2020.06.10 Wednesday
陶彫部品を組み合わせて集合彫刻にしていく私の作品は、30代の半ばから始まりました。20代のうちは単体で彫刻を作っていました。習作期はほとんど人体塑造ばかりで、それによって立体構造の捉えを学んでいたのでした。それは粘土でカタチを作り、石膏取りをして保存する方法が一般的でした。そのうち陶土を焼成することで保存ができ、さらに焼成した陶彫が自分のイメージした世界を表現できるという発見が、私をして陶彫に駆り立てた要因です。当時のイメージは20代後半に旅したエーゲ海沿岸に広がるギリシャ・ローマの遺跡を見たことで、発掘された建造物に触発されたものです。大地に広がるパノラマのような造形にするには、単体で彫刻していたのでは無理があり、そこで陶彫部品を組み合わせて集合彫刻にしていく方法を思いついたのでした。発掘された建造物は荒涼とした大地にあったり、山肌を切り崩して存在していて、その見事な景観は乾いた風と共に私に強く印象づけました。その頃の写真を見ると、私も家内も真っ黒に日焼けしていて、やせ細っていました。私たちはウィーンからバスを乗り繋いでトルコやギリシャに辿り着いたのでした。遺跡を見ると土木技術の素晴らしさや、崩壊した街の構造そのものに古代文化の高さが窺い知れるのですが、私はその遺跡群が大地から突き出た造形のように思えて、大地を座標にして上と下に広がっている世界を思い描くことになりました。自然界では気候変動により土地が隆起することがありますが、古代都市もそんなふうに思えたのでした。これから作っていく最新作は、まさにイメージの原点に返って大地から突き出た造形をやろうとしています。
2020.06.09 Tuesday
少し前のNOTE(ブログ)に、「聚景」印のデザインというタイトルで新しい印を彫ったことを書きました。今回は「突景」印のデザインです。「発掘~聚景~」はやや大きめ、「発掘~突景~」は小さめの石材を選んで、印面をデザインして彫り上げました。「発掘~聚景~」は屏風と床置きがあり、陶彫部品がかなり多いため、写真撮影前までに印に番号を書き込んで貼り付けました。それを確認しながらスタッフたちが組み立ててくれたのでした。「発掘~突景~」の部品は、陶彫部品と木彫柱を合わせても6個しかないため、印は必要ないかもしれません。それでも私は新作には必ず新しい印を付けることを決めているので、「突景」印をを彫ることにしたのでした。陶彫部品に貼り付ける印はほとんど陽刻にしています。印には陰刻もありますが、私の好みで陽刻にしているのです。印を彫る作業は、私にとって好きな作業なのかもしれず、多忙な時に面倒と思っても嬉々として楽しみながらやっています。印刀も数本用意していますが、気に入ったものばかり使ってしまい、そろそろ印刀を研がなければならないなぁと思っています。印刻は本作品における必要に迫られた余興なのかもしれず、また表面に出ない創作活動と思っています。印をよく見てくれるのは作品の組み立てに関わるスタッフだけです。「突景」印のデザインも今まで通り構成は自由にやっていて、氏名が読み取れるギリギリまで抽象化しています。古代の絵文字のようなイメージで作っています。このところ印は結構増えてきて、工房の印を収める箱には数多くの印があります。今まで陽の目を見ない印ですが、印を集めて展示するのも面白いかもしれません。
2020.06.08 Monday
昨晩、何気なく見ていたテレビからアニメ「メトロポリス」が流れてきて、思わず見入ってしまいました。手塚治虫原作、大友克洋脚本、りんたろう監督によるSF映画で、私は映画の存在は知っていたものの、これは初めて観ました。「メトロポリス」と言えばフリッツ・ラング監督によって1927年に公開されたドイツ映画が有名ですが、アニメ作品はその映画とも異なるストーリーでした。私が滞欧中に観たドイツ映画「メトロポリス」のゴシック調の摩天楼やら資本主義と共産主義の対立構造が、SF映画黎明期にしては革新的なものではないかと思ったものでした。とりわけアンドロイドの美しい女性が登場する場面は忘れられません。アニメ「メトロポリス」は、人間とロボットの共生社会の歪が描かれていて、現代社会の抱える問題にもなり得ると思いました。このアニメ全般にある背景の丁寧な描写や色彩が美しく、近代的なメカニックや地下街の混沌とした情景描写は制作者たちの気概を感じさせてくれました。この映画にも人間離れした可憐な女子が登場していました。これは手塚治虫へのリスペクトでしょうか。背景の素晴らしさに比べ、ややストーリーが分かりづらい部分もあり、声優の人選がどうかなぁと思う節もありました。ロボットによって恩恵を受ける人間がいる一方で、働き口を奪われた人もいて、これは私たちのリアルな世界でも訪れる可能性が大きいのではないかと思います。人間の自己中心主義が独占欲や傲慢さを生み、それ故にロボットが犠牲になっていく社会は、ロボットをアニミズムの対象として見ることに限らず、人間同士の中でも起こり得る人権の問題を孕んでいて、ちょっとした恐ろしさを感じました。アニメ「メトロポリス」は名作的要素がありながら、今一つ大衆浸透力に欠けるのは何でしょうか。映画をご覧になれば、分かり難く素っ気ない台詞等で誰でもが抱くであろう疑問があるのも確かだと思いました。
