2020.08.12 Wednesday
今日は夏季休暇を取得して、前から計画していた東京の展覧会等の散策に出かけました。先日も夏季休暇を使って「江戸東京たてもの園」に行ったばかりですが、今日も建築に纏わる散策になりました。例年なら夏季休暇をまとめて取得して旅行に出ていますが、コロナ渦の影響で今年は旅行には行かず、近隣を回って楽しんでいるのです。展覧会は東京ステーションギャラリーで開催している「きたれ、バウハウス」展を見てきました。今回は予約制なので自宅近くのコンビニで入場券を2枚購入しました。「きたれ、バウハウス」展は、100年前にドイツに設立された画期的な造形教育を行なったバウハウスの全貌を紹介するもので、私は40年前の滞欧中にバウハウスの資料を集めていました。ドイツ語による分厚い書籍は、今となっては読むことが出来ず、和訳のある書籍をあれこれ買って、バウハウスの教育について多少齧っていました。このNOTE(ブログ)に頻繁に登場するP・クレーやW・カンディンスキーが教壇に立っていた学校だったので、私は当時から興味津々だったのです。バウハウスはバウ(建築)とハウス(家、館)という意味で「すべての造形活動の最終目標は建築である。」(創始者グロピウスの言葉)とある通り、それまでの美術教育とは違う視点でのカリキュラムが組まれていました。詳しい感想は後日改めますが、家内は美大デザイン科出身なので、展示されていたバウハウスの学生たちの課題に、辛かった自分の学生時代を重ねていたようです。日本のデザイン教育にもその影響があった証でしょう。次に私たちが向かったのは池袋にある自由学園明日館で、重要文化財として保護されている学校施設です。設計は巨匠フランク・ロイド・ライトで、その弟子の遠藤新が受け継いで1921年に女学校として設立されました。ライト独特な「草原様式」と呼ばれる平たい校舎と中央に切妻屋根をもつ中央棟ホールが特徴的で、その空間のセンスにただ驚くばかりでした。自由学園明日館の詳しい感想も後日に回したいと思います。池袋駅からそんなに離れていない場所に、こんな建造物があったこともびっくりでした。せっかく池袋まで出てきたので、ジュンク堂書店に立ち寄り、美術関連の書籍を数冊購入してきました。中世イタリアの宗教画家ピエロ・デッラ・フランチェスカの書籍、フランス後期印象派ポール・ゴーギャンの彫刻に注目した研究書など、多少価格は張っても前から読みたいと思っていた書籍だったので、ちょっと楽しみになりました。今日はバウハウスの展覧会とフランク・ロイド・ライト設計による学校建築を見て回り、まさに建築に纏わる東京散策に終始した一日で、私にとっては幸せな時間でした。
2020.08.11 Tuesday
「石を聴く」(ヘイデン・ヘレーラ著 北代美和子訳 みすず書房)は「イサム・ノグチの芸術と生涯」を扱った評伝で、今回は第34章「ぼくの慰めはいつも彫刻」と第35章「ユネスコ」のまとめを行います。「1955年という年はほかにもさまざまなプロジェクトが実現せず、ノグチはそれを自分の個人的な難局ーノグチと山口(淑子)は離婚届を提出したーのせいにした。それは円満な離婚だったーどちらもが、じぶんたちの生活がそれぞれを別な方向に導いたという点で同意していた。」お互い世界的な名声のある彫刻家と女優ならば、すれ違いや自己主張の強さで一般人のような結婚は望めなかったのでしょう。このあたりはノグチの仕事も上手くいっていなかったようで、数々の空間デザインが雛形制作だけで終わっていました。そんな中でパリに新築されるユネスコ本部のパティオのデザインの依頼がノグチにやってきます。ノグチはパリに視察に行って、その隣の一段低くなった広いスペースに日本庭園を作ることを考えついたのでした。石や植木を日本に求めて、日本からの経済的支援を取りつけ、造園家重森三玲を紹介されます。