2018.06.05 Tuesday
先日、読み終えた「アートと美学」(米澤有恒著 萌書房)の第五章では「トテゴリー」について考察しています。トテゴリーとは何か、章の扉に「ロゴスの見直し、西欧的文化伝統そのものの見直し、それをトテゴリーと呼ぶ」とありました。何かしっくりいかないので、本書の中を探ってみると、理性の自己検証に入らない感覚的なもの、たとえば神話の世界、神々による「宣り」が、雑駁に捉えればトテゴリーというわけです。トテゴリーの対比としてはカテゴリーがあり、範疇と訳されています。文中より「事物を人間の理解可能な範囲へ持って来ること、すなわち事物を『概念』へ変換すること、これがカテゴリーの役割である。~略~人間は生得的に『感覚する』能力と、『思考する』能力を持っている。思考する能力を《純粋悟性概念》といい、純粋悟性の機能はカテゴリーを介して発揮される。その意味で、カテゴリーは純粋悟性の『概念』なのである。」とありました。カテゴリーの説明によって、対比概念であるトテゴリーの意味が浮かび上がってきます。そうした論理の展開の中で、本書では現代芸術におけるトテゴリーを語っている部分があります。この引用を持って、本章のまとめにしたいと思っています。「思えば、ダダイストのデュシャンが『芸術は制度』にすぎぬことを発き、しかもこの『発き』の企てそのものを『芸術作品』に仕立てようとして以来、芸術は一方で建設的であり、また一方では破壊的であった。建設と破壊、それが芸術が『自己立法』の名の下にするトテゴリーであった。芸術のトテゴリー、一面で反省と実験である。しかし、それは『芸術』に与えられた制度的特権をもって、とことん自分を揶揄し曝しものにすることでもあった。自分を『茶にする』、『自分でおどけてみせる』ことまで、芸術のトテゴリーの課題にしたのである。哲学のトテゴリーには、思いも及ばぬ所である。」
2018.06.04 Monday
昨日、図録用の撮影が終わり、分解された陶彫部品があちらこちらに置かれた工房の室内は、さながら儚き夢の跡のような塩梅で、この夥しい数の陶彫部品を、7月の個展搬入のために、それぞれ梱包していくのが今月の目標になりそうです。創作活動とは異なり、梱包の作業は退屈です。しかし、これは重要な作業であることも確かです。彫刻作品は収納に幅を取り、大変厄介な代物ですが、きちんと保存管理をしておかないと作品は徐々に失われていきます。私は陶彫部品を複数入れられる木箱を自分で作っています。木箱には作品名と陶彫部品の番号を書き込んでいます。同じ木箱が倉庫に山のように積まれているため、その整理もしなくてはなりません。新作をどこに置くか、軽いものならロフトに上げますが、陶彫部品の木箱は重量があるため、1階倉庫を使うことになるでしょう。最近は木箱が増えてきて収納が厳しくなってきました。個展も今回で13回目になるので、作品の保存管理を今後どうしようか思案中です。私の場合、工房を作業部分と倉庫部分に分けていて、収納だけのために倉庫を借りている同業者に比べると幸運と言えます。そんな環境で制作できる幸せを噛み締めながら、それでも倉庫部分の拡張を今後考えていく必要がありそうです。今月は美術館や映画館にも積極的に出かけ、鑑賞を充実させたいと思っています。今月も週末全てを使えない状況ですが、鑑賞や読書を楽しみつつ、作品梱包を進めていきます。RECORDは僅かばかりの遅れがあって、今のうちに遅れを取り戻そうと考えています。今月はRECORDが唯一の創作活動になります。この小さな平面世界を大切にしていきたいと思っています。
2018.06.03 Sunday
いよいよ新作の撮影日がやってきました。私は朝7時に工房に出かけ、昨日準備しておいた作品を構成するそれぞれの部品を点検しました。私の作品は陶彫部品を組み合わせる集合彫刻です。全体を組み立てるのは、図録用撮影日の今日が最初なのです。緊張と不安が交差する圧迫感に苛まれ、朝から落ち着いていられない精神状態でした。9時半になるとスタッフが続々と工房に来てくれました。自作と言えども自分一人では組み立てられない私の作品は、スタッフがいないとどうにもならない作品なのです。10時にカメラマン2人が到着し、「発掘~根景~」と「発掘~角景~」の部品を野外工房に運びました。まず、「発掘~根景~」の組み立てから始めました。4本の柱にそれぞれ女性スタッフが齧りつき、その上に男性スタッフがテーブルを設置しました。テーブルと柱は補強金具で留めて、陶彫部品をひとつずつ吊り下げる作業に移りました。吊り下げが終わった後、床置きの陶彫部品を設置しました。部品を上部に積んでいって、吊り下げた部品の内部に床置き部品の上部が入るようにしました。最後に床を伸びていく根にあたる陶彫部品を設置して、「発掘~根景~」は出来上がりました。