2016.05.22 Sunday
今日は懇意にしているカメラマン2人が工房にきました。先日撮影した個展案内状用の画像が出来上がっているので、確認に来たのでした。数点の画像のうち1点を選びました。「発掘~表層~」を野外工房で撮影した写真のうち、樹木の影が落ちている画像にしました。個展案内状は大切な広報のひとつで、この画像を見て個展に足を運んでいただいている方も多いのです。新作を見せるファーストコンタクトなので、インパクトの強い作品を持ってこなくてはならないと思っています。このところずっと野外で撮影した画像ばかりを案内状に使っていますが、風や光を感じる野外は爽やかな雰囲気が漂い、案内状には格好のモティーフなのです。多くの写真を選ぶ中で、自分は決定が早いほうではないかと思います。予めイメージが出来上がっているのがその要因です。次は6月11日の撮影を終えて、全体の図録が出来上がってくる予定です。そのためには現在進行形の「発掘~環景~」を完成させなければなりません。今日もカメラマンが帰った後も制作に追われました。ここ数週間は心が休まる時がありません。身体も気を抜けば疲労が襲いますが、制作をしている最中は至って元気です。今日は若いスタッフが2人工房に来ていました。一人は昨日から油絵を描いていて、チェコの画家ミュシャのような繊細で装飾に充ちた画面ですが、テーマは初々しい少年です。退廃芸術を髣髴とさせるような空気感が漂います。もう一人は大学院の修了制作に着手していて、厚板を重ねて大きな凸状の円形画面を作っています。野外工房で鑿を振るっていますが、完全なる彫刻的仕事ではなく、先端芸術専攻なので単純なオブジェではないようです。パワフルな2人の女子に背中を押されて、私も陶彫成形や加飾、木製台座の制作等に精一杯取り組みました。今週もウィークディの夜に工房に通います。
2016.05.21 Saturday
陶彫を始めてから栃木県益子町にある明智鉱業に陶土を注文しています。かつて陶芸家の友人から明智鉱業を教わり、益子を訪ねた時は必ず店に顔を出しました。さまざまな陶土を使って混合実験をやっている時も、少量ずつ陶土を買って帰りました。道具もここで調達しています。複数の陶土の配合が決まってからは、それら陶土を大量に購入していますが、最近は横浜に郵送してもらっています。今回は400キロの陶土を相原工房に届けてもらいました。運搬業者から電話があったのに気づかず制作をしていたら、工房の扉をノックして運搬業者がやってきました。見覚えのある業者さんだったので、トラックをガレージ側に回して待機していました。陶土が残り少なくなっていて心もとない気分でいたところ、早めに届けてくれて助かりました。材料あっての創作活動です。今日は朝から工房に篭って、土錬機を回したり、タタラを作ったりしていて忙しく過ごしていました。「発掘~環景~」の台座も作り始めました。これは木製です。最終的には夜9時まで頑張り続けましたが、さすがに腰が痛くなり、作業を切り上げました。今日はイラストレーターをやっている若いスタッフが工房に来て油絵を描いていました。社会人になると生活のための仕事が大変になり、創作活動が疎かになりがちです。自分もその気分はよくわかります。好きなことだけやって食べていければ、それに越したことはありませんが、なかなかそうもいかず、時間のやり繰りに苦しむことになります。余程運がいい人以外は、誰でも通る試練の道で、その途上で創作活動を諦める人も少なくありません。工房に関わりのあるスタッフたちは、ぜひ継続して欲しいと願っています。
2016.05.20 Friday