重森三玲とともに選んだ石を日本から輸送していきますが、フランスの現地では作業員が大理石の彫像は扱えるが、でこぼこの地面の上に設置する庭石が扱えないことが分かったようです。「ユネスコ庭園にもどったノグチを多くの厄介事が待っていた。ユネスコの予算の問題から遅れが生じ、その春、重森が送りこんできた職人たちとの仕事はひと筋縄ではいかなかった。職人たちは伝統的な庭師として修業をし、ノグチの借り物のフォルム、日本の造園規則の変更などに賛成しなかった。しょっちゅう言い争いがあった。職人たちは予定より1ヶ月早く帰国してしまった。~略~10月、重森はさらにすばらしい信任状をもつとさえいえる職人を送りこんできた。三十歳の佐野藤右衛門は、1955年に京都府からノグチを手伝うよう依頼されたときにノグチに出会っていた。~略~腹を立てて帰ってしまったふたりの日本人庭師と同様に佐野は伝統主義者であり、庭園は近代彫刻であるというノグチの信念に同意しなかった。石の配置から水の流れ方、『蓬莱山』の形態まですべてが争いの的になった。~略~ノグチは石を設計図どおりにおくことにこだわった。佐野はより直感的なアプローチを信じ、『紙の上の計画はけっしてうまくいかない』と言った。~略~たとえユネスコ庭園の精神が日本からきたとしても、コンポジションはノグチ自身のものだ。そこには『個人的な工夫』があり、したがって真の日本庭園というよりは『ちょっと日本的な庭園』だった。」造園と彫刻、この根本的な相違は決して小さいものではないと私は実感しています。亡父が造園業を営んでいた私だからこそ気づいたこともあります。私は20代後半で渡欧後すぐにパリのユネスコ庭園を見に行きました。私自身いろいろ思うところもあり、これは稿を改めたいと思います。
2020.08.10 Monday
三連休の最終日で、今日は「山の日」になります。今日も熱中症警戒アラートが発令されるほど温度が上昇し、工房内は茹だるような暑さがありました。私は新作3点目の陶彫部品と4点目の陶彫部品に彫り込み加飾を施す予定でいました。彫り込み加飾は制作工程の中で一番時間がかかります。彫り込みする箇所をひとつずつ丹念に削り取っていくので、作業としては地味で、コツコツした姿勢が求められます。言わば私の得意分野ですが、工房内の気温の高い中での作業としては、身体に負担がかかります。私は昔から汗かきで、頭を覆っている手ぬぐいやシャツが忽ちびっしょりになってしまうのです。汗をかくと不思議と身体が動くようになり作業は進みますが、後で疲労が残って身体がおかしくなります。どこかで時間を決めて作業を切り上げないと長く続かないこともよく分かっています。そんなこともあって彫り込み加飾は今日だけでは終わらず、引き続き夏季休暇中もやっていくことにしました。乾燥を避けるため、陶彫部品の作業をしない面はビニールで覆って、彫り込みがやり易い状態を保つことにしました。今日は若いスタッフが2人来ていましたが、昨日とは違うメンバーでした。昨日から平面構成を始めた高校生は引き続き、工房にやってきました。もう一人は美大生でグラフィックデザインを学んでいる子です。4年生になった彼女は卒業制作のプランを練りに工房にやってきたのでした。美大はリモート授業になっていて、慣れないせいか調子が出ないと彼女は言っていました。私がお世話した子たちが今年4年生になって卒業を迎えます。それぞれの美大に卒業制作展を見に行きたいと思っていますが、卒業制作展は開催されるのでしょうか。明日は仕事で外会議があります。明後日から夏季休暇に入ります。
2020.08.09 Sunday
