2016.07.11 Monday
「人間モーセと一神教」(フロイト著 吉田正己訳 日本教文社)終結部には、さらに「総括と反復」という最終部分がつけ加えられています。言わばこれは継ぎ接ぎだらけの論文で、時期的に発表を控えてみたり、条件が整って発表してみたりして、フロイトの遺言にしてはきちんと収まらなかった論文であったと言えそうです。それもそのはず、モーセをエジプト人と断定し、モーセがユダヤ教ばかりではなくユダヤ民族をも作ったとしているから、周囲の反発は想像に難くありません。つまり、もともとユダヤ民族なんていなかった、一人の人間が創作した抱き合わせの民族がユダヤ人だとフロイトは言ってしまったのです。そのためユダヤと決めた人々に優越感をもたせるため選民意識を植えつける必要があり、一部エジプトで行われていた割礼の儀式を持ち込んだわけで、簡単に言ってしまえばモーセは遺伝子操作をしたことになります。これは妄想が過ぎるという批判は当然あったでしょう。さらにフロイト流精神分析学の中で重要な位置を占めるエディプス・コンプレックスを当てはめると、息子(民族)による原父殺し(モーセ)があったと結論付けをしています。モーセが自民族によって殺されたという記録はどこにもありませんが、フロイトの理論ではそういうことにしておかないと論理が通らないことになってしまうのです。これは眉唾モノか、論理の飛躍か、物議を醸すことになることは承知の上で、フロイトは自論を発表していたようです。私は日本人なので当事者意識がなく、この唐突にやってきた理論に「へぇ?」と反応するしかありません。折しもナチスドイツによるホロコーストがあった時代です。ユダヤ人は何故徹底的な嫌悪対象になったのか、そこにフロイトにこの論文を書かせた本当の理由があったのかもしれません。
2016.07.10 Sunday
梱包作業4日目となり、焼成中や焼成待ちの作品以外は全て梱包が出来ました。組み立てに使うボルトナット等も準備しました。今年も何とか搬入が出来そうです。今日は朝から日差しが強く、真夏の気温になり、工房内は茹だるような暑さでした。中国籍の若いスタッフが来て、細かい平面作品を作っていましたが、今回も熱中症が心配でした。昼食は近隣のファミリーレストランに涼みに出かけました。夕方まで作業を予定していましたが、暑さのため少し早めに切り上げました。若いスタッフは私のことを心配してくれていました。確かに私はここ数日で相当疲れてしまったらしく、自宅に帰ると倒れたまま起き上がれなくなってしまいました。胃腸の具合も悪くなりました。それでも昨晩と今晩は職場の地域行事に出かけました。毎年個展の前はこんな感じだったように思います。図録が完成したので、明日職場で配ろうと思います。出張先で個展案内状を受け取ったと声をかけられたこともありました。ここまできて漸く自分の気持ちが緩んできたように感じています。もちろん個展が終わるまで気は許せませんが、事前準備の段階で、ある程度完成度が判明してしまうのが美術作品です。そこが演奏家と異なるところで、ステージに上がるまでどうなるかわからないという緊張感はありません。来週の搬入日までは焼成が続くので、窯内の炎神にお願いするしか方法がありませんが、窯の管理はしっかりやっていきたいと思っています。
2016.07.09 Saturday
先週末の続きです。今日と明日が搬入前の週末になるので、梱包作業に精を出しました。ただし、今日はとんだトラブルに見舞われました。一昨日窯入れをしましたが、どうやらどこかの時点でブレーカーが落ちたらしく、焼成の最高温度1230度に到達していないことが判明しました。再度やり直して事なきを得ましたが、昨日窯の温度管理を怠ったことが原因です。窯を過信してはいけないと思いました。私の陶彫作品は釉薬をかけないので、二度焼きしても問題はありませんが、前にNOTE(ブログ)に書いているように来週の搬入日に間に合うように制作工程を設定してあり、一日でも遅れが生じると万事休すになる恐れがあります。今回のブレーカートラブルの場合は遅れても一日なので、搬入できなければその部品だけ初日に持っていけばいいという話です。