Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • 9月の制作を振り返る
    今月は週末に限らず平日の夜も何度となく工房に通いました。今月は残暑が厳しかった季節から、朝晩冷え込んで秋めいた季節に移り変わった1ヶ月でした。この涼風が仕事から解放された夜の時間帯に工房へ自分の足を向かわせた契機になりました。夜は気持ちの良い空気の中で制作し、創作意欲に弾みがつきました。これから昼間の仕事も忙しくなってきますが、時間を見つけては工房に足を運びたいと思います。陶彫部品の成形も今月は例年になく多く作りました。まだ窯に入れていない作品が数多くあるので、成形を多く作ったからといって陶彫は全てがうまくいっているわけではありません。来月は少しずつ窯入れをしていきたいと考えています。RECORDも今月最後の1点を作り終えました。陶彫新作は来月に少しでも新作の全体像を捉えられればと思います。新作は今年の師走までが勝負だと心得ています。
    夜の工房で土練り
    仕事から帰って余力がある時は工房に行くようにしています。夜の工房は昼の雰囲気とはまるで違います。蛍光灯の光に照らされた作品は、それはそれでなかなかいい雰囲気が漂います。なにより不思議な集中力が出て制作が進みます。今晩は夕食を済ませた後、工房に向かいました。夜8時から10時までの2時間、土錬機を稼動させて土練りをやりました。FMヨコハマを流し、50キロの陶土を前にして土錬機にかけて菊練りをすると、額から汗が出てきました。でも気分は最高でした。工房内は秋めいて肌寒く感じる陽気でしたが、汗をかきながら陶土に戯れることの出来る環境に感謝です。ただし、夜工房に出かけるとRECORDを描く時間の確保が難しいのです。陶彫とRECORD。勤務外の時間を上手く使いながら、バランスをとってやっていきたいと思います。
    11‘個展評壇より
    『木・陶による「構築シリーズⅡ」。陶は古代土器のようでテーブルの役割。そこから木が銛のような形で天を向く。巨大で壮観。』(美じょん新報 9月20日付)これは毎回個展の評を書いていただいている美術系新聞からの抜粋です。掲載された文章に限らず個展に足を運んでいただいた方々からさまざまなご意見、ご感想をいただきました。自分の作品のモチィーフが説明しやすい具象ではなく、非対象とも言うべきものなので、自作はかなり鑑賞者側のイメージに委ねられる性質があります。私は敢て作者のイメージの源泉は言わないようにしていました。なかには深い洞察を試みていた方もいらっしゃいました。自分としては見に来ていただいた方々の発想のユニークさを楽しみつつ、また思索の凄みに脱帽することもありました。評論のための評論ではなく、感じ取った思いを語ることが優れた評論になることを今回も知ることができました。こうした鑑賞者とのやりとりがあるからこそ来年に向けて意欲を高めることが出来るのです。また来年もよろしくお願いいたします。ギャラリーせいほうは商業画廊なのに、よくもまぁ床いっぱいに広がる自分のような作品を扱ってくれるものだと常々思っています。でも来年も開催させてくれるようでギャラリーにも感謝です。
    埃被った書籍の再読
    30年以上前に購入して自宅の書棚に仕舞いこんである書籍は数多くあります。大方美術に関するものばかりで、20代にしては難解な書籍をよくもこんなに沢山買い込んだものだと思っています。途中まで読んで放棄したものも数知れずあります。最近になって再読を始めました。アンドレ・ブルトンも然り、オスヴァルト・シュペングラーもまた然り。今回手に取ったものはヴィクター・パパネックの「生きのびるためのデザイン」(晶文社)です。購入した当時、自分は工業デザイン科希望の受験生だったので、これをバイブルのようにして持ち歩きましたが、結局途中で放棄してしまったのです。ちょうど彫刻科へ転向した矢先だったのかもしれません。今再び鞄に携帯して通勤電車の中で読み始めました。当時とは文面から受ける印象が違うのが意外です。30年経って多少知識も増え、著者が主張する全体像を捉えることが出来るようになったのかなぁと自負しています。たいして長くもない通勤時間帯で読む書籍は、かなり時間もかかりますが、再読することによって理解または受容できることが広がり、20代の当時と50代の現在を比較することも出来ます。電子書籍にはない古書独特の趣きも感じられます。「生きのびるためのデザイン」を過去の遺物としてではなく、現在も息づく論理として、じっくり腰をすえて読み込んでいこうと思っています。
    「問いなき回答」を読んで
    読書は通勤時間帯でしか出来ず、しかも短い乗車時間の中で細切れになった評論をとつおいつ読んでいる有様です。もっと楽に読める本を携帯すればよいものを、敢て難解な評論集に手を出してしまうのは何故なのか自分でも理解できないのです。今読みたいものを読むとしか言いようのない気分です。やっと読み終えた「問いなき回答」(建畠哲著 五柳書院)はオブジェを通じ現代美術の側面を論じたもので、繰り返し読み込まないと理解に苦しむ箇所が多々ありました。それでも最後に付章として掲載されていたインタビューの一文に希望と勇気を頂きました。「アートって、人をいらいらさせる部分ってあると思うけど、最終的には、われわれの心を救ってくれるものだと思うんです。もしそういうふうな力につながらないんだったら、ぼくはアートっていらないと思う。ただ不安に陥れ、恐怖に陥れ、不愉快な思いにさせるだけなら。表面的にはそうであっても、最終的にはわれわれを救済してくれるもの。どんな反社会的な、悲惨な行動をしても、志の高潔さはすぐれたアーティストにはある。~略~」このインタビューがあって良かったと思える読後感でした。