Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • プリミティヴ・アートについて
    若い頃、滞欧中にプリミティヴ・アートに関する分厚い書籍を買いました。この書籍はドイツ語で書かれたものですが、現在までドイツ語を解読する気力が起こらず、ただ図版を眺めているだけの資料になっています。そこにピカソやモジリアーニの絵画とアフリカの仮面が掲載されていたので、その箇所は名もなきアートと近代の巨匠の関係性について論じているのではないかと思っています。この書籍は解説が読めなくても図版の豊富さと画像の迫力を見るだけで充分に気持ちが満たされます。西洋美術史では中世からルネサンスに至って写実的な描写方法が確立され、近代になってその様式史として積み上げてきた表現が低迷しました。印象主義は袋小路に陥った旧態依然とした表現を打破するために生まれた運動でしたが、さらにプリミティヴ・アートはその先にある立体派や表現主義を生む契機になったのではないかと思われます。人間の生きる喜びが稚拙とも思われるダイレクトな表現によって示されていて、今でも人の心を掴んで離さない魅力があります。プリミティヴ・アートは近現代美術の作家が発見した美的価値観であり、人が古代から持ち続けている人間としての営みとは何かを考えさせてくれるモノだと認識しています。
    地を這うカタチ
    「発掘~地殻~」は樹木の根が大地を覆う中に、生命体のような都市が息づくイメージを、陶彫と木彫を素材に具現化したものです。都市には興亡があり、歴史の移ろう中で遺跡となって樹木に覆われ、やがて自然に還っていく風景があります。古今東西の芸術家が無人化した建造物を題材にして優れた作品を残していることも知られています。私も「発掘シリーズ」と称して、都市の遺構を発想の礎としてきました。現在、次作として地を這うカタチを作っているところです。これは「発掘~地殻~」の延長上にあり、甲羅のような外皮をもつ都市です。増殖を繰り返し肥大化した都市。外敵からの攻撃侵入を防ぐため壁を廻らせた都市。そんな都市の形態が造形的興味を掻き立てるのです。今作っているカタチは曲面を多用しています。有機的なカタチは生命を感じさせます。都市そのものを生命体として捉えることを試みています。どの程度の大きさでまとめるか、今後の制作状況を見ながら考えていきたいと思います。
    灼熱の夏が到来
    数日前に梅雨明け宣言があり、そこから毎日30度を超える猛暑日が続いています。例年より早い梅雨明けで、いきなり灼熱の夏が到来しています。職場は空調が効いていますが、工房はさぞかし凄い暑さになっていることでしょう。週末が恐ろしくなります。自分の創作活動は春から夏にかけてモチベーションが上がります。とくに夏は制作に弾みがつく季節でもあります。昨年はウィークディの夜も制作に励んでいました。今年も個展が終わった後なら、何とか余裕が出来ると思うので、夜の制作をやっていきたいと思います。工房は夜になっても熱気が籠っています。昼間よりは若干涼しくなるかなぁと思いますが、制作に臨むと決まって汗が噴き出るので、昼間となんら様子は変わりません。灼熱の夏が到来し、自分もこの暑さと上手に付き合っていきたいと思います。
    民俗学と仮面について
    九州の土俗面を考察する書籍を読み始めて、自分が興味を持っている仮面についての書籍を、今まで一度も読んだことがなかったことを思い出し、改めて自分の興味に関する学術的な裏付けが欲しいと思いました。昔から仮面を集めているのに、何故民俗学に気持ちが向かなかったのか我ながら不思議です。自分の母校には民俗学者宮本常一の流れを汲む相沢韶男教授がいて、私は講義を取っていました。当時私は良好な学生ではなかったのですが、その後、相沢先生一家とはオーストリアで再会し、ウィーンの仮住まいで相沢先生の論法ともいうべき相沢流民俗学に惹き込まれていきました。こんなにも民俗学が身近であったにも関わらず、仮面に関しては学術的関心を示さなかった自分を恥じています。仮面のことを造形的興味だけではなく、もっと多角的に知りたいと、最近遅ればせながら考えるようになりました。
    「火の神・山の神」を読み始める
    「火の神・山の神 九州の土俗面考【1】」(高見乾司著 海鳥社)を読み始めました。ずい分前に大分県湯布院にあった由布院空想の森美術館(2001年閉館)に行ったことがあります。その時に見た土俗面の数々に感銘を受けました。展示は白壁にたっぷり空間をとって土俗面ひとつひとつがクローズアップされるように演出されていました。その展示方法にも魅かれました。自分は仮面が大好きで、民俗的な見地からではなく造形的な興味本位で集めています。自分が集めているモノなど由布院空想の森美術館のコレクションに比べれば取るに足りないモノばかりですが、仮面が放つ魅力は自分を虜にして離してくれません。そんな空想の森美術館を設立された著者の思いを、収集した土俗面を通して知りたいと思いました。本書をどこで購入したものか自分は忘れていて、ずっと自宅の書棚に眠っていたものを今回引っぱり出してきました。また、著者は民俗学者ではなく画家のようで美術的な視点からも興味が尽きません。通勤時間がまたまた楽しくなりそうです。