国公立美術館の金曜日は20時まで開館していて、仕事をしている者にとってこれは有り難い延長時間になります。週末を目の前にして、ぐったり疲れた身体を引きずって東京の美術館へ行くのは厳しいと思う面もありますが、少しでも非日常空間に浸ると、鋭気が甦ってくるのが不思議です。ただ、疲労に拮抗して、何となく立ち寄るという発想ではなく、展覧会を観たいという意思があって、東京まで足を運ぶことが多いと思っています。今日は出張の後に、最寄りの駅で家内と待ち合わせ、東京上野に向かいました。世界文化遺産に登録されたル・コルビュジエ設計の国立西洋美術館で開催中の「カラヴァッジョ展」に行ってきました。夜になっても鑑賞者は多く、犯罪者の烙印を押された特異な画家の、日本での人気が窺い知れました。「カラヴァッジョ展」についての感想は後日詳しく述べたいと思いますが、光陰の捉えの素晴らしさに以前から注目していた画家なので、今回まとまった作品が来日していたことに感動を覚えました。もうひとつ、国立西洋美術館を建築したスイス人建築家ル・コルビュジエにも私は注目していて、改めて美術館全体のデザインを見直す契機になりました。世界文化遺産に登録されるのは喜ばしいことで、これも別の機会に稿を起こしたいと思います。私は世界的な巨匠ル・コルビュジエを知ったのは、そんなに昔のことではありません。滞欧中に知識としてル・コルビュジエという名前を覚えただけでしたが、国立西洋美術館は学生時代からよく出入りしていた美術館でした。前庭にロダンの作品が野外展示されているので、前庭だけなら無料なので利用価値は高かったのです。学生時代に具象彫刻をやっていた私は、ロダンやブールデルは格好な塑造研究の対象でした。当時は同美術館がル・コルビュジエの設計によるものとは知らず、簡素な構造の美術館くらいにしか思っていませんでした。今になって漸くル・コルビュジエの足跡に気づき、機能的な美を再確認した次第です。今晩はカラヴァッジョとル・コルビュジエに酔いしれた特別な夜になりました。
2016.05.19 Thursday
「幻想の未来」は日本教文社が出しているフロイト選集8「宗教論」に含まれている論文です。「幻想の未来」という論文を読みたくなったのは、以前読んだ「フロイト入門」(中山元著 筑摩選書)によるもので、その時のNOTE(ブログ)に私自身が、「晩年のフロイトは宗教批判も厭わない論文を発表して、世間の酷評に晒されました。フロイトが精神分析の立場から人類史を総括したことに、私は興味が尽きません。『幻想の未来』、それに続く『人間モーゼと一神教』という論文が読みたくなりました。近いうちに書店で探してみようと思います。」と書いています。東京で本書を探し当てて、まず「幻想の未来」を読むことにしました。正確な書籍名は「宗教論ー幻想の未来」(フロイト著 吉田正己訳 日本教文社)です。日本での翻訳初版は昭和45年1月なので、文章を読んでいるとやや古い感じを持ちますが、活字の雰囲気と意訳の硬質な感じがとても心地よく、情報として読書をしているというより、活字を目で追う楽しみがあります。フロイトは晩年になって自ら研究してきた精神分析学を文化論に応用して、本書のような論文を発表しています。さらにフロイトがドイツのナチスに当時迫害されていたユダヤ人であることを常に考えていたはずです。ひとつの民族の存亡に関わることも百も承知で、このような宗教論を組み立てたのはどんな心境だったのだろうと思いを馳せてしまいます。ともあれ「幻想の未来」を読んでみることにしました。今回の通勤時間の友は人類史を俯瞰する壮大さをもっています。
2016.05.18 Wednesday
毎晩、自宅の食卓で飼い猫トラ吉に邪魔されながら、小さなRECORDを制作しています。下書きや仕上げは、トラ吉が食卓に飛び乗って鼻先を私の描いている手にくっつけてきても問題はありませんが、彩色している時はトラ吉を部屋から閉め出しています。部屋に入れろとトラ吉が鳴き叫ぶのを無視して、絵の具の実験をやっています。RECORDは小さな宇宙に挑むイメージトレーニングのようにも感じるし、睡魔や忍耐と闘っている修行のようにも感じます。今年のテーマはひらがな4文字で考えています。5月RECORDのテーマを「まじわる」にしました。人と人との交わりや人と動物の交わり、そうした日常の触れ合いを抽象化して表現してみることにしました。RECORDはもう3500点に迫る制作点数で、過去にも同じような表現をした覚えがあり、技法が停滞化し、また硬直化している傾向もあります。新しい表現を獲得するには時間が足りず、多忙感に喘ぐこともありますが、ともかく毎日1点ずつ何が何でも制作していく姿勢を貫こうとしていて、継続が目的のひとつになっています。今晩もトラ吉に邪魔されながら、「まじわる」をテーマにしたRECORDを描きました。