2009.09.16 Wednesday
彫刻家流政之を知ったのは高校生の時でした。書店で立ち読みした美術手帳に彫刻写真が掲載されていて、若かった自分はカッコいいなぁと思ったように記憶しています。美大の彫刻科に入って彫刻を本格的にやり始めた頃、西武美術館で「流政之展」があって、自分が大学で学んでいるものと表現の土台が違うように感じて、それこそ表面を舐めるように見ていました。スパっと切ったような石彫は思い切りが良くて、石でこんなふうに作れたら気持ちいいだろうなぁと思えました。アートの世界では、ナガレ作品はいずれもカーヴィングという古く普遍的な概念を持っていて、自分も当時モデリングに拘っていたので、当時流行の現代美術よりずっと好きになっていました。その作品論集を書店で見つけて、読むことにしました。ずい分前にイサム・ノグチ庭園美術館を訪ねて、香川県の庵治まで出かけた時に、もう少し足を伸ばしてナガレスタジオを見ておくべきだったと思いました。面識の無い自分に会ってくれないにしても、外側からだけでもレンガ作りのスタジオを見ておけば、何かインスピレーションが湧いたかもしれないと思ったのです。そんなことをあれこれ思いながら、写真版の多い論文集を読み終えました。
2009.09.15 Tuesday
今晩のNHKプロフェッショナルでは、漫画家井上雄彦の仕事を取り上げていました。自分はあまり漫画を読む方ではないのですが、唯一「バガボンド」や「リアル」を愛読しています。作者の仕事に対する熱情や真摯な姿勢が創作に表れているからこそドラマに惹き込まれ、さらに展開されるキャラクターの心理描写に同感してしまうのでしょう。とくに注目したのは闇を描くというテーマです。自分の内面を掘り下げ、素の自分自身と対面して、人間の持つ弱さを抉り出し、それによって照らし出される光の部分をも表現するという意図に、漫画という媒体を使った文学にも劣らぬ世界観を発見しました。絵がある以上、人の表情や動きにそうしたものを語らせなければならず、卓越した描写力に加え、作者自身の心の動きが投影されてしまう世界に凄みを感じてしまいました。漫画はサブカルチャーと言われているものの今や重要なポジションを与えられている分野です。仕事場で苦しむ作者を見ていて、仕事は違えど自分にも共通した部分を見て取って、ここにも共感を覚えたひと時でした。
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2009.09.14 Monday
スポーツではオリンピックやワールドカップ等で心が高揚し、選手の輝く一瞬を感じ取って、自分も爽やかな気分になります。でも今日ほどの気分は今までにありません。米メジャーリーグでイチローが打ち立てた9年連続200本安打という途方も無い記録に感動を覚えたからです。自分は一生続けていくであろう創作活動でも一気呵成はなく、常日頃からコツコツ制作に励むことを信条にしてやってきました。一歩一歩が自分にとって大切なのです。休まず焦らず力まず、そして楽しみながら…これはその活動が本当に好きでなければできないことです。身体的にも精神的にも長く続けていくには紆余曲折があります。気力が萎えてしまうことがあるかもしれません。持続する力はどこから芽生えてくるのでしょうか。自分はいくつになっても不惑の歳がやってきませんが、諦めないで続けることの素晴らしさを、今日イチローが教えてくれたことは確かです。勇気をもらいました。
2009.09.13 Sunday
倉庫の片づけが一段落し、ついにと言うべきか、ようやくと言うべきか、新作に取りかかることになりました。前のブログに書いた陶彫の瓦礫の山から突き出ている数本の柱。まず、杉材の柱を購入してきました。節や裂け目の多い間伐材です。「構築〜起源〜」で使った柱より、やや太いものを選び、長さを1500mmにしたので、がっしりした印象です。先端はかなり細くする予定です。題名を「構築〜瓦礫〜A」にしました。AがあるのだからBもあるのかと問われれば、その通りBもあります。構想の上ではAB一対になるのがいいのですが、表現の上からは「構築〜包囲〜」と「構築〜瓦礫〜A」が対応し、「構築〜解放〜」と「構築〜瓦礫〜B」が同じように対応する形態になります。来年の「構築シリーズ」では「包囲」と「瓦礫A」を発表し、再来年の「構築シリーズ・2」では「解放」と「瓦礫B」を発表するつもりでいます。ともかく例年よりかなり遅く新作のスタートを切りました。また適度に緊張が続く毎日になります。
2009.09.12 Saturday
自分の作品をずっと撮りつづけている2人のカメラマンが自宅に来ました。完成した倉庫を見せた後、いつものように楽しい会話になりました。彼らは今年の個展に出品した「構築〜起源〜」「発掘〜赤壁〜」の写真ファイルを届けに来てくれたのです。いつも写真をアレンジしてファイルにしていて、これは図録とは別の世界が広がっています。写真の持つ独特な陰影の世界が自分にとっては大変刺激的で、いつもながら写真の魔術に魅了されてしまいます。彫刻ではありえない自由な発想・構成があって、作品がデザイン化していく過程を見ることになると言っても過言ではありません。素材と格闘している自分には、ふいをつかれるような気分です。その演出の楽しさがいいのです。写真の持つ遊戯性と言うべきか、遊び心いっぱいの作品写真をもっと見たいと思ったひと時でした。
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