2014.07.07 Monday
現在読んでいる「視線とテクスト」(多木浩二著 青土社)に椅子に関する論考が掲載されていたので、興味を持って熟読しました。私は椅子やテーブルに学生時代から関心があり、若い頃は工業デザイナーを目指した時期もありました。本書には椅子の座る機能と同時に意味論まで総括されています。椅子を文化として捉えた背景が伺える箇所を引用します。「北欧の森のなかでは人間は枝のついたままの幹を切り、幹を二つに割って下面に出た三本の枝を脚としたスツールをつくっていたといわれる。このハンドワークとしてはもっともプリミチーフなもののなかにもはや単なる転用をこえた道具の制作がみられる。それはもはや自然物ではない。このような道具は自らがそのなかにいるあらたな人工物による世界を開示している。はっきり、人工物としての椅子、道具としての指示性の記号を身におびた道具=椅子がうまれ、これに座るようになったとき、自然物をそのまま転用した〈野蛮〉に対して〈文化〉と見なすことができるし、そのころから、座ることの文化的ーつまり社会的、制度的な意味が生じてくるのである。」
2014.07.06 Sunday
今日は工房に篭って梱包の最終作業に追われました。木箱に入らない陶彫部品が1点あり、垂木で直方体の骨組みを作り、そこに収めました。来週は工房の片付けと接合部品の確認を行います。やっと梱包が完了しました。運送業者の手配も行いました。業者も毎年やっていただいている方々で搬入搬出に慣れているのですが、来週下見に来て荷物の量を確認するようです。今日は工房に新しいアーティストの卵がやってきました。2年前に中国から日本に留学してきた女性で、現在は美大の大学院でグラフィックデザインを学んでいます。エスキースを見ると大陸的な雰囲気を感じさせる一方、生真面目に現代デザインに取り組んでいて好感を持ちました。中国の一人っ子政策のため自分は一人っ子なので、いずれ両親に介護が必要になれば帰国しなければならない、きちんと就職しなければビザが切れてしまうので今は就職活動をしている、でもアートを日本で続けたいので相原工房を使わせてほしい等々の話題が飛び出し、その他日中の政治的な微妙な関係やら文化の共通理解やらで、暫し時間を忘れてしまいました。外国籍のアーティストはグローバルな感覚を持ち、また目標に対して貪欲で、自分も教わることが多々あります。夕方、近郊の商店街で「おわら風の盆」を行うので、家内が胡弓の演奏に出かけました。中国からの留学生は「おわら風の盆」を見たいと言うので一緒に出かけました。彼女は中国の二胡に似た胡弓に興味を持ったらしく、真剣な眼差しで踊りや演奏を見ていました。
2014.07.05 Saturday
フォトエッセイストみやこうせいさんはウィーン滞在時代からの知り合いで、当時ルーマニアやギリシャによく連れて行っていただきました。みやさんが出版した写真集や随想集はほとんど持っていて、自分はみやさんの人柄に強く惹かれています。みやさんは東京に定住し、もちろん家族がいるにも関わらず、主に東欧諸国を放浪し、彼の地の民俗芸能を写真に収め、さまざまな雑誌に写真と文を掲載しています。先日もメールが届き、ルーマニアから帰った報告と東京丸の内にある丸善でのサイン会のことを教えていただきました。絵本作家のスズキコージ氏のワークショップとともにサイン会を開催していましたが、みやさんは相変わらず軽妙な喋り口と独特な雰囲気で、自分は忽ち昔のヨーロッパ暮らしに戻された気分がしました。自分が通った1980代のルーマニアは共産圏真っ只中で、街は物資に乏しく暗雲立ち込めるイメージでしたが、状況は一変したようで、最近のルーマニア事情も知りたいと思っていました。ただ、サイン会という落ち着かない空間の中で、たいした話も出来ず、またの機会にしたいと思いました。今日は朝から工房に篭って個展の準備に追われ、午後は東京駅まで足を伸ばし、旧知の作家に出会うという充実した一日を過ごしました。明日は個展準備の続きをやります。
2014.07.04 Friday
アンフォルメルはフランス語で「非定型芸術」を指します。第二次大戦による破壊や大量虐殺で人間性を失い、不安定な状況の中で登場したものです。所謂広義な意味での表現主義で、1940年から50年に至り、芸術家はデビュッフェやフォートリエ、ヴォルスに代表されます。日本でも影響を受けた画家もいました。有名なところではフランス在住の画家今井俊満ですが、自分が高校時代にデッサンの手ほどきを受けた佐々木四郎先生もその一人でした。佐々木先生は鋭利な黒い太線が画面下方から立ち上がる明快な絵画構成で知られた画家です。一部アンフォルメルの影響が残る部分があったことを記憶しています。アメリカではJ・ポロックに代表される抽象表現主義があって、フランスのアンフォルメルとの前衛争いがあったとどこかで知りました。いずれにせよ自分がまだ生まれていない時代の活気に満ちた芸術運動で、迸る絵の具をエネルギーの発散と看取る若々しい精気に溢れたものであったことは疑う余地がありません。
2014.07.03 Thursday
今月の21日から東京銀座のギャラリーせいほうで開催する私の個展ですが、案内状をギャラリーと私個人の双方から発送しています。その案内状をホームページの扉にも掲載しました。「発掘~層塔~」の一部を画像にしたもので、自分としては大変気に入っています。画像は数ある中で私自身が選びますが、撮影時の指示は出しません。カメラマンのセンスに任せているのです。これは思わぬ効果を生みます。私以外の視点があるということで、作品の世界が広がるのです。自分はデジタルな効果を考えて作品を作っていないので、出来上がった画像に驚くことが多々あって、アナログとデジタルの双方の世界に満足感を覚えます。ホームページにどのくらいの方々が入ってきていただいているのか、または別のところからヒットしているのか実態はわかりませんが、より多くの方に個展を見ていただければ幸いと思っています。