2017.07.05 Wednesday
私が滞欧していた1980年代は、ウィーン幻想派の流行がやや下火になっていた頃でした。ウィーンの旧市街はゴシックやバロック時代の建造物が軒を並べていて、その装飾に富んだ建物の面構えは、異文化の中で彷徨う東洋人を圧迫するのに充分な迫力がありました。昼間は情緒がある街角でも、夜の帳が降りると建物はさながら怪物のような容貌に変化するのでした。そんな環境なら魑魅魍魎が入り込む余地がありそうで、幻想絵画が登場する素地があったように思います。ウィーンには美術史美術館があり、ブリューゲルのコレクションが有名です。ブリューゲルの絵画は宗教性より風俗性が目立っていて、農民生活の風習や諺も隠されていて、私は飽きることなく眺めていました。美術館に行くと、ブリューゲルの絵の中に入り込み、絵画空間を散歩することが当時の私の密かな趣味でした。その先達のボスも私が大好きな画家で、在籍していたウィーン国立美術アカデミーに隣接する付属美術館に「最後の審判」がありました。ボス(私にとって馴染みがあるのは独語のボッシュです。)は渡欧前に知識を仕入れていたわけではなかったので、美術館で初めて見たときは本当に驚きました。ウィーン幻想派と見違えるくらいでしたが、これが中世に描かれたことを知って興味津々になりました。スペインを旅行した時に、どうしてボスのコレクションに気を留めなかったのか悔やみました。東京では閉幕してしまった「バベルの塔」展にもボスの「放浪者(行商人)」と「聖クリストフォロス」の2点が来日していました。時代的には宗教画としての伝統が見て取れますが、それ以上にボスは奇妙な創意をつけ加えていて、ボス特有の怪物たちが跋扈する世界に、現代に通じる幻想世界を認めるのは私だけではないでしょう。幻想絵画を生み出したウィーンの美術館で見たボスとブリューゲル。あまりにも合致する環境の中で私が魅了されたのも自然だったのではないかと振り返っています。
2017.07.04 Tuesday
既に東京で展覧会が終わっている「バベルの塔」展をここで取り上げて大変恐縮ですが、展覧会の会期終了間近に慌てて見に行ったため、感想が後になったことをお許しください。これから「バベルの塔」展は大阪に巡回しますので、大阪に行った折にご覧いただく機会があれば幸いと存じます。自分は今回来日していたブリューゲルやボスの絵画には思い入れが強く、過去のNOTE(ブログ)にも幾度となく取り上げています。20代の頃、ウィーンにいた自分はウィーン美術史美術館で、今回来日していた「バベルの塔」より前に描かれた1563年制作「バベルの塔」を何度も見ていて、印象が目に焼き付いています。オランダのボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館の1968年制作の作品はウィーンのそれより小さいながら極めて緻密に描かれていて、その超絶技巧に目を見張りました。とりわけ東京藝大による3DCGによる建築的解説は、非常に面白く、名画に一層の興味を湧かせる効果がありました。ウィーンの作品と今回来日したロッテルダムにある作品の比較が図録にありましたので引用いたします。「より広く親しまれているのは、1563年に制作されたウィーン美術史美術館の作品であり、画集で目にする機会も遥かに多い。それに比べてボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館の絵は、サイズが小さいうえに基本的にはウィーンの絵の『焼き直し』と捉えられているせいか、知名度の点では後塵を拝しているが、実際には創意を欠いた『縮小再生産』からは程遠い、独自の存在意義を備えた傑作である。大気と光の精妙な描写、明暗のグラデーション(諧調)の豊かさ、そして色彩の鮮やかさの各点において、このロッテルダムの絵は第1作を上回る出来栄えを誇っている。」(高橋達史解説)私はウィーンの絵よりも、さらに完成に近づいたバベルの塔をそこに見取り、さらに深みのある色彩により空間の幅が生まれているように感じました。構築性のあるものが好きな私には、ずっと見ていても見飽きない魅力がありました。
2017.07.03 Monday
