2023.07.18 Tuesday
まだ「風土」(和辻哲郎著 岩波書店)を読んでいる途中ですが、私は毎日、東京銀座のギャラリー通いがあるため、文庫本を携帯することにして、同じ著者の「古寺巡礼」(和辻哲郎著 岩波文庫)を読み始めました。「古寺巡礼」は古い出版ですが、最近購入しました。私は昔から乱読の悪癖がありましたが、若い頃に比べると落ち着いてきたように思っています。同じ著者の2種類の書籍を読むのは私としては珍しいことです。「風土」はその論理思考や文体からして、自宅でじっくり読むのが相応しいと感じています。それに比べて「古寺巡礼」は旅先の印象記なので、比較的気楽に読めるかなぁと思っています。とりわけ私は仏像が好きなので、「古寺巡礼」はその興味関心を満たしてくれそうで、楽しみでワクワクしています。さっそくこんな文章が私を虜にしました。「種族が異なるに従って、理想の顔や体格がどういうふうに変わって来るかという問題は、文化の伝播と連関して、興味のある問題である。たとえば仏画は、東へ来れば来るほど清らかに気高くなって行くが、このことは仏教の教義の変遷とどう関係するか。あるいはまた当時の諸民族の内心の要求や問題とどう関係するか。これらは考究に値する問題であろう。~略~一体あの弥勒は我が国の仏像のうちで最も著しくガンダーラの様式を現わしているものである。その肉づけの写実的なことと言い、その重々しい、大きい衣のひだの、小気味のいい大胆さ自由さと言い、シナ風の装飾化の動機にわずらわされずに、端的に人体を作り出している。特に塑像としての可能性は、極度に生かし切ってあると思う。我が国の仏像で西洋彫刻に最も近いものは恐らくこれである。しかもそのギリシャ的な様式にもかかわらず、この仏の与える印象は完全に仏教的である。」これは広隆寺にある弥勒菩薩像で、修学旅行でよく訪れる定番の仏像です。私も教職にいた時に修学旅行の引率で度々見ていました。威厳のある美しさに仕事の多忙さを忘れさせてくれた仏像で、どんなヤンチャな生徒でも弥勒菩薩像の前では静かに鑑賞していました。美しさを感じる心には理屈はなく、ふと足を止めてしまう魅力があるのです。
2023.07.17 Monday
今日は海の日ですが、毎年この時期に私の個展を東京銀座のギャラリーせいほうでやっています。今日はそのオープニングでした。今回のテーマは「陶彫・発掘シリーズⅩⅤ」になります。ⅩⅤは15ですが、過去に「構築シリーズ」を3回やっていて、合計すると18回目の個展になります。「発掘シリーズ」の主な作品の素材は陶で、古代出土品のような雰囲気があります。「構築シリーズ」の主な素材は木で、大地から樹木が立ち上がっていく雰囲気を出しています。その両方を合わせ持つ作品もありますが、私としてはどちらかに分類して展示しているのです。今回の「発掘~記録~」と「発掘~坪庭~」は、明らかに「発掘シリーズ」に入るものです。ギャラリーせいほうの白い空間に配置した2点の陶彫作品と、今年初めて試みた平面RECORDによる壁に掛けた作品。鑑賞に来ていただいた人たちはどんな反応を見せてくれるのか、内心はドキドキしながら、オープニングを迎えましたが、なかなか好評だったようで、ホッと胸を撫で下ろしました。平面作品の方が新鮮で印象に残ると言ってくれた人もいました。毎晩頑張ってRECORDを描いている苦労が報われたような気がしました。RECORDは2007年から毎晩作成していて、今回の展示はその一部に過ぎません。アクリルガッシュによる色彩も加わって、今までにないギャラリー空間を演出したのだろうと思っています。今日は20人を超える多くの人に来ていただきました。今日は災害級の酷暑の中で、わざわざ遠くから来ていただいた方々に改めて感謝申し上げます。東京銀座も漸く賑わいを取り戻しています。外国人観光客の姿が目立ちますが、日中は暑いので外を歩いている人は少なく、店に入ると大変混雑しています。何とか個展初日を終えて帰途に就きましたが、今日は疲れました。これから毎日銀座に通います。
2023.07.16 Sunday
今日は日曜日ですが、ギャラリーせいほうでの個展のオープニングが明日あるため、今日は出展作品を搬入する日でした。垂木で補強した木箱20個、「発掘~坪庭~」の土台2体と額装したRECORD5枚はいずれもエアキャップをつけたビニールシートで覆っていました。その他展示用の工具を入れた工具箱2つや掲示用のポスターなどを運搬用トラックに積みました。午前10時にスタッフ3名と家内に私、運送業者2名の合計7名が工房に集合し、積み込み作業を始めました。運搬用トラックと私の乗用車に全員が乗り、横浜の工房を出発し、首都高速を汐留の出口まで走りました。ギャラリーせいほうに到着したのは午前11時半でした。個展会場で梱包を解き、木箱やビニールシートは業者に預かってもらうことにしていました。