2019.11.06 Wednesday
一日1点ずつポストカード大の平面作品を作っていくRECORD。文字通り日々のRECORD(記録)で、その日のさまざまなことが記録されていきますが、時間がない中で制作をしているため、その効率を考えて5日間で絵柄が展開するようにしています。そうであるため通常の日記とは違い、内容がその日の気分に左右されることがありません。只管日常から離れてイメージに遊ぶのです。今月のテーマを「拡散の風景」にしました。現在のICT社会では、ネットによって個人情報が拡散していく恐れが常につき纏います。そんな悲惨な状況を描きたいと思ったのが最初の動機ですが、「拡散の風景」には私の個人的な別の動機もあります。私が20年以上も前に辿り着いた彫刻表現は、エーゲ海沿岸に残存する遺跡を礎に、古代出土品のような陶彫を組み合わせて表現するものでした。言わば集合彫刻だったわけで、都市構造は単体では表現できないと思ったのでした。それ以来、私はずっと集合彫刻をやってきました。陶彫部品をボルトナットで連結して、それによって大きな塊を構築してきました。現在の新作も集合彫刻です。最近、私は相反する要素もまた空間を解釈したり、演出する方法としてあるのではないかと思い始めていて、それなら集合の相反する要素として拡散も考えてみようと思っているのです。拡散彫刻、これは陶彫部品をバラバラにして空間に配置するもので、旧作では「構築~瓦礫~」と「構築~楼閣~」がそれに当たります。これをもっと大きなスケールでやってみたいと思っているのです。そのためのアイデアを今月のRECORDでやってみようとしています。明快なイメージはRECORD制作を容易にしてくれます。このところ調子の良いRECORDを楽しみながら継続していきたいと思っています。
2019.11.05 Tuesday
昨日、横浜市都筑区鴨居にあるエンターティメント系の映画館にアメリカ映画「ジョーカー」を観に行きました。ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞という話題もありましたが、何よりも衝撃的だったのは、アメリカ本国から伝えられた映画館周辺で警察が待機したというニュースでした。映画に共感した観客が犯罪に走るのではないかという不安は、映画を観ていて成程と思いました。舞台はゴッサム・シティという架空都市で、そこでは街が腐臭を放ち、貧富の差は拡大し、困窮者が暴力に手を染めていました。世界にそんな街が存在することは想像に難くないと思いました。主人公の道化師アーサー・フレック(ジョーカー)は、緊張すると笑いの発作が出る脳損傷があり、それでもコメディアンになる夢を捨てきれず、ピエロ派遣会社で仕事をしながら、その機会を狙っていました。同居の母親は心臓と精神を病んでいて、その介護もアーサーがやっていました。そこに出生に関わるさまざまな悲劇がアーサーを襲い、自分が養子であること、母の交際相手に虐待されて脳に損傷を負ってしまったこと等、動揺を抑えられない彼は入院中の母を窒息死させてしまいました。道化師の扮装のまま地下鉄に乗った彼は、さらに高慢な3人のビジネスマンに対して銃を発砲したのでした。街では富裕層を責めるデモが、3人を殺したピエロを英雄視して、一触即発の事態になっていました。いよいよアーサーがジョーカーになる動機や環境が整い、混乱した街の中で究極の愉快犯とも言うべき悪役が誕生したのでした。この映画の魅力は主役を演じたホアキン・フェニックスで、法を遵守する心優しい男が度々馬鹿を見て、その累加の上に法外の存在になっていく過程を見事に演じていたのではないかと思いました。監督のトッド・フィリップスの言葉に「この映画には、何もかも剥き出しにすることを恐れず、役柄に肉体と魂を捧げられる俳優が必要でした。」とあります。まさに主人公の身辺に起こる事柄がリアルと感じてしまうのは、俳優が役柄に真摯に向き合う力だと思います。映画には、近い将来バッドマンになるブルース・ウェインが子役で登場し、大富豪で実業家だった父と母がデモ隊のひとりに、ブルースの目の前で殺されてしまう場面がありました。アメリカンコミックの原作を所々辿りながら、荒唐無稽な闇のヒーローがどのようにして登場したのか、まさに勧善懲悪では伝えられない現代の問題を掘り下げていく内容を盛り込んだ映画だったと振り返っています。
2019.11.04 Monday
三連休最終日です。今日は文化の日の振替休日で、今月の三連休は今回だけです。因みに勤労感謝の日は土曜日に当たってしまうので、今年は三連休になりません。今日はまず朝8時から工房に篭りました。根の陶彫部品の3点目の成形を行い、昨日作った1点目の陶彫部品に彫り込み加飾を施しました。なかなか厳しいスケジュールでしたが、その分朝から集中して作業をやっていました。午後になって、第1ステーションの1点目の陶彫部品に、ブロックサンダーをかけて表面を整えて化粧掛けを行ないました。これは窯入れの準備です。新作の窯入れは今回が最初になります。新作の焼成第一歩はいつもながら緊張します。毎年同じ工程で、同じ素材を使っているのに毎回カタチが異なるので、上手くいくかどうか心配になるのです。窯入れをすると、明日から毎朝出勤前に工房に立ち寄って、焼成温度を確認して仕事に行きます。窯出しは木曜日になります。焼成は週2回やっていますが、今回は新作初の陶彫部品なので、まず1回目の窯入れをやってみて、その焼成具合を見ようと思っています。陶彫にとって、焼成は最終工程で窯出しをして完成となります。