作品を見てくると、自分の制作に弾みがつきます。益子や笠間はヤル気をもらえる場所なのです。自分もいよいよ新作の木彫を始めました。板材のデザインや組み合わせは、大まかにイメージが出来ていますが、雛型を作ろうかどうか迷っています。柱を何十本か立て板材を支える構造で、そこは去年と同じですが、今年は内包ではなく解放するカタチにしようとしています。坦々とした仕事を今年も始めようとしています。規則正しい作業が自分には向いているのかもしれません。別に他に仕事を持っているからというものではありません。たとえ彫刻の制作だけで毎日を過ごしていたとしても、朝から夕方まで同じ作業を繰り返す日課になるだろうと思います。それが自分流なのです。
    笠間の「陶炎祭」めぐり
    栃木県益子と肩を並べて、茨城県笠間の「陶炎祭」も人が混み合うイベントです。ここにはブログに何回か書いたことのある佐藤和美さんが出店しています。「佐藤陶房」は健太・和美夫妻がやっている店で藍染のマルサが目印です。作品は土っぽい自然な器で、温かく柔らかい雰囲気を持っています。毎年私は出発前に飲み物や食べ物を準備して店を訪ねていきます。店を閉めた後、仲間でプチ宴会を行うのが楽しみなのです。もちろん佐藤和美コレクターを自負する自分は必ず新作を購入します。今年は木の枝のように長い一輪挿しを求めました。佐藤陶房で手伝いをしている冨川秋子さんも若手作家の一人で、美大で陶磁器を専攻し、今は笠間の窯業試験場で研修中です。冨川さんの陶は自然をイメージした風に震えるような浮遊感のある軽やかな作品です。ミクロなカタチで大きな世界を表現しようとする冨川さんに期待しています。オブジェでは自分も負けていられないと感じています。この日は制作に弾みがついた一日になりました。
    益子の「陶器市」めぐり
    ゴールデンウイーク中に開催される栃木県益子の「陶器市」は大変な人出があるので、毎年夜明け前に横浜を出発することにしています。共販センター駐車場に店が開く前に車を入れて、目当ての店へと繰り出します。まず「陶庫」の蔵を改装したギャラリー、次に隣の藍染の工房、向かいの「もてぎ」の裏にあるガーデンギャラリー、若手作家が集まる「かまぐれの丘」。ここに職場の同僚から紹介された細川かおりさんが出店しています。細川さんの器はシンプルで肌理の細かいデザインが施されているので料理が映えます。使い勝手がよく素敵な作品です。新作を見ると、つい購入してしまいます。細川さんを初めとする若手作家の作品は、安価であるばかりか一生懸命さが伝わってきます。器は飾るものではなく使ってこそ真価が問われるものだと思います。斬新で使いやすい器を毎年期待しています。
    「三輪壽雪」の豪放な器
    昨日、笠間の「陶炎祭」に出かけた際、「陶炎祭」会場のある笠間芸術の森公園には茨城県立陶芸美術館があって、毎年この時期の企画展は欠かさず見ることにしています。今年は「三輪壽雪の世界」展。壽雪は十一代休雪として萩焼一筋に歩んでこられた人ですが、器の概念から外れたような大胆な器で知られる人でもあります。今回まとまった作品群を見て、若い頃の修業時代から始まった作陶が、加齢するにしたがって作風が解放されて今のような豪放な世界にたどり着いた様子がよくわかりました。十字を切った割高台、凛とした成形に荒々しくかけた白萩釉。ざっくりとした造形に自分も挑発されるようで、作陶の面白さを余すことなく伝える内容でした。美術館の近くで「陶炎祭」が行われている環境もあって、否応無く現代の若手陶芸家と比べる結果となりますが、若手の中にも壽雪に負けない勢いが欲しいと願うばかりです。もちろん器を作らない自分も造形家の端くれとして襟を正したいと感じています。