業者はそのまま引き上げ、残ったスタッフたちと展示を始めました。今回は151点の陶彫立方体をスタッフの感覚を交えながら、ギャラリーのスペースに合わせて展示していきました。ギャラリーせいほうは私が思っていた以上に広く、陶彫立方体はすっきり収まってしまいました。例年小品を展示する台には151点のうちの5点を選んで展示しました。また新しい試みとして平面作品を展示することになって、白い壁に5点のパネルを掛けました。今までの私の作品は錆鉄色した立体作品ばかりだったのが、色彩の入ったRECORDが加わることで、華やかな展示空間になりました。この立体作品と平面作品の同時展示は来年も継続していきます。昼食はギャラリーから歩いて数分のところにある銀座ライオン本店に出かけました。毎年のことですが、スタッフたちとここで食事をとると、愈々個展が始まるなぁという気分がしてきます。展示を終えて思ったことは、今年も無事に個展が出来る幸運です。健康を害すれば、毎年続いている個展は出来なくなります。18回目を数える個展で、18年間健康で制作に没頭できたことや、それを支えてくださった周囲の人たちに感謝したいと思いました。明日がついに個展オープニングです。
2023.07.15 Saturday
週末になりました。三連休に入りましたが、明日が個展の搬入、明後日が18回目の個展のオープニングになります。今週を振り返ると平面RECORDの展示準備に追われた1週間になりました。私自身は平面作品を展示する機会が少なくて、とりわけ一枚のパネルに1ヶ月分のRECORDを掲示するにはどうすればよいのかを考えました。RECORDはポストカード大の作品で、パネルに両面テープで接着することだけは避けたいと思っていました。1点のRECORDを4カ所で支えるための鋲のようなものはないかと工具店を探していたところ、ちょうどよい金具を見つけました。ただし、RECORDも陶彫立方体と同じ1月分から5月分まで全151点あるため、そんな数の在庫がなく、結局は神奈川県内の同列工具店を渡り歩いて、金具をかき集めてきました。RECORDは厚紙を使用しているので、パネルと作品の間に隙間が必要で、アクリル板を固定する際にボルトナットにスペーサーを入れて隙間を作りました。パネルの裏に展示用のヒートンを設置して、壁に掛けるようにしようと思っています。そんなことも何とか解決して、やっと搬入準備が完了しました。ただ、今週もいつも通り搬入準備ばかりしていたわけではなく、新作の陶彫制作もやっていました。今日は明日手伝ってくれる後輩の彫刻家が朝から工房に来ていて、自らの制作をやっていました。明日は一日中、搬入とギャラリーの展示をしているので、彼は通常の制作を今日やっていたのでした。私も陶彫制作をやっていました。工房内は蒸し暑く汗が流れていましたが、制作に集中すると身体のことが気にならなくなります。それでも今日は明日搬入準備を控えているので、早めに工房での作業を切り上げました。
2023.07.14 Friday
昨晩、今年の個展用図録が1000部届きました。私の作品が集合彫刻で、さまざまな場を設定して配置するため、図録として画像化することは大変重要なのです。個展会場なら実物の作品を見せることが出来ますが、そうでない時は作品の紹介には図録が必要です。私の作品は環境によって表情を変えます。図録にも野外工房での写真と室内工房での写真を両方掲載してあって、その空気感の違いは同じ作品とは思えないほどです。本来、古代から彫刻は建築とともに野外で見るべきものでした。美術という概念が出来てから、彫刻は絵画と同じ室内空間に移されてきました。近代まで彫刻には台座があり、それは芸術作品としての鑑賞を目的とされてきました。現代は彫刻そのものの概念も変わってきていて、彫刻によっては台座がない作品も登場してきました。美術史から見れば、彫刻は先祖返りのような表現形態になったわけです。私の作品にも台座はありません。ホームページのLANDSCAPEを見ていただくと、作品を森林の中に置いたり、砂丘に埋めたり、水に沈めたりして、周囲の環境との関わりを考えていく企画もやりました。今回の図録での作品のあり方は、小さな立方体を複数集合、拡散させる画像を載せています。当然、ギャラリーせいほうでの展示方法も考えていかねばならず、そのために今日は東京銀座まで図録を持参してギャラリーと打ち合わせを持ちました。この白い空間にどのように立方体を複数配置していくのか、搬入をしてみなければ分からないのです。加えて今回は平面RECORDの額装された作品を壁に展示するという、私にとっては新しい試みもあります。18回目の個展に立体と平面を同時に展示するのは、私としては初めてです。ギャラリーとの打ち合わせが終わって帰途に就く途中で、私は明後日の搬入が楽しみになりました。毎年小さな一歩があって、私の作品は展開していきます。その蓄積が私らしい歩みだなぁと思っています。