2006.11.15 Wednesday
まるでロシアのリアリズム絵画を見ているような舞台。群集の合唱に圧倒され、クレムリン宮殿の豪華な広間の隅々にもリアルを追求した大道具や小道具が置かれ、まさにロシアの歴史に遭遇しているような錯覚に陥ります。オペラ「ボリス.ゴドノフ」は長いオペラにも関わらず、民謡風な力強い旋律があったり、皇帝ボリスの心理描写があったりして、飽きることがありませんでした。スケールの大きなドラマをよくぞオペラにまとめたものだと思いました。まさに暗い色彩にあふれた写実の世界。この独特なオペラが大好きになって、それから何回もウィーン国立歌劇場の立ち見に通いました。立って見てるのはなかなかつらい長丁場でしたが、歴史のスペクタクルに引き込まれて思わず我を忘れて観ていました。
2006.11.14 Tuesday
有名な曲が散りばめられた「カルメン」はオペラ入門としては最高のものだと思います。胸躍るシーンがあると思えば、切ない叙情的なシーンや怪しい人々の楽しく痛快なシーンもあって娯楽に徹した優れたオペラです。いつ観てもあっという間に劇が終わってしまいます。スペインの風土、人々の気性まで表現できています。ビゼーはフランス人なのでフランスオペラであることに変わりなく、それでもスペインを感じさせる雰囲気が凄いところです。自分は劇中で歌われる「ハバネラ」が大好きです。
2006.11.13 Monday
ウィーンで初めて観たオペラはR.シュトラウスの「エレクトラ」でした。下調べもせず、音楽留学生から立ち見席のことを聞いて、まず飛び込んだ劇場でやっていた演目が「エレクトラ」。真っ暗な舞台。登場人物も少なく、内容もよくわからず、旋律もおよそメロデイのつかめない短いオペラ。ただオケの響きはもの凄くドラマチックな要素だけは感じ取ることはできました。これはつらいと思ったので、しばらくオペラから遠のいてしまいました。次に人に誘われて出かけたのがベルデイやプッチーニのオペラでした。これは楽しくて、オペラとはこんなにいいものかと思い直しました。そんなことでオペラに慣れ親しんだ時に、再び「エレクトラ」を観たら今度は不思議な感動を覚えました。音響が新鮮でした。不協和音の何とも言えない心理を表した響き。やっと理解できる感覚を持ったのかなと思いつつ、初めてオペラを観た頃のことを思い出していました。
2006.11.12 Sunday
音楽評論を読むとこの「魔笛」の筋書きには、当時モーツアルトが関わった秘密結社なる存在もあるのですが、そんなことを気にせずに観た「魔笛」は音楽や舞台装置、衣裳のデザインがとても楽しく、おそらく5年間のウィーン滞在生活のうち最も多く観たオペラだと思います。スターツオパー(国立歌劇場)の他にフォルクスオパーという歌劇場があって、「魔笛」は両方の演目に入っていました。出演者も演出も違っていたので観比べて楽しむことができました。パパゲーノの軽やかな姿や夜の女王のアリアが魅力的でした。いろいろ解釈が成り立つ内容ですが、ファンタジーのようでいて哲学的でもあり、娯楽と教義が音楽によって不思議な関係を保っているように感じていました。旋律の弾むようなコロコロとした心地よさ?にモーツアルトの凄さを体感していました。
2006.11.11 Saturday
心理学でいう社会的促進で、時々誰かと一緒に場所を共有して制作するのは活性化していいものです。カフェや図書館で勉強すると集中力が上がる現象と同じです。周囲に人がいた方が、一人で何かをするより効率よく仕事ができるのです。自分の作業しているところにも時々ゲストがやってきます。毎週来ているのは美大で空間デザインを専攻している学生です。また時々姿をあらわす学生は情報デザインというIT関連の新しい分野を専攻しています。彼女たちはそれぞれ課題を携えてやってきます。流行の服をまとい、携帯をいじったり、イヤホンで音楽を聴きながら作業しているのですが、今も昔も変わらないのはテーマに対して苦しむ姿です。私自身も経験しているからこそ理解できる不可解な悩み。自分が何なのかまだ見つからない時期。彼女たちを見ていると私自身も当時に戻るようなちょっぴりシンドい気持ちにもなります。自分の制作の原点がこの時代から始まっていると言えます。自分を大切にしたいからこそ己を知って悩む貴重な時間です。頑張れ、美大生。