2020.06.07 Sunday
新作の修整と最新作の陶彫成形は、同時に進めていきます。新作の修整や梱包作業は創作活動ではないため、それだけではどうも気分が上がらないのです。今日は朝から工房に篭りました。久しぶりに美大受験を考えている高校生がデッサンを描きに工房に来ました。デッサンはスポーツや音楽の練習などと同じで、日々の鍛錬が実を結びます。コロナ渦の影響で時間が空いてしまったため、なかなか形態把握や描写の感覚が戻らず、彼女は苦労していました。私は一人で黙々と制作しているよりも、誰かがいてくれた方が張り合いがあって気分が乗ります。それでも普段の疲労が取れず、一日を工房で過ごすのに辛い時間帯がありました。今年の個展に発表予定の屏風がありますが、作品厚板の裏側の塗装が出来ていないため、今日は6点のうち2点の裏側を仕上げました。作品の裏側は見えない部分ですが、そこもきちんと仕上げておくのが私の流儀です。作品の裏側は見えないため撮影には必要がなかったので、先日の撮影日にはやっていませんでした。塗装は梱包前に仕上げておこうと思っているのです。塗装がある程度進んだところで、最新作の陶彫部品の成形と彫り込み加飾を行ないました。陶彫で直方体を作り、大小の矩形を彫り込みましたが、彫った面は微妙な曲面にして変化を求めました。新しいイメージによる作品としては第1号ですが、次はもう少しハイレベルでしかも困難を伴う陶彫部品を作ろうと思っています。集合彫刻のそれぞれの部品は自分の調子を見極めながらやっていくのです。そのうち新作陶彫部品の梱包のために木箱を用意しなければなりません。また今回も昨年から繋がった材木問屋の戸を叩かねばなりません。来週末も新作の修整や梱包作業と創作活動を同時並行でやっていきます。
2020.06.06 Saturday
6月最初の週末を迎えました。今夏の個展で発表するであろう新作は全て出来上がり、先週末に写真撮影をしたところですが、新作は修整が多く、梱包を含めて今月の週末にやっていくつもりです。発表するであろうとしたのは、コロナ渦の影響で不確定なことが多く、ギャラリーがまだ個展開催を決めかねているのです。いずれにしても個展が予定通り行なわれても準備万端としたいところであり、今月の週末は全て個展に向けた準備に充てようと思っています。今日はそうしたこととは別に、ずっと税務管理をしてくれていた旧知の税理士を午前中に呼んでいました。母が亡くなり、母が所有していた財産に対する相続が発生することになったため、税理士に来ていただいたのでした。私は父が亡くなる少し前に、両親を連れて公正人役場に行っており、そこで父と母双方に公正証書を取得するように働きかけていました。祖父母が亡くなった時に、財産を巡って父の兄弟間で紛争になり、祖父母から口約束だけだった財産相続が、結局父の精神的負担になったことを私はずっと覚えていました。私の代ではそうしたくないと思っていたため、遺言として法的に根拠を持つ公正証書が必要だったのでした。これがあるため相続の手続きはすんなりいきそうで、この後どのくらい相続税が発生するのかを税理士に割り出していただこうと思っています。母の死後、次にやらなければならないことはこれです。骨の折れることですが、これも私の退職前に済ませたいことのひとつです。午後は工房に行って、個展展示用の作品の修整を行なっていましたが、同時に来年発表予定の最新作の第一歩を踏み出しました。既に出来上がった作品の修整だけでは、創作的気分が上がらず、最新作のことを考えていきたいのです。暫くは個展準備と最新作の創作活動、この両方を進めていこうと思っています。それにしても今日は疲れました。家内も疲れていました。夕方、気分転換を兼ねて梱包材を買いに家内と外に出ました。今までなら夕飯を外食で済ませていましたが、コロナ渦の影響で外食はずっと控えています。仕方がないと思いつつ、私は創作活動によって日頃のストレスが抑えられていることに幸せを感じています。