先日、個展のダイレクトメール(案内状)の印刷が出来上がってきて、東京銀座のギャラリーせいほうに届けたところですが、ホームページにも案内状をアップすることにしました。私の手許に残っている案内状は僅かなので、多数の人に広報するために例年ホームページを使っています。今回の案内状の画像は野外で撮影した「発掘~宙景~」です。工房の前に野外制作が出来るようにコンクリートを敷き詰めた空間があります。陶以外の石材や金属を加工するために作った場所でもあるのですが、今のところ作業には使っていません。規模が違い過ぎますが、「イサムノグチ庭園美術館」で見た石壁サークルが野外工房の発想になっています。いずれ陶彫と石彫を組み合わせることはあるのでしょうか。もしそんな機会が訪れたら、野外工房に石を点在させて制作に励みたい意向が自分にはあります。案内状の撮影に話を戻しますが、この日は晴れて気持ちのいい陽気でした。新緑が美しかったので、案内状にはそんな風景も入ってきています。野外での撮影は光と影が織りなす美しさがあり、そこに空気感も感じられて作品が豊かな表情を見せるのです。案内状は個展のイメージアップに繋がるかなぁと密かな思いを抱いています。
2017.07.02 Sunday
新作の梱包が終盤を迎え、朝から工房に行こうとしたところ、工房のある植木畑に見慣れない物体が動いていました。長さは40cmもあろうかという陸亀でした。陸亀は工房への路を塞いでいて、私はちょっと驚きました。確か先週だったか、仕事から帰ってくると、家内が驚いたことがあったとその日の顛末を私に話して聞かせました。その日、自宅に隣接する小さな十字路に大きな亀がいて、郵便局員が知らせてくれたと言うのです。警察に連絡をした後、近所の人たちも出てきて、区の土木事務所にも連絡をしたようです。土木事務所の人が陸亀を引き取っていったそうですが、今回の陸亀はそれと同じものかどうかはわかりません。その時と同じ巡査がやってきて、前回とは違う陸亀かもしれないと言っていました。今日は日曜日なので土木事務所はやっていませんでした。警察が来るまで陸亀がぐんぐん移動してしまうので、私は畑にあった鉄柵を捥ぎ取って、陸亀の前を塞ぎました。陸亀をよく観察すると、小さな目が可愛らしくて気に入りましたが、拾った陸亀を飼うわけにはいかず、警察官が数人で捕獲してパトカーに乗せていきました。拾った猫のトラ吉の次が拾った亀のカメ吉では洒落になりません。ただし陸亀をそのまま放置しておくと路上に出て行く可能性もあり、陸亀の命が危険に曝されるので、警察に連絡をしたのでした。どこかの家で飼っていた陸亀が逃げ出したのではないかと思っていますが、近所迷惑なことです。この騒動があって工房での梱包作業のヤル気がなくなりました。来週末でも間に合うので、最終的な梱包は次回にしようと思います。今日は時間ができたので、家内と夏季休暇をどこに行こうか話し合いました。私は故宮博物院を見に台湾に行きたいと家内に言いました。たまにはこんな余裕の日があっても良いのではないかと思いました。
2017.07.01 Saturday
7月になりました。今月は東京銀座のギャラリーせいほうで個展を開催いたします。毎年やっていて、今年で12回目の個展になります。これも例年のことですが、今月は来年に向けた最新作を始める第一歩となります。最新作のイメージは既にあります。今月は創作活動の次へ繋がるステップになる1ヶ月でもあるのです。次のステップとして、さらにテーブル彫刻を極めたいと思っています。最新作は大小のテーブル彫刻を複数作ろうと考えています。まだ朧気なイメージしかありませんが、思索がまとまれば制作を始めます。出来れば個展開催の前から最新作に入りたいと思っています。今日は個展に出品する「発掘~宙景~」の梱包が全て終わりました。陶彫用の木箱は7箱作りました。「発掘~座景~」は陶彫部品のひとつずつが小さいので、箱数は少なくて済むかなぁと思っています。これは明日やっていきます。ともかく今月は、彫刻の展開が今年の個展出品作から来年の出品作へバトンを引き継ぐ1ヶ月になるので、充実した時間を過ごしたいと願っています。展覧会も大きな美術展が開かれていて、鑑賞も充実させたいと思っています。RECORDは下書きだけで山積みになったものを何とかしたいと考えています。ほぼ3週間分はあるでしょうか。毎晩数日分ずつ彩色や仕上げをやっていけば追いつくのではないかと思います。読書も新しい書籍に挑みたいと考えています。毎年夏になると読書三昧になるのが学生時代からの習慣ですが、ここ数年はなかなか夏休み気分になれなくて、そのままの生活が続いています。夏季休暇はしっかり頂いているのですが、念願のアジア旅行に行ってしまうことが多くて、読書には時間が割けません。今年の夏こそ夏らしくしたいと思っています。