2013.06.02 Sunday
今日は朝から夕方まで工房に篭って制作三昧でした。今日は新作陶彫の成形を行っていましたが、改めて成形の難しさを実感しました。陶芸は電動ロクロの技術に熟練を要します。何度も同じものを作っていくうちに手馴れしてきて上達していくのが工芸家としての修練ですが、新しい世界を求めれば、技術的な困難にぶつかるのは工芸も彫刻と同じです。陶彫は作るたびに困難にぶつかります。イメージを優先するばかりに陶土で成形するカタチに無理が生じるのです。塊の内部が空洞でなければならないために生じる陶彫の難しさは、陶芸や塑造彫刻に見られない難しさです。空洞の体積が大きいと乾燥や焼成で歪みやヒビ割れの原因になります。陶土の壁で内部を仕切る必要があるのです。骨格となる壁を作り、周囲を板状の陶土で覆っていくのです。連結の部分は紐作りで補っていきます。今日は暑い一日で、汗を滴らせながら制作をしていました。また来週末に制作の続きを行います。
2013.06.01 Saturday
今日から6月です。梅雨入りが発表され、鬱陶しい季節が到来していますが、湿度の高い季節が陶彫の成形には最適なのです。ゆっくり乾燥していくためヒビが入りにくく、また陶土も適度に水を含んでいるため彫り込み加飾が容易になるからです。今月は次々と成形・加飾を行っていく予定です。また7月の個展のために梱包用の木箱作りもしなければなりません。今月は休日出勤が多いので、時間を有効に使おうと思っています。今日は朝6時から工房に行き、彫りこみ加飾をやっていました。昼頃、家内と施餓鬼法要のため菩提寺に出かけていき、墓掃除をしてきました。午後は東京の美術館巡りをしました。昨年の自分の個展に来ていただいた人の中に数十年ぶりに再会した人がいました。その人は「新象展」に抽象絵画を出品している人で、同展の招待状を頂いたのです。そこで「新象展」開催中の上野の都立美術館に足を運びました。彼は明快な形態と色彩による抽象絵画を出していました。迷いを捨て、無駄を省き、自己を追い詰めて到達した境地と言うべきでしょうか。凛とした画風に爽やかさを感じました。次に目黒区立美術館に足を伸ばしました。同館で開催中の「佐脇健一 未来の記憶」展が、少し前から気になっていたのでした。金属鋳造による風景彫刻。しかも近現代建築の廃墟を鉄やブロンズで作り、写真やボックスアートで見せる手法は、自分の感覚に直接訴えかけてくるものでした。自分は陶を素材にしているため表現こそ違いますが、共通なコンセプトがあるような気がしました。見に行って良かったと思いました。詳しい感想は機会を改めます。
2013.05.31 Friday
「田中恭吉 ひそめるもの」(和歌山県立近代美術館企画・監修 玲風書房)を読み終えました。あまりにも短い23年の生涯を疾風の如く走り抜けた画家田中恭吉は、結果的には遺作集となった萩原朔太郎の詩集「月に吠える」の挿画で世に知られたと考えるのが一般的であろうと思います。萩原の処女詩集としての言語表現と田中の遺作としての絵画表現、この生と死が交差するところに詩集「月に吠える」の独特な存在があると私個人では考えています。田中恭吉が21歳で喀血し、結核療養のため和歌山県に帰郷し、病床にありながら恩地幸四郎に既存作品を託し、ペン画を描き、短歌を詠む日常はどのようなものだったのか、自分には想像すら出来ません。東京美術学校日本画科の旧態依然とした教育には懐疑的で、真に「気分を漲らせ人々を襲う表現」(夏目漱石評より抜粋)を田中恭吉は求めていました。田中自身の言う「底痛みのする革命」とは何か。不治の病から逃避せず、精神生活そのものを表現する世界、それが短くも煌めく象徴的表現となって表れたと考えます。田中のオリジナル作品が見られる機会があったら、是非見たいと思っています。
2013.05.30 Thursday
練馬区美術館は自分の住んでいる横浜から遠い場所にありますが、面白い企画展が多いので時々出かけています。現在開催中の「牧野邦夫展」はTV番組で知りましたが、その描写力に興味を持ちました。先日、同館に出かけていき、オリジナル作品を観て、その鬼気迫る表現に感銘を受けました。数ある作品の中で、自分は幻想性の強い絵画より写実描写に徹したものが好きで、自画像や女性像の的確で重厚な表現に惹かれました。レンブラントを師と仰いだ画家は、憧れが募り、レンブラントからの手紙を想定したり、モチーフを限定し豊かな形態解釈を獲得して自己を追求していたようです。西欧風の鎧で身を包む自画像は何を意味しているのか、主題上の謎が多いと感じましたが、鬼気迫る追求に情念を塗りこめた画面が深く脳裏に刻まれました。塔を描いた未完の作品は、61歳で他界した画家の無念を物語っているようでした。
2013.05.29 Wednesday
日曜日の夜、BS朝日で「惜櫟荘ものがたり」を放映していました。岩波書店の創始者が自ら拘りをもって建てた惜櫟荘。僅か30坪の小さな別荘ですが、使われている素材は贅沢なものばかり。しかも目立たないところに贅を尽くしていて、建物の外見はむしろ質素な雰囲気すらありました。建築家吉田五十八の近代数寄屋作りは、日本の在りうべきモダンを取り入れて美術的に見ても絶品と思います。たまたま隣に住んだ小説家が惜櫟荘を買い取り、屋根瓦、敷石、土壁等をリサイクルして手間暇かけて修復しました。修復工事をしている様子はTV取材が追い、時系列に従って編集していました。これには思わず見入ってしまい、ゆったりとした時間の中で至福感を持ちました。自分はこうした番組が大好きです。かつてNHKで放映した番組で、桂離宮の修復工事を追ったドキュメンタリーがありました。これも印象に残っています。木材や瓦の素材を自分が作品として扱っていることも興味関心の対象になっていると思っています。良質な古材は歴史を刻み、燻し銀のような風格を出します。そこに自分は惹かれてしまうのです。