2020.08.17 Monday
先日、横浜駅に隣接するデパートそごう8階の催し物会場でやっていた「深堀隆介 金魚愛四季(きんぎょいとしき)」展を見てきました。本物そっくりに描かれた金魚の群れを見ていると、夏の風情に相応しく清涼感に満たされていて、また多くの鑑賞者も詰めかけて、老若男女が金魚の作品群を楽しんでいました。さまざまな器に透明樹脂を流して、その上にアクリル絵の具で金魚の部分を描いていき、また上から透明樹脂でさらに覆うことを繰り返して、何層にもわたって金魚の全貌を完成させていました。そうして表現された金魚は、水の中を泳いでいるような錯覚に陥り、まさに超絶技巧の産物であることが分かりました。展覧会には額装された絵画や屏風絵もあり、金魚をモチーフにさまざまな実験を試みた作品も並んでいました。図録に画家のコトバが掲載されていたので、一部を引用いたします。「モネは睡蓮の絵が特に有名ですが、モネは睡蓮という植物を描きたかったわけではないと思います。その証拠に彼は睡蓮の品種にこだわってはいません。彼は睡蓮を画面上の水面の位置を示すために利用することで、絵画を光学的に解釈し、絵画を科学に変えてみせました。そこには西洋的な物質主義的な考え方があると、僕には思えるのです。~略~僕の描く金魚は、モネの睡蓮と同じような関係にあります。品種が重要なのではなく、『金魚』という存在が重要なのです。僕の描く金魚は、自分であり、また人間そのものの隠喩として考えています。僕にとって樹脂作品の水面より下は霊的世界を暗示しています。描かれた金魚や藻など、水面より下の世界は絵画だけれども魂の宿る世界だと信じて描いています。これは東洋的アニミズムだと思います。」(深堀隆介著)金魚というテーマと表現方法を見つけたことで、画家自身は「金魚救い」と呼んでいますが、その気持ちは私にもよく分かります。発展性のあるテーマだけに、試行を繰り返して、さらに世界が広がっていければ楽しいだろうと思っています。強烈な夏の暑さの中で、一服の清涼剤のような展覧会でした。
2020.08.16 Sunday
今日も朝から気温が上昇し、静岡県では40度を越す気温が記録されました。空調のない工房での陶彫制作は、どのくらい体調が保てるのか、実際に朝から工房に篭っていましたが、2時間程度で切り上げることにしました。大型扇風機を回していても温風をかき回しているだけで、涼しくはなりませんでした。カチカチに凍らせたペットボトルの水が忽ち溶けて、あっという間に水分補給でカラになりました。新作陶彫の4点目にあたる彫り込み加飾をやっていると汗が噴き出て、シャツが汗を含んで絞れるほどになりました。今日は若いスタッフは誰も来ていません。2時間経過して工房にいることは無理と判断して自宅に戻ることにしました。自宅で昼食を済ませ、午後はRECORDの追い上げに時間を費やすことにしました。週末に彫刻ができないのは残念ですが、こればかりは仕方がありません。夏季休暇中も長く工房に留まった日は少なく、炎暑のせいで制作工程は遅れ気味です。その分、RECORDは遅れを取り戻そうと追い上げに本腰を入れることにしました。下書きの山積みは徐々に減ってきましたが、それでもまだ1ヶ月以上も下書きのまま残されていて、アクリルガッシュで彩色し、ペンで仕上げる日々が続いています。一日1点制作をノルマにしているRECORDは、1点1点が容易く完成できず、絵の具を垂らしてみたり、滲ませてみたり、その時の色彩イメージを思い出し、工夫を凝らせています。下書きを見ると、写実表現があったり、象徴的表現があったり、平面的な幾何抽象もあり、その時試みようとしていた多様性に、自分の節操の無さも感じつつ、我ながら振り幅の大きさに驚いています。あの時はこんなことを考えていたんだっけ、と思いながら筆を動かしていました。どんな表現であれ、ここまでRECORDをやっていると自分の個性や癖が見えてきて、気に入らない作品もあります。また下書きではたいした作品にはならないだろうと思っていたものが彩色すると輝いて見える作品があり、不思議な気持ちにさせられます。今日は夜まで頑張っていたRECORD制作ですが、まだ下書きの解消にはなりません。それでもかなり山積みは小さくなりました。明日から職場に復帰して本格的に仕事が始まりますが、帰宅後のRECORDは手を抜かず頑張っていきたいと思っています。
2020.08.15 Saturday
週末になりましたが、昨日まで夏季休暇を取っていて、休暇中から陶彫制作を継続してやっています。今日も身体がおかしくなりそうなほど気温が上がり、この体感は体温に近づいていると思いました。工房は野外とほとんど変わらない室温になっているので、じっとしていても汗が流れ、シャツがびっしょりになります。まして創作活動は精神性を伴うため、あれこれ考えながら陶土に向き合っていると、汗が噴出してきます。今日も工房にいる時間は、4時間が限度と判断しました。これでは新作の土台を施工するまではいかないなぁと思っていました。彫り込み加飾をした箇所も見る見る乾いていくので、後で仕上げをするためにも水を打ってビニールで保護しておかなければなりませんでした。昼過ぎには工房を後にして自宅に戻ってきました。エアコンの効いた自宅に戻ると、ホッと溜息が出ました。これでは若いスタッフを呼ぶことは出来ないと思い、明日は来ないように連絡を入れました。午後は自宅の食卓でRECORDの追い込みに精を出していましたが、横浜のデパートで金魚の画家が展覧会を開いているのを思い出し、家内を誘ってみました。