Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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  • 「手の痕跡」が物語る塑造の数々
    先日、東京上野にある国立西洋美術館で「手の痕跡」と題されたロダンやブールデルの彫刻展を見てきました。日本には松方コレクションを初めとするフランス美術の名作があり、とりわけロダン等の鋳造作品の数々は圧巻と言えます。自分は10代の終わりに工業デザインから彫刻へ志望を変えて大学受験に臨みました。最初の動機として建築的な立体造形に憧れていたのですが、大学に入ったら塑造の習得に明け暮れ、立体構造は塑造を通して学ぶことになりました。学生として最初に影響されたのがロダンで、次にブールデルやマイヨールでした。マンズーやファッツィーニ、ムアやジャコメッティ、抽象ではブランクーシやノグチ、カルダー等々がそれに続きます。もの派等の現代彫刻、インスタレーションへの道はさらにその先にありました。自分の学生時代はロダンのように流麗で逞しい塑造ができたらいいなぁという思いがありました。塑造の表面に残る手の痕跡を眺めながら、内部から外へ出てくる肉塊の表出、隆々とした筋肉に満ち溢れる緊張感、うねるように迸る抒情、そこに付随する文学性は好きにはなれませんが、それでも自分の原点を見るような思いで今回の展覧会を見て回りました。
    エル・グレコに関する個人的遍歴
    スペインを代表する画家であるエル・グレコ。この特異な画風を理解するのに自分はかなり時間を要しました。描かれた顔が小さく異様に伸びた背丈を見ると人体バランスがいかにも奇異で、しかもハイライトの強い独特な色彩を強烈な筆致で表す絵画は、具象であっても写実としては考えられない要素が多く、若い頃はその雰囲気に反発さえ覚えました。滞欧生活をしている頃、自分は一度スペインに行っていますが、ゴヤやベラスケスに比べるとどうしてグレコが巨匠として扱われているのか理解できませんでした。ところが突如グレコの絵画が理解でき、さらに表現の卓抜さに感銘さえ受けたのでした。何故なのか自分でも判りませんが、確かスペインのどこかの教会にグレコの絵画があって、その荘厳な輝きに圧倒されたのかもしれません。しかもそれは図版で見たのであって、実物ではありませんでした。人体バランスが奇異で強烈な筆致をもつグレコの世界が、マニエリスムではなく幻想絵画でもなく、その時は不思議なリアルさをもって迫ってきたのです。キリスト教世界を描いているにも関わらず、宗教の高尚さと人体の艶めかしさが融合し、感覚で描かれたように見えて、実は作者の綿密な計算があるとも自分には思えました。自分の芸術遍歴でグレコほど評価が変わった画家はいません。東京都美術館で開催されている「エル・グレコ展」を見て、その認識を新たにしました。晩年のめくるめく画面構成はグレコそのもので、追従を許さない特異な世界です。ある作品に関して、詳しい感想を書きたいと思いますが、これはまた機会を改めます。
    週末 作業能率上がらぬ一日
    今日は朝8時から夕方5時まで工房に篭って制作三昧でした。数日前に路上で転んで背中を打ったせいか、制作が今ひとつ乗りません。とりわけ木彫の効率が上がらず、四苦八苦しています。そこで、午後になって乾燥している陶彫部品の仕上げと化粧掛けを行い、窯入れの準備をしました。今週も2回の窯入れを考えています。まだ工房のある植木畑は残雪が多くあるため、ウィークディの夜の制作は無理と判断して、それならば水曜日に2回目の窯入れを行うことにして、今日は1回目の窯入れを行ってきました。作業能率が悪いのは困ったもので、木彫が進まないことには作品全体の構成が見えてきません。大まかな構成はイメージできているのですが、今回は細かい箇所に拘りたいので、何としても木彫を進めたいと願っています。とりあえず今日は3点目の木彫荒彫りに入りましたが、1点目や2点目もまだまだ中途半端です。やる気が空回りしているように思えて、もう一度頭を冷やそうと思いました。また次の週末に頑張りたいと思います。
    週末 上野と青山の美術館巡り
    今日は東京の美術館を巡って3つの展覧会を見ようと予定していました。工房はまだ窯入れしている陶彫部品があるため今日は使用できず、それならば美術館に行こうと決めたのです。まず、上野の東京都美術館で今日から開催されている「エル・グレコ展」。初日でしたが、朝から同展に出かけたので、混み具合は気になりませんでした。きっと徐々に混雑してくるだろうと予想できます。エル・グレコに関しては自分の鑑賞遍歴を振り返って感想を述べたいので機会を改めます。次に訪れたのは国立西洋美術館で開催中の「手の痕跡」展。ロダンとブールデルの彫刻をたっぷり鑑賞しました。自分にとっては大学時代に学んだ原点とも言うべき作品の数々。自分を振り返ることもあったので、これも別の機会に感想を述べます。午後になって向かったのは青山でした。伊藤忠商事が持つギャラリーで「五美大展」をやっていたので見てきました。相原工房に出入りしている若いスタッフが同展に参加しているのです。彼女はテキスタイル専攻の美大生で、黒の染料だけで色彩のバリエーションを生み出した作品と、墨や膠を使って溶解されたような世界を表出する作品を出していました。カオスの中で何かが蠢いていて、得体の知れない生命体の誕生を予期させるようなイメージを自分は持ちました。墨による幻視的な作品は、さらに展開し、拡大深化していけるように思えます。本人による思索も短文で述べられていましたが、まずは作品が雄弁に語ることを考えた方がいいでしょう。彼女の今後の活躍に期待したいと思います。
    頻繁な窯入れと窯出し
    例年なら夏に発表する新作陶彫の焼成は、既に終わっていて陶彫と組み合わせる木彫等の制作に入っているところです。今年も木彫が始まっているところは同じですが、陶彫部品の焼成がまだ終わっていない現状があります。これは陶彫部品のひとつひとつが大きいせいかもしれません。現在、週末が終わるごとに窯入れをしています。そのため週の前半3日間は許容電力の関係で工房が使えません。今週は雪のため工房のある植木畑に毎晩入っていけず、スタッフも来ないので、窯入れを2回やることにしました。頻繁に窯入れをしないと木彫にも影響が出るので、今後は窯をフル稼働させていくつもりです。1週間に2回の窯出し、窯入れは初めてです。