2016.06.06 Monday
国際規模のトリエンナーレ等を見ていると、人間社会がもつさまざまな課題に向き合っている作品が目立ちます。それは一昔前からあって、街路に出て行ってパフォーマンスをしたグループに、芸術至上主義を否定した脱芸術としての行動があり、当時は社会問題化もしていました。美意識が広がり、芸術は絵画や彫刻、工芸という括りの中では語れないものになっています。芸術行為は価値転換を図る思索の産物であり、それを鑑賞者に提示してみせることが現在も続いています。現代アートは新しいものを創りだすことではなく、新しい価値観を見いだすことなのかもしれません。社会と自分の表現をどう関わらせるか、その視点を持つことが現代アートとして認められるかどうかを判断できるのではないかと考えます。現代作られているものは全て現代アートといった開き直った意見もありますが、自己完結をしてしまう旧態依然とした表現と、社会に対して明確な主張をする表現とは、かなり隔たりがあると思います。翻って自分の表現はどうなのか、自問自答するところですが、陶彫を媒体にしていることで自然環境の中に出ていって、他者との関わりを演出できる契機を内蔵していると自負しています。今はギャラリー空間の中で、自己完結しているように見えますが、さまざまな展開は充分に可能です。今後も社会との関わりを考えた作品を作っていきたいと思っています。
2016.06.05 Sunday
来週の土曜日が図録用の撮影日になっている関係で、今日は朝から工房に行って、その準備に追われました。台座20点は完成し、陶彫部品の窯出しもしました。まだ万全という訳ではなく、細かな仕事が残ってしまいました。ウィークディの夜に工房に通って、印貼り等の準備を進めたいと思います。「発掘~環景~」は、まだ全体を並べたことがなく、イメージとしてはこんなカタチになるだろうという見通ししかありません。今日から梅雨入りで雨が降っていたため、野外工房に台座と陶彫部品を持ち出すことが出来ず、予定変更を余儀なくされました。今までも撮影日に漸く全体を設置出来ることがあって、その時初めて全体像を把握していました。今回も珍しいことではありませんが、イメージ通りかどうか心配なところもあります。現在進行形の作品は、常にハラハラドキドキしていて、それが精神的な緊張を孕み、ゴール前のパワーに繋がっていると思っています。やりがいのある仕事だと思っていますが、撮影が終わったら、多少休憩を入れないと倒れてしまうかもしれません。今日は久しぶりに中国籍の若いスタッフが来ていました。彼女は大作に挑むらしく大きなパネルを作っていました。週末の工房には誰かしら制作をやりに来ています。環境的には複数のアーティストが工房を利用していて活気があると思っています。
2016.06.04 Saturday
週末になって朝から制作三昧です。来週末は図録用の写真撮影があるので、制作に拍車がかかっています。今日は朝8時半から夜の8時半まで12時間の制作時間となりましたが、精神が覚醒しているため疲れを感じないのが不思議です。陶彫の他に折り畳み式の台座20点を作っていて、これも作品の重要なパーツなのです。気分が高揚しているためか、時間が過ぎるのが早く感じられます。大学院生の若いスタッフが今日も来ていて、野外工房で木彫の表面を滑らかにするため電動工具を使っていました。自分は彼女に背中を押されている感覚があって、お互い良い刺激になっているように感じます。作品は制作途中の現在進行形がいいんだよねと話し合いながら制作を進めていました。確かに作品が仕上がり、個展会場に持っていくと、もはや作品は自分の手を離れてどこかへ歩き出していってしまいます。作品は自分の手許から、まさに生まれでようとする瞬間がいいと思っていて、現在進行形の楽しみは作家でないと味わえないものです。自分の次なる新作のイメージは、現行作品を作っている最中に出てきていて、常に作り続けていくことが可能です。ずっと現在進行形のまま制作時間が過ぎていくことが、自分の満足を充たすものではないかと思うのです。作品完成と同時に、あるいは完成前に次の作品制作がスタートしているのが自分の制作方法です。休憩は完成して取るものではなく、制作途中に取っています。現在進行形の楽しみを生きている限り味わっていきたいと思うこの頃です。
2016.06.03 Friday
今月のRECORDのテーマを「ながれる」にしました。RECORDとは、一日1点ずつポストカード大の平面作品を作っていく総称で、ホームページにもアップしています。今年のテーマはひらがな4文字によるもので、毎月ごとにその時々の気持ちを表すコトバをテーマに据えています。「ながれる」は具象としては水に関するイメージが思い浮かびますが、広義に捉えればさまざまな事象が考えられます。そろそろ梅雨の時季を迎えるにあたり、潤う自然やその反対に増水する河川もあって、私たち日本人の生活と水は切り離せない関係にあります。滔々と流れる大河を眺めていると心が解放される一方で、氾濫すると甚大な被害を及ぼすこともあります。田畑を潤し、農耕の実りをもたらす水が、時として牙をむく時があって、自然のコントロールに人は無力を感じることも暫しあるのです。「ながれる」は懸案だった課題を水に流すという解決手段にも用います。言わばリセットです。そんな意味を含めて、今月のテーマに取り組んでいきたいと思っています。制作中のRECORDを飼い猫トラ吉に台無しにされると、それを水に流すのが苦しいので、そこは予防策を講じて頑張りたいと思います。
2016.06.02 Thursday
今日、横浜は開港記念日で、職場関係の仕事が縮小されたため、私は年休を取りました。朝から工房にいて、「発掘~環景~」の台座を制作していました。この作品は20体の陶彫をリング状に配置するものです。そのひとつひとつに台座が必要で、椅子のような台座に背面と上部と前面にそれぞれ陶彫部品を接合するのです。ひとつの台座に3個の陶彫部品がついて1体になります。台座は折り畳めるように作っています。個展の後、工房のロフトで保管する際に折り畳んでコンパクトになると場所をとらないからです。陶彫の色合いに馴染ませるために台座にも彩色しました。今日は台座の部品を塗装して、工房の床に所狭しと置きました。次の週末に組み立てていこうと思っています。台座制作と同時に陶彫部品の仕上げや化粧掛けを行い、夕方になって窯入れをしました。明日の夜の工房は電気の関係で使えません。今日は大学院生のスタッフが工房に来ていました。彼女も自らの修了制作に必死に取り組んでいて、野外工房で木材を削っていました。勇ましい姿勢になってグラインダーの音を響かせていました。横浜は好天気に恵まれ、野外制作を進めるには絶好の機会でした。工房内では陶彫、工房外では木彫をやっていて、今日の工房はフル稼働している状況でした。次の週末も継続です。