焼成ができていないとけじめがつきません。最後は人の手の及ばないところで、作品の良し悪しが決まるのです。今日は窯入れをしたところで工房を後にしました。夕方は家内を誘って映画鑑賞に行きました。常連にしているミニシアターではなく、今日はエンターティメント系の映画館に足を運びました。観た映画はいろいろ話題になっているアメリカ映画「ジョーカー」でした。悪役が主人公の映画とあって、犯罪に共感する人が増えるのではないかと、本国アメリカでは警察が出動する事態があったようですが、内容を観た感じでは犯罪を正当化するものではなく、貧困や格差社会を背景にした架空都市の物語でした。それでも現代に通じるものがあるために、荒唐無稽な演出ではなく、リアルな心理を描き出しているなぁと思いました。映画に関しては詳しい感想を後日改めて載せたいと思います。三連休は陶彫制作と映画鑑賞もあって充実していました。幸先の良い11月が始まったなぁと思っています。
2019.11.03 Sunday
三連休の中日です。今日は文化の日で明日が振替休日になります。今日は朝から工房に篭りました。新作の陶彫作品は次の段階に入りました。新作は屏風と屏風前の床の部分に陶彫部品を連結して設置する集合彫刻になります。床に設置する第1・第2ステーションは、既に成形と彫り込み加飾が終わって乾燥を待っている最中ですが、今日から第1・第2ステーションと屏風に接合する陶彫部品を繋ぐ新たな陶彫部品を作るのです。それを私は「根の陶彫部品」と呼んでいて、蒲鉾型の陶彫部品を複数作って次々と繋いでいくのです。根が這っていくような状態になるので、こうした呼び方をしています。根の陶彫部品を作り始めたのは、2009年の個展で発表した「発掘~赤壁~」からで、赤い壁状の直方体の上に乗せた陶彫が最初ではないかと記憶しています。それを応用した小さな照明器具も作りました。その後に作った「発掘~増殖~」は根の陶彫部品だけで構成した作品でした。根の陶彫部品を利用した作品を調べてみると、2013年制作の「発掘~地殻~」「発掘~連築~」、2014年制作の「発掘~層塔~」「発掘~増殖~」、2015年制作の「発掘~群塔~」、2018年制作の「発掘~根景~」、2019年制作の「発掘~双景~」で、私の集合彫刻の特徴になっていると言ってもよいと思います。陶土を一定の厚さにして蒲鉾型にするのは工夫が必要で、陶彫は内部ががらんどうになっていないと焼成が巧くいきません。そこで塑造板に切込みを入れていて、ある程度成形が出来上がってきたら、切込みを抜いて底に穴を開けます。内側から手を入れて、蒲鉾型の曲面を調整しているのです。内側から陶土を手で押さえつけ、外側から叩き板で叩いて陶土の強度も図っています。そんなことを試行しながら根の陶彫部品を作っています。今日は2点の陶彫部品の成形を行ないました。夕方自宅に戻って、RECORD制作の後、夜になって再度工房に出かけ、明日のためにタタラを数枚準備しました。今日は朝から晩まで陶彫制作に没頭しました。本当の意味で文化の日を体験しているなぁと思いました。明日も継続です。
2019.11.02 Saturday
今日から文化の日を含む三連休が始まりました。この時期は学校に限らず地域でも文化祭が盛んに行なわれていて、私が勤務する職場の地域でも文化祭があります。私は開会のセレモニーに呼ばれていて、午前中はそこで挨拶をしてきました。今月も休みになると用事がいろいろあって、週末全てを創作活動に充てられないことが少々残念です。今日は午後になって工房にやってきました。新作は屏風と床置きの連結した集合彫刻になる予定で、三連休は連結する陶彫部品を作り始める計画でいます。屏風に接合する陶彫部品、床に置く陶彫部品、それと屏風と床を繋ぐ陶彫部品のうち、まだ手をつけていない箇所は、屏風と床を繋ぐ蒲鉾型の陶彫部品です。根が這い出していくようなイメージなので、根の陶彫部品と称していますが、これは私の陶彫作品の大きな特徴でもあります。先月、栃木県益子町から届いた陶土に今日から手をつけました。土錬機を回し、陶土を混ぜ合わせ、そのうち数枚のタタラを準備しました。タタラは掌で叩いて座布団大に引き伸ばします。それをビニールで覆って、明日から始める成形に使うのです。成形はタタラと紐作りの併用です。午後の制作が始まると、漸く週末の定番の風景とも言うべき創作活動が自分の中に戻ってきます。今日はウィークディの疲労が残っていたためか、なかなか集中できずにいましたが、気持ちは楽しくなって、創作活動に充てられる貴重な時間を過ごしていました。思えば学生時代は時間が沢山ありました。贅沢な時間を贅沢とも思えず過ごしてきましたが、その頃は自己表現が定まらず、また将来に対する不安に苛まされていたので、贅沢な時間とは認識できなかったように思えます。先日出かけた美大の芸祭でも若い学生たちは、皆んな不安を抱えて制作をしているのだろうと察しました。自己表現が定まり、技法を獲得した今でも私には迷いや不安があります。学生時代とどこが違っているのか、私はどれだけ成長したのか、分からなくなることもあります。社会人としての仕事に就き、多忙になったことは結構なことだと思いますが、それを言い訳に自己表現が上滑りしているのではないか、何も考えずに効率ばかりを気にしている時に、私は魂の抜け殻のような作品を作ってしまうのではないかと思いを巡らすことも多々あります。そんなことを気にしながら、夕方まで工房にいました。にわかファンになったラグビー・ワールドカップの決勝戦が始まるまでに工房から自宅に戻って来ました。