三連休の中日です。今日も朝から気温が上昇し、工房は茹だるような暑さに見舞われました。私は昨日用意した座布団大のタタラ数枚を使って、新作の4点目になる陶彫部品を立ち上げました。4点目の陶彫部品は、乾燥を待っている大き目の陶彫部品の二段目にあたるもので、底辺は僅かに小さく、高さは50センチほどになるノッポな形態をしています。制作工程では成形が一番彫刻的で面白いと感じていて、立体が立ち上がると私自身はワクワクしてしまいます。三連休の最終日である明日は、3点目と4点目の彫り込み加飾をやらなければならず、土台の寸法取りと切断は、三連休後の夏季休暇で行なうことにしました。工房室内の温度が高いせいで、陶土の表面が早く乾燥してしまうため、時々水を打ちながら作業をしました。陶彫制作は陶土の乾燥具合が関係するので、作り手の都合で休憩が入れられません。成形が始まれば休みなく作業を継続しなければならず、息切れする時もあります。今日は美大受験生が一人増え、2人の若い子たちが工房にやってきました。一人は前からデッサンに通ってきている子で、今日から平面構成をやらせることにしました。面相筆で平塗りを試しながら、アクリルガッシュの使い方を教えました。私の頃はポスターカラーだったのですが、外部のアトリエではアクリルガッシュを使うところが増えているようです。今日から加わったもう一人は鉛筆デッサンを始めました。私も高校生の頃は、大学で工業デザインを専攻したいと考えていて、デザイン科のための静物デッサンや平面構成や立体構成をやっていました。最終的には彫刻を専攻したにも関わらず、デザイン科入試のことを多少齧っているので、彼女たちの指導支援が可能なのです。思わぬところで私の転科が役立っています。それより工房の暑さに耐えて作業している彼女たちの健康状態を気遣ってしまいました。外部のアトリエならエアコンが効いているのに、工房は最悪な環境で申し訳ないと思っています。午後2時まで作業をやって彼女たちを車で送り届けました。夕方、自宅の食卓に置く布を選びに家内と横浜中華街に車を走らせました。食卓に置く布が古くなったので、夏らしいものに替えようと家内と相談していたのでした。中華街にあるチャイハネというアジア雑貨を扱っている店で、手ごろな布を見つけました。夕食にするため大きな豚マンも買ってきました。コロナ渦の影響で休日にも関わらず、人の混雑はありませんでした。陶彫制作は明日も継続です。
2020.08.08 Saturday
今日から山の日を含む三連休になります。三連休は陶彫制作に終始する予定ですが、新作の土台部分も考えたいなぁと思っています。私は早朝に工房にやってきて、座布団大のタタラを掌で叩いて数枚用意しました。これは明日の成形で使います。早朝から制作を始めたのは今日の昼間の気温上昇を考えたもので、熱中症警戒アラートが出されたら、工房にどのくらいいられるのか分からなかったため、早めに工房に出かけたのでした。今日は若いスタッフが10時過ぎに工房にやってきました。彼女は文学を志す人で、エアコンの効いた自宅よりも工房を選ぶのは、工房の方が集中力が増すせいかもしれません。私も新作の彫り込み加飾を始めましたが、集中はしてもシャツに汗が滲み、短時間で作業を終わらせなければならないかなぁと思いました。2人で昼食を取った後、1時間は制作をしていましたが、午後1時過ぎには工房を後にしました。蒸し暑い工房で我慢をすることは止め、若いスタッフを車で送りました。まだ陶彫制作が切羽詰った状況ではなく、健康に気遣ったためにこうした処置を取りました。その後、私はエアコンのある自宅でRECORDの彩色に追われていました。今月はRECORDの遅れを取り戻すことを目標に掲げています。下書きが山積みされた状況はまだ解消できていませんが、日々少しずつ進めていきたいと思っています。午前中は陶彫制作、午後はRECORD制作をやっていて、結局今日は充実した一日だったと振り返っています。自宅にいると気持ちが緩んで休憩を求めてしまいますが、そこを踏み留まって頑張れることが出来るかどうかが私の課題です。制作を始めてしまうと何のことはないのですが、制作を始めるまでが自分との闘いです。弱い自分に鞭打って創作に向かう気構えを作ることが大事で、そのちょっとした努力の積み重ねが大きな成果を生むのです。