2013.05.28 Tuesday
彫刻を学んでいた頃、自分は版画に興味を持ちました。ドイツ表現主義の影響で、キルヒナーやバルラッハ等が作った木版画の強烈なイメージが頭から離れなかったのです。それは日本古来の錦絵とはまるで異なる世界でした。錦絵は絵師、彫師、刷り師という分業で作られる江戸時代の産業ですが、初期には芸術性の高さを誇り、西欧に多大な影響を及ぼしています。自分が惹かれたのは錦絵ではなく、自ら版下となる絵を描き、自ら版を彫り、自ら摺る創作版画でした。創作版画運動が明治時代に興り、その変遷を知る契機となった山本鼎の「漁夫」を雑誌で見て、自分も創作木版画を始めました。恩地幸四郎や田中恭吉もその時に知りました。今読んでいる「田中恭吉 ひそめるもの」(和歌山県立近代美術館企画・監修 玲風書房)を手にして、そんな20代の頃の思いが甦りました。版画は今でも興味があって、数年して時間が出来たら再び試みようかなぁと思います。その時は銅版画をやってみたいと思っています。
2013.05.27 Monday
自分は20代の頃、オーストリアの首都ウィーンに住んでいました。同地の国立美術アカデミーに通って、最初は版画科に、次に塑造科に移ってレリーフを学んでいました。今思えば素晴らしい環境に身を置いていたことに幸せを感じますが、当時はわからないドイツ語や創作上の悩みを抱えていて、環境を楽しめる心の余裕はありませんでした。そんな時に大学の先輩夫妻がやってきて、同地で交遊し、国立歌劇場でのオペラ鑑賞を一緒に楽しんだのでした。私は1985年に帰国しましたが、先輩はドイツに移住して博報堂で仕事をしていました。先日ドイツからEメールが突然届いて驚かされましたが、一時帰国した先輩と横浜中華街で会うことになりました。話はもっぱらヨーロッパのことになり、当時の空気に浸りました。美術や音楽に心酔していたあの頃を振り返ると、帰国してから公務員になった自分は忙しさを言い訳にして、やり残していることがあると思います。定年を迎えたら、あの頃に戻って、そこからもうひとつの人生をやり直したいと思うようになりました。再出発はやはりヨーロッパの地を選びたいと考えています。
2013.05.26 Sunday
今日は朝から工房にいました。新作の成形に手を入れた後、表面に彫り込み加飾を行いました。陶土がちょうどいい乾燥具合になっていたので、ヘラや掻き出しベラを使って、矩形の彫り込みを施しました。身体中全てが陶彫に集中していくのは気持ちがいいものです。周囲が見えなくなって時間も忘れます。矩形のデザインはその都度決めていきますが、全体を眺めたり、部分に拘ったりしているうちに次第に快感になっていきます。創作活動で一番楽しいひと時がやってきたと思えるのは、こんな時かもしれません。新作のイメージはまだ頭の中に生々しく残っていて、それを具現化する第一歩です。作品は取り掛かりの最初の一歩で決まるといっても過言ではありません。大胆に慎重にひとつずつ確かめながら塑造していきます。夕方、疲れてきたので今日はここで終わりにしました。まだ全て加飾が終わっていないので、陶土に水を打ってビニールで包んでおきます。また次回続きをやります。
2013.05.25 Saturday
沖縄が梅雨入りしましたが、横浜はこのところ爽やかな日が続いております。木々の新緑が目に眩しく制作日和の季節を迎えています。相原工房の風薫る空間で、新作を始めることができる喜びに浸っています。昨夜はカメラマンが来て、2回目の図録打ち合わせを持ちました。今日は午前中職場に出向かなければならず、一日制作という訳にはいかなかったのですが、午後は先日成形した陶彫を確認し、土練りの追加を行いました。一頻り汗を流して土錬機を回しました。夕方になると疲れが出て、自宅で暫し休むことにしました。夜は体調を整えるために近隣のスポーツ施設に行って水泳をしてきました。就寝前にRECORDを作り、NOTE(ブログ)を書いています。週末になったらあれもこれもと欲張ったことを考えていますが、いざ週末になってみると、多くのことは出来ないもので、時間が経つのが早く感じます。明日も制作続行です。
2013.05.24 Friday
もう会期は過ぎてしまいましたが、今月16日に訪れた六本木ヒルズ森アーツセンターでの「ミュシャ展」。大変混雑していてチェコの画家アルフォンヌ・ミュシャの知名度の高さを窺い知ることが出来ました。展示されていたのは、まずミュシャの知名度を一気に押し上げた有名なポスターがありました。その他にも絵画、デッサン、装飾のデザイン等多義にわたる作品で構成され、充実した内容で楽しめました。ミュシャ最大の代表作「スラブ叙事詩」は当然その重要さ巨大さ故に来日していませんでしたが、幸いにも小さな習作を観ることが出来ました。自分は若い頃、滞欧中にチェコを訪れたことがあります。その時何故「スラブ叙事詩」を観なかったのか残念でなりません。優雅なポスターで一躍売れっ子画家になったミュシャが辿りついた自国の民族の存亡と誇り。芸術家としての存在意義をミュシャはここに見出し、壮大なスケールで紡ぐ歴史や宗教を描いていきました。「スラブ叙事詩」は習作を見てもその世界観が伝わってきます。またチェコに行く機会があれば是非観てきたい作品です。