現在焼成している部品は組み立てにかかる手間はありません。その場に置けばいいというもので、敢えてそんな部品を最後にもってきているのです。そんなことを考えたら、やはり陶彫はコワいと思いました。今朝二度目の窯入れしたので、今日の工房は照明等電気が一切使えず、暗い室内で梱包用の木箱を作りました。木箱は30個全て完成し、準備は着々と進んでいます。今日は若いスタッフが一人も来なかった日で、こんなブレーカートラブルがあって、自分一人でよかったと思いました。暗い室内で音楽もかけずに修行のような作業をしていては、若い子なら一層気持ちが暗くなるかもしれず、手伝ってもらうのに最悪な状態になっていたと思います。明日は電気が使えます。明日は最終チェックをしながら梱包をしたいと思っています。
2016.07.08 Friday
今月のRECORDのテーマを「はばたく」に決めました。RECORDとは、一日1点ずつポストカード大の平面作品を作っていく総称です。ホームページにもアップしていて、2007年当初からのアーカイブを見ることができます。今年の年間テーマはひらがな4文字にしていて、毎月ごとにその時の気持にあったテーマを考えています。今月は翼をイメージしました。空を羽ばたくイメージは前にも描いた記憶があります。2013年の4月に「飛翔」というテーマでRECORDを作っていました。似た絵柄になるかもしれませんが、10年近くRECORDをやっているので、これは仕方ないことかもしれません。ただし、今回の「はばたく」には個展の準備から解放されたいという思いが篭っていて、「飛翔」を作っていた頃とは、大分気持ちが違うと考えています。塵も積もれば何とやらで、次第に存在が増していくRECORDですが、毎晩仕事から帰ってから、傍らで音楽を流しながら食卓で小さな画面に向き合っています。時に飼い猫のトラ吉に邪魔されながら、また睡魔に襲われながら、その日のイメージをまとめているのです。ひとつのイメージを5日間で展開できるようにしたのは、我ながら良かったと思っています。毎晩新たな挑戦をしていたら苦しさに耐えられなくなっていたところでした。5日で展開する方法は初日のイメージを打ち立てる時がなかなか苦しいのですが、その後の4日間はそのイメージの継続と展開なので、時間の短縮にもなります。市公務員管理職との二束の草鞋生活を続けているうちは、この方法でいこうと思っています。今月も頑張ります。
2016.07.07 Thursday
「人間モーセと一神教」(フロイト著 吉田正己訳 日本教文社)終結部の「E難点」のまとめを行います。まずこの論考を継続するにあたって、フロイトは2つの難点を上げています。「ことによると以上に述べたところで、神経症的事実と宗教的秘密とのあいだの類似を探りあてて、それによって宗教的秘密の、予想すらしていなかった起源を指摘することに成功したかもしれない。このように個人心理学から集団心理学に移行するさいには、この両者が性質や価値をことにするということから二つの難点があきらかになる。~略~第一の難点は、このばあいわれわれが内容豊富な宗教現象学からたった一例だけをとりあげて、ほかの例にはまるきり解明の光を投げかけなかったということである。~略~第二の難点は、原理的性質をおびた新たな問題を投げかけるゆえに、もっと重要なものになる。影響力ある伝説がどのような形で民族の生活のなかに存在しているのかという疑問が起きる。つまり、個人のばあいには生じないような疑問なのである。」ここでフロイトも歴史的実例に戻って、そこから改めて考察していく方法を採ります。ただし、心理学的論拠はさらに重層的に進み、難点に正対していく姿勢を貫いています。最後の文章を引用してまとめにしたいと思います。「伝説はまず抑圧という運命、つまり無意識中の滞留という状態を経過せざるをえないが、やがて、その回帰のさいに強力な作用を展開し、大衆をその魔力のなかに拘束しうるのである。しかもこれこそ、われわれが宗教的伝説に関して驚きの念をもって、また、いまにいたるまで理解できずに、眺めてきたところである。」