2013.03.03 Sunday
今日は朝から夕方まで工房にいて木彫荒彫りに終始しました。「発掘~地殻~」は畳大のレリーフが6点あり、それを屏風にして展示する予定です。かつて作った「発掘~鳥瞰~」「発掘~混在~」に続く三双屏風です。陶彫部品による集合彫刻は過去の作品にもありますが、前作2点と異なるところは、それを囲む木彫による表現です。「発掘~混在~」は厚板を彫りこんでボックスにして砂マチエールを施しました。現在作っている「発掘~地殻~」は集成材、つまり木材の塊を彫りこんでいるため、その彫り跡を残していこうと思っています。まだ彫り跡を整えるまで作業が進んでいませんが、6点のうち2点の荒彫りがほぼ終わりました。全体をバランスよく彫っているので、残る4点も半分以上は荒彫りがしてあります。今月は荒彫りを全て終えたいと考えていますが、果たしてどうなるのか、ともかく今日は鑿の先ばかりを見つめて朝9時から夕方4時まで作業を続けました。気持ちが彫りに集中してくると鑿先が彫りたい角度にぴったり合ってきます。1回で彫る角度が決まるのです。まだ面取り状態ですが、面に高低差がつき曲面が現れ始めると、いよいよ彫刻らしさが出て楽しくなってきます。ウィークディの夜にもやりたい気分ですが、木槌の打つ音が響いて近所迷惑になることも考えられるので、もし夜来られたら別の作業を考えようと思っています。
2013.03.02 Saturday
相原工房には週末になると、美大卒業生や現役美大生がやってきます。彼らを私は工房スタッフと言っていますが、私の作品を手伝う名目で、自らの課題をやっていることが多いのです。私は彼らに実際にある自作の手伝いではなく、別の面で助けられています。彼らだって週末ともなれば休みたい気持ちもあるのでしょうが、創作活動に取り組むため工房にやってきます。まだ創作が始まったばかりの若い世代なので、実験的な試行錯誤も多く、それぞれが自分探しをしています。それを見るにつけ、自分も今の制作に立ち止まっていられないと感じます。自分が助けられていると感じる時は、そうした彼らの悩みや希望を受け止め、自分も振り返ることが出来る瞬間なのです。意欲では自分も彼らに負けません。彼らが思索する創作への原点を、自分も忘れないようにしたいと思います。
2013.03.01 Friday
3月になりました。職場は年度末を迎え、多忙を極めます。毎年のことですが、この時期の公務員と彫刻家の二足の草鞋は大変厳しいものがあります。職場では年間のまとめに入り、各種報告書を作成するために監査を含めて四苦八苦の仕事が続きます。週末は「発掘~地殻~」の制作が佳境を迎えます。週末はどのくらいの時間が確保できるのか、僅かな時間を睨みながら木彫に励まなくてはなりません。時間があれば作る、時間を作ってでも作る、これを肝に銘じながら今月を乗り越えていきたいと思います。本来なら春麗らかな季節になり、花見に興じたい気分ですが、満開の桜を横目で流しながら仕事に右往左往している自分がいます。例年のことなので慣れてはいますが、定年まではこんな状況かなぁと思っています。ともかく健康に気遣いながら頑張っていきます。
2013.02.28 Thursday
「彫刻家との対話」(酒井忠康著 未知谷)を読み始めました。以前本書の姉妹編にあたる「彫刻家への手紙」(酒井忠康著 未知谷)を読んだことがあって、現代彫刻に関する著作の多い美術評論家の思索は、自分にとって大変身近で、それだけに自作を振り返ってみる良い機会になります。現代の彫刻表現は環境と向かい合うパブリック・アートとして現存しているものもあり、そうした大きなプロジェクトに対する著者の論文を読むのも楽しみのひとつです。自分が学生時代に大きな野外彫刻展が次々に企画され、自分の師匠を含む多くの彫刻家がパブリック・アートを意識し始めました。その世代の彫刻家と著者の関わりにも興味があります。自分の読書時間は通勤時間に限られているので、読破するまでに時間がかかりますが、楽しみながら現代彫刻の在り方を考えていきたいと思います。
2013.02.27 Wednesday
「ゲーテ美術論集成」(J・W・フォン・ゲーテ著 高木昌史編訳 青土社)を読み終えました。北方絵画・建築・彫刻・版画のゲーテによる美術論がコンパクトにまとめられていて、概観を把握するのに好都合でした。最後の解説にあった箇所を抜粋します。「18世紀後半から19世紀初めにかけては、美術批評がいまだ生成過程にあり、特に古い時代の作品に関しては十分な情報もない有様」で、「原画に接する機会は、交通機関の発達した今日からは想像も出来ないほど少なかった。」とあります。確かにそうした状況を踏まえると、本書に記されているゲーテの諸論は、その内容からして詩聖の力が遺憾なく発揮されたものだと言えます。現代だからこそゲーテの視点や思索を理解できますが、18世紀当時からすれば作品そのものから洞察する先見性や解釈力は凄いものがあります。本書は「ゲーテと歩くイタリア美術紀行」の姉妹編として著されたものなので、その前著となった「ゲーテと歩くイタリア美術紀行」も読んでみたいと思いました。最後にゲーテの言葉を引用します。「絵画は眼にとって現実そのものよりも真実である。それは、人間が普通に見ているものではなく、人間が見たいと思うもの、見るべきものを提示する。」