2017.12.07 Thursday
シュトレンはドイツ語で「坑道」という意味です。文字通りトンネル状をした菓子パンを指しますが、自分が滞欧生活を切り上げてきた30年前は、日本でのシュトレンの知名度はありませんでした。ドイツ語圏の国々ではクリスマスの時期になるとシュトレンを売り出すベーカリーが増えて、この季節の保存食として楽しんでいました。シュトレンはドイツのドレスデン発祥と言われていますが、1329年ナウムブルグの司祭へのクリスマスの贈り物が最古の記録としてあるようです。川崎市多摩区中野島にある洋菓子店「マリアツェル」で、シュトレンをまとめて購入するのが、我が家の恒例行事になっていて、今年も多量に頂いてきました。「マリアツェル」の経営者であるパティシエは、私と同じ頃オーストリアのウィーンにいて、私たちはよく遊んでいました。彼は菓子修行、私は美術学校の学生として、気のおけない友達になり、30年経った今でもあの頃を懐かしむ交流を続けているのです。彼が作るオーストリア菓子やシュトレンはヨーロッパに出回るものと比べても遜色はありません。寧ろ日本人に合った趣向を凝らせているので、シュトレンの美味しさは抜群です。ドライフルーツ等の材料を海外から仕入れていて、彼にメールしたらフランスのアルザスから帰国したばかりという返事が返ってきました。職場でも「マリアツェル」のシュトレンを味わってもらおうと思っています。
2017.12.06 Wednesday
今日は大袈裟な表題をつけましたが、現在読んでいる「オブジェを持った無産者」(赤瀬川原平著 河出書房新社)の「Ⅱ」に登場するもので、当時若かった故赤瀬川原平が、芸術家から見た社会情勢を先鋒鋭く説いた文章を包括するテーマが「芸術表現と国家について」ではないかと思います。本書の「Ⅰ」は、主に1967年に千円札を作品化したことで裁判になった「通貨及証券模造取締法違反被告事件」の実際の意見陳述書やそれに伴う随想が収められていて、当時の芸術表現を巡る検察庁とのやり取りが詳細に語られていました。「Ⅱ」は裁判以前からその後に至る文章を集めたもので、古いものでは「あいまいな海」(1963年)が掲載されていました。赤瀬川原平若干26歳の時の文章です。この時代は前衛美術家集団ハイレッドセンターを結成した頃で、社会通念に囚われない表現を求めて、彼は廃品を素材にした作品を作っていました。文章は表題のような芸術表現と国家について論じたものがあれば、詩的なものもあって、文章そのものもシュルレアリスム的な雰囲気を持っています。表題の趣旨を述べた部分を取り上げます。「『有名』の蓄積による歴史は、すでに現象の確定であることを優位として、不確定の昂揚する現在を平定させる法の規範となっている。そして現在にある無数の偏見の中に法として割りこんでくるその歴史は、ひとつの偏見であることをのり超えて、犯しがたい真理となっている。要するに残された正統の歴史というのは、正統の権力の体系なのである。~略~好奇心というものは、その動作がそれ自体自由であってこそ、そして何物も顧みない無責任なものであってこそ好奇心であるのであり、責任ある好奇心というのは、プロペラの回転軸を糊づけにされた飛行機のようなものであって、それは好奇心ではありえないのである。」間接的に芸術表現と国家について述べた箇所を引用いたしました。
2017.12.05 Tuesday
今日のプロジェクションマッピング一般公開は、職場としては大きなイベントであった文化的行事の幕開けに上映した映像媒体を、一般向けにアレンジしたものです。神奈川新聞の取材を受けてから、職場の元締めである横浜市全体の組織が11月30日に一般公開を知らせる記者発表を行いました。私は今まで彫刻を学んできたため、映像表現にはかなり疎い人間で、当初プロジェクションマッピングには積極的になれなかったのですが、チームの制作工程に関わっているうちに、プロジェクションマッピングの可能性と広がりを確信するようになりました。この表現を他の職場でもやってくれたらいいなぁと思い、一般公開に踏み切ったのでした。プロジェクションマッピングは凹凸のある壁に投影する媒体で、凹凸の範囲をパソコン内で切り取り、それぞれの切り取った画面に映像やアニメーションを落とし込んでいく方法です。その専用ソフトとプロジェクターがあれば、基本形となる制作が可能です。その際、投影する壁の大きさに見合った光源の強さが重要で、強力なプロジェクターであれば美しい映像が期待できます。