これに比べると「発掘~角景~」は簡単に組み立てが終わりました。野外工房での撮影は、スタッフが作品設置している姿を撮ったものや、それぞれの全体像や部分の接写もあり、昼過ぎまでやっていました。今日は真夏を思わせる炎天下で、野外での作品の陰影がハッキリ出ていました。新緑も美しく、眩い光が溢れていました。私はスタッフの熱中症を心配しました。昼食は毎年やっているピザ店からのデリバリーで、飲み物や菓子は昨夜用意したものでした。工房には小さな冷蔵庫があるので、水分は冷やしていました。午後は野外設置した作品を、一旦分解し、工房内に持ち込んで、再び組み立てる作業がありました。室内でカメラマンは照明を使うので、作品の印象が変わります。スタッフも私も疲れが多少出ていましたが、よく頑張ったなぁと思いました。何とか夕方4時までに撮影も終了し、安堵感が広がりました。ずっと私を圧迫していた緊張の糸が緩み、一気に疲労感に襲われました。ひとまず撮影は成功、自作がイメージ通りだったことに私は満足を覚えました。よくやってくれたスタッフの皆さんに感謝申し上げます。最後は皆さんの力によって私の作品は完成できたと思っています。本当に有難うございました。
2018.06.02 Saturday
6月最初の週末を迎えました。明日を図録用撮影日にしているため、今日はその準備に奔走しました。毎回のことでどんなに準備万端と思っていても小さなミスはあるものです。早速陶彫作品の組み立てに使う金具の寸法が違っていて、その僅かなことで日用品店に出かけました。まだ何か不測の事態が起きることも想定して、今日は一日中落ち着かない気持ちでいました。「発掘~根景~」の柱に陶板を貼り付ける作業がまだ残っていて、かなりの時間を費やしました。柱陶は大変な重量になり、作業台から壁に移動するにも一人で奮闘していました。時計を確認すると夜9時を回っていました。今日の頑張りがきっと明日に幸運を齎すと私は信じていて、撮影日の前日は例年早朝から夜遅い時間まで、工房に篭っていることがあります。今年も例外ではなく、長い時間をあれこれ気を回しながら、細かな箇所を点検していました。創作作品の産みの苦しさと言うべきか、今までやってきたことが全て結果として、明日で試されるのです。私の作品は個展搬入がゴールではなく、図録用撮影がある明日がゴールなのです。組み立ててみて初めて気づくこともあります。明日の組み立てがイメージ通りになることを祈りつつ、万が一明日の組み立てが不可能となった時は、図録や案内状の印刷が間に合わないことにもなりかねません。完成までの綱渡りは今日が最後です。そんなことを考え出すと、工房を離れられず、今なら不足するものがあっても、まだ間に合うと思ってしまいます。身体が動かなくなって、やっと自宅に戻りました。明日も早朝に工房に出かけていって、再度確認をしたいと思います。
2018.06.01 Friday
6月になりました。昨日まで関西に行っていた関係で、5月のまとめが出来ていません。まず、先月を振り返ってみることから書き始めます。5月は陶彫制作に精一杯取り組んでいました。5月は連休があり、制作日が多く取れたことが幸いして、「発掘~根景~」の柱陶制作から始まり、同作品のテーブル部分の塗装、「発掘~角景~」の柱の木彫、テーブル部分の刳り貫き作業と砂マチエール、「陶紋」4点の制作、印章の準備など、数え上げればかなり多くの作業をやっていたことになります。ウィークディの夜も頻繁に工房に通いました。陶彫部品は全て完成して、あとは組み立てるだけになっています。図録用の撮影が済むまでは心配の種はつきませんが、1ヶ月の創作活動とすれば疲れた身体に鞭を打って頑張れたように思っています。精神がフロー状態になることを度々経験しました。昼間の仕事も、休日出勤があったり、野外イベントがあったり、関西へ2泊3日の出張があったりして多忙でした。美術鑑賞では「ジョルジュ・ブラック展」(パナソニック汐留ミュージアム)、「プラド美術館展」(国立西洋美術館)、「エリオット・アーウィット展」(何必館・京都現代美術館)の3つ、映画鑑賞では「北斎」、「馬を放つ」(どちらもシネマジャック&ベティ)の2本、その他に京都の松尾大社の庭園や東寺の仏像を鑑賞してきました。 5月は鑑賞もよく出かけていたと自負しています。夜の工房に通っていた影響で、RECORDが多少滞っていますが、まだ下書きの山積みはそれほどでもないので、すぐ挽回できると思っています。鞄に携帯していたアートと美学に関する書籍は読み終わりました。京都へ行く新幹線の中で最後の章を読んでいました。まとめは来月早々NOTE(ブログ)にアップいたします。さて、6月ですが、図録用撮影が頭から離れず、先々のことが考えられない状態です。6月3日が過ぎれば、その先のことが計画できるだろうと思っています。6月の目標を立てるのは3日以降にします。