夕方、横浜そごうには暑さを避けて車で行き、8階催し物会場で開催している「深堀隆介」展を見てきました。本展には「金魚愛四季(きんぎょいとしき)」と洒落た題名がつけられていて、多くの鑑賞者が訪れていました。さまざまな器に透明樹脂を流し込み、そこにアクリル絵の具で一層ずつ丹念に金魚を描きこんでいました。透明樹脂の厚みで金魚が立体的に見えていました。描き方の巧みさで言えば、これはまさに超絶技巧の域に達していて、海外で評価されている理由が分かりました。詳しい感想は後日改めますが、この世界は一般的に受け入れられる要素はたっぷりあるように思えました。工房での陶彫制作は明日も継続の予定ですが、どのくらい進めることができるのかは気温次第です。毎日汗をかきすぎていて、夜はクタクタになっています。
2020.08.14 Friday
5日間あった夏季休暇が今日で終わります。工房で新作の陶彫制作に邁進しつつ、「江戸東京たてもの園」に建築家前川國男邸を見に行き、別日に東京ステーションギャラリーの「きたれ、バウハウス」展、池袋の「自由学園明日館」を見に行きました。今年はコロナ渦の影響で旅行に出なかったものの、建築の見学三昧で過ごした夏季休暇でした。また人体に害を及ぼすような高温の日々が続き、工房での制作に支障が出ました。工房にいられる時間としてはせいぜい4時間が限界で、陶彫制作をやっていると、身体中から汗が噴き出てきました。そのため半日をRECORDの追い上げ制作に充てました。RECORDはエアコンの効いた自宅の食卓で制作が出来るので、午前中は工房、午後は自宅という制作スケジュールを組みました。さて、4月に母が亡くなったので、今年は新盆になります。昨日は家内が居間に「精霊棚」を設えました。私は制作の合間に竹を切り取ってきました。小さな机に竹の小枝を立てて結界を作り、供物とともに位牌を置きました。生花も買ってきました。朝10時に菩提寺の住職が新盆法要のためにやってきてお経を唱えました。昼頃には妹夫婦と姪が供養にきました。家内の作った「精霊棚」は簡素ながらよくまとまった立派なもので、大学の空間演出デザイン科で舞台美術を学んだ彼女は、こうした設えが好きなのかもしれません。家内は浄土宗の「精霊棚」をネットで調べて、その謂れを理解していましたが、何より亡くなった母から伝え聞いていたやり方で用意したようです。生前の姑と嫁の関係が垣間見られた思いでしたが、「精霊棚」は明後日の日曜日まで居間に置いておくようです。昨晩遅くやっと「精霊棚」を作り終えた家内の耳に密かにカタッと音がしたそうで、いよいよ先祖が来ているのかなぁと思っています。私は宗教はイメージだと思っているのですが、知識では理解が出来ない何かが存在していることを信じてみたいのです。午後は気温上昇にもへこたれず、工房に行って新作陶彫の彫り込み加飾をやっていました。そろそろ新作の土台の設計施工に手をつけたいのですが、暑さのため作業時間が短くて、彫り込み加飾をやるだけで精一杯です。明日から週末に入ります。引き続き頑張っていきます。
2020.08.13 Thursday
昨日、東京池袋に「自由学園明日館」を見に行ってきました。「自由学園明日館」はテレビで紹介されていて、一度行って見たいと思っていたのでした。池袋駅から歩いて数分という立地に驚きましたが、創立された1921年当時は武蔵野の雑木林が残っていたようで、現在のような高層ビルに囲まれている環境ではなかったのでした。創立者は新聞記者だった羽生吉一とその妻もと子で、とくにもと子は「婦人之友」を創刊した人として知られ、子女教育の重要性に着目して本校を設立しています。夫妻は伝手を頼って帝国ホテル建設中のフランク・ロイド・ライトを訪ね、女学校校舎の設計を依頼したのでした。写真集から言葉を引用します。「美の規範としての左右対称というのは、万人を納得させる手易くて効果のある手法。多くの権威を誇示する建物に用いられてきたが、明日館はそうした威圧感がない。それは、中心性を強調しない左右対称の造形にまとめたことにある。~略~畳を基準尺度として展開する和風の建築は、ライトに深い感銘を与えた。6帖の間、8帖の間などと広さのみ規制されたそれぞれの部屋は、いわば無目的的であり、しかし多目的的である。使い勝手は使い手が決める。2つの部屋の境界となっている襖や障子を取り払えば、さらに大きい空間が確保できる。そうしたフレキシブルな空間に魅せられたライトは、ホール、食堂、厨房を隣接させ、層状に重ねて、ドラマチックな空間を醸成した。」(谷川正己著)和風の空間を西洋建築に取り入れて、全体的にすっきりまとめた印象があるのは、こんな理由によるものかもしれません。日本では架構式工法が一般的ですが、ライトは西洋の組積式工法で建築を作り上げていました。「自由学園明日館」の屋根蓋も築かれた壁全体で支える方法だったことも写真集にありました。当時は安価な材料で作られていたこともあって、自由学園が久留米市に移動してしまうと、明日館は忘れ去られた存在になり、材料が朽ちた状況でした。1997年に国指定の重要文化財になると修復工事が始まり、2002年に当時の麗姿が蘇ったようです。併設されている講堂も見てきましたが、ここではコンサートや講演会が開かれていたり、結婚式の予約も受け付けていました。施設を有効利用しながら保存をしていく動態保存というカタチをとって、現在は運営されているようです。