2012.11.08 Thursday
昨日のNOTE(ブログ)で「不安定の中の安定」を書いていて思い出したことがあります。自分が23歳の頃のことです。大学で彫刻を学んでいた自分は、卒業制作を終え、五美大卒業制作展と称した東京都立美術館での彫刻展示をしていました。卒業式まで指折り数える日になり、とくに就職活動もしていなかった自分は、とりあえず父の営む造園業を手伝いながら海外に行く方法を探ろうと考えていました。そんな時に昼ごろになると決まって身体が重くなり、動けなくなってしまうのでした。これは病気と思い、大きな病院で精密検査もしましたが、異常は見つからず、自分は一体どうなってしまったのか不安が募るばかりでした。表向きは普通に振る舞っていたものの毎昼の数時間に恐怖さえ感じました。その後、海外へ行く目途が立つと不思議に身体が楽になり、元の自分に戻りました。あの2か月は何だったのだろうと述懐していますが、今も原因はわかりません。自分なりに考えると精神疾患の一つではなかったかと思うのです。当時は彫刻が人生を賭けるほど面白くなって、卒業により大学での制作環境が失われてしまうことが残念でなりませんでした。将来の不安、やりたいことが見つかっても出来ない不満、浮世離れした自分に現実が正視できない自己嫌悪、でも何とかしたい欲求が絡み合って、自分ではどうすることもできない甘えの構造があったのではないかと思うこの頃です。23歳の頃…今でも覚えている当時の気分に比べれば、社会人として甘えがなくなった現在の方が情緒が安定しているように思います。たとえ、時間に追われていたとしても…。
2012.11.07 Wednesday
師匠である彫刻家池田宗弘先生の初期の作品に「不安定の中の安定」という真鍮直付けの作品があります。今回はその題名を借りただけで実際の彫刻のことではなく、自分が感じる不安定の中の安定について書きます。自分は幼い頃から心に不安定な感情を抱いていました。その不安定さも些細なことが多く、自分で解決できる程度のものでした。両親がいて何不自由なく育った自分にとって多少大袈裟ではありますが、心のバランスの悪さをずっと感じていたのです。引きこもりや荒れることもなく過ごした10代でしたが、常に他人を規範にして人と同じように目立たないように過ごしたいという願望がありました。心の安定は不思議なことに美術に関わっていることで得られました。一人で何かを作っている時が幸せでしたが、専門家になろうとした時から心の安定は不安定に変わりました。ところが今までと異なり、人より個性的であろうとする意志が芽生えました。振り返れば自分は他人との協働があまり得意でなかったのかもしれません。と言うのは美術に関わる不安定と幼い頃から持ち続けた不安定の質が違うような気がしていました。他人との協働による苦手意識は就職する際に克服し、組織の一員としてずっとやってきました。以来、組織に助けられ、また数年前から組織を率いる立場になっています。でも僅かに不安定な気分は今も残っていて、その気分との小さな闘いを日々繰り広げています。それが生きていくことなのかもしれません…。
2012.11.06 Tuesday
「再び、カンディンスキー」という表題をつけましたが、20世紀初頭に活躍したロシア人前衛画家カンディンスキーに関する文章は、「再び」どころではなく再三再四NOTE(ブログ)で取り上げてきました。書店に行ってカンディンスキーに関する書籍を見つけると、思わず購入してしまう癖が自分にはあります。今回読み始めた「青騎士の誕生 カンディンスキーの舞台芸術」(小林奈央子著 早稲田大学出版部)も先日見つけたもので、早大演劇博物館に集められた学位論文の中で優れたものを出版しているとの序文がありました。原文はドイツ語だそうで、カンディンスキーの舞台芸術に関する先行研究を踏まえた上で自論を展開しているようです。まだ読み始めたばかりで、今後の展開が楽しみになっています。とくに舞台美術は自分が昔から興味関心を抱いていた分野で、カンディンスキーの「舞台コンポジション」がまとまったカタチで論考されている本書に出会えたことが幸運と思っています。舞台は非日常の世界を創出するものです。言語または身体言語も人の心の中に入ってきて私たちの感覚を揺り動かします。舞台芸術はカンディンスキーが唱える「精神的なもの」を表現するには好都合な媒体と言えます。絵画の世界では非対象へ移行する当時のカンディンスキーが、舞台芸術ではどんな思索をしていたのか本書の解釈や論拠に期待しています。
2012.11.05 Monday
RECORD(記録)とは一日1点ずつ日記のように小さな作品を作り続ける総称を言います。ポストカード大にカットした厚紙を使って、毎日仕事から帰宅した夜の時間帯に描いています。小さな画面なので工房には持っていかず、自宅の食卓が制作場所になっています。夕食後、そのまま食卓でRECORDを描いていると、飼い猫のトラ吉が食卓に飛び乗ってきて邪魔をします。トラ吉を何度か追っ払いながら画面に筆を走らせます。今月のテーマは「文様」に決めました。石碑に彫られた象形文字、布に織り込まれた民族特有のカタチ、日本の古来からある伝統文様等、数え上げると意味を解せなくても美しさに惹かれる文様デザインが少なくありません。今月も日々頑張っていこうと思います。
2012.11.04 Sunday
今日は好天に恵まれた一日でした。工房内はやや寒くなり、若いスタッフの足元に早くも電気ストーブを置きました。朝8時過ぎから夕方5時近くまで作業を続け、夕飯後に再び工房に行って窯入れをしてきました。今は陶彫制作のサイクルがうまく回っています。週末の終わりに必ず窯入れをして、水曜日に窯出しをする、木曜日と金曜日は仕事帰りに工房に寄って、成形やら加飾を行う、また週末にまとまった作業を行う、こんなサイクルを思い描いているのです。順調にいけば「発掘~地殻~」はいい具合に出来上がっていき、年末には陶彫部分が終わり、木彫部分も半分程度終わるはずです。ところが例年そんなことはなく、毎回アクシデントに見舞われ、部分的な再制作を余儀なくされています。余裕を持って完成した試しがないので、今回も心の準備だけはしています。その中でも焼成が一番やっかいな工程で、最後になって歪んだり割れたりして計画変更になるのです。今晩も窯の中で焼成が始まっています。これが面白いと思えるのは成功した時だけで、焼成中は心が休まりません。炎の神のみぞ知る他力本願の仕上げです。明日は出勤前にいつものように窯の温度確認に行きます。