今年は職場の公費でプロジェクターを購入しました。映像処理は近隣にある大学の映像メディア研究室の協力を得ました。大学3年生が職場に時折顔を出してくれて調整をやってくれました。今日の一般公開では、夜にも関わらず230名くらいの人が見に来てくれました。その対応のため、ほぼ全員の職員が超過勤務になっても快く残ってくれました。今日はサービス残業で、私は感謝としておにぎりと味噌汁を職員に用意しました。大学教授等来賓の方々にもおにぎりと味噌汁を出しました。また来年に向けてプロジェクションマッピングの制作をスタートします。これを私の職場の文化として定着させていきたいと願っているのです。
2017.12.04 Monday
昨日、横浜のミニシアターにヴェネチア国際映画祭主演男優賞に輝いた映画「笑う故郷」を観に行きました。横浜に来る前に岩波ホールで上映していて、観に行こうかどうか迷った映画でしたが、横浜で観ることが出来て良かったと思いました。「笑う故郷」はノーベル文学賞を受賞した作家の40年ぶりの帰郷を巡って、地元の人々が起こす騒動を描いたもので、国際的文化人と地元に暮らす庶民との感覚的なズレが、徐々に辛辣な状況を作り出すストーリーでした。過去の因縁や憎悪から嫉妬や誤解が生まれていく過程は、リアルさをもって私たち観客に迫ってきました。ヨーロッパ在住の作家はアルゼンチンの小さな町が故郷で、そこで過ごした20歳までの経験を題材に、彼は数々の小説を発表してきました。それが地元にしてみれば故郷の人々を嘲笑する小説と受け取る人もいたようで、名誉市民として帰郷した彼を取り巻く環境は、複雑なものを孕んでいました。作家の元恋人だった女性と結婚した彼の幼馴じみ、作家の審査によって落選された絵画協会幹部の執拗な攻撃、息子の車椅子を有名人に強請る親、小説の登場人物と自分の親との関係を確かめる人など、登場する人々が素朴さと感情の濃さを伴って、面倒な関わりを含めた複雑な人間関係の中にいました。それに耐える作家は次第にイライラが増していったのでした。映画の後半では、作家が故郷を懐かしむ感情はどこかへ吹き飛んでいました。とてもじゃないけど、笑えない故郷とも言うべき「笑う故郷」は、大変インパクトのある内容で、やるせない気分になりました。主演男優賞を受賞した作家役のオスカル・マルティネスは、気難しい作家が翻弄されていく状況を自然に演じ、存在感を示していました。映画に同伴した家内が、これは有名作家の驕りと感想を言っていましたが、それはマルティネスの演技あればこその説得力ではなかったかと思いました。確かに面白い映画であるけれども、感情の機微が揺れ動く人間臭さを表現している秀作なのだろうと思いました。
2017.12.03 Sunday
今日も昨日に続き、朝から陶彫成形に没頭しました。8個目の陶彫成形が終わり、新作で床を這る根は残すところ8個で、ちょうど半分が出来たことになります。今日の夕方は窯入れをしたので、明日から2日間は工房の電気が使えません。3日目も窯内の温度は高いのですが、自然冷却に入っているので電気の復旧は可能です。12月に入っての週末は陶彫にとことん付き合っています。そのためか気持ちは充実しています。日曜日の昼は近隣のスポーツ施設に水中歩行に行く時間帯と決めているので、今日も決めた通りに行ってきました。今日は歩行だけではなく何度か泳いでみました。肩の調子は少しずつ治ってきているように思います。来年になれば今までのように泳げるかなぁと期待しています。家内が昼過ぎに演奏から帰ってきました。今日は夕方早めに作業を切り上げて、家内と映画に行くことにしました。常連になっている横浜のミニシアターに行って、アルゼンチンとスペインの合作映画「笑う故郷」を観て来ました。アカデミー文学賞に輝いた作家が在住しているヨーロッパから故郷のアルゼンチンに40年ぶりに帰る物語で、「笑う故郷」ならず笑えない状況に陥っていくシリアスな映画でした。家内は、これは作家の驕りからくるもので、故郷に錦を飾るなんてことは幻想に他ならないと言っていました。自分が一番心地よい場所にいるのがいいとも呟いていました。私が感じた詳しいことは後日に改めます。ただし、これは面白い映画であることに異論はありません。このところ毎週映画に行っています。来週末も映画に行くことを予定しています。展覧会だけではなく映画も刺激をもらえる媒体なので、創作活動には効果的です。週末は密度の濃い時間を過ごしていると実感しています。