2023.12.04 Monday
「土方久功正伝」(清水久夫著 東宣出版)の第八章「戦後東京の生活」の気になった箇所を取り上げます。「年が明けた昭和23年(1948)1月9日、敬子の弟・川名嵩久が土田村を訪れた。医師である嵩久は、2月に勤務する病院を辞め、世田谷に家を建て開業するので、思い切って上京して一緒に住まないか、と話した。~略~終戦からまだ間がなく、交通事情は劣悪であったが、3月12日、久功達は世田谷・豪徳寺の嵩久のところへ引っ越してきた。望んでいた東京生活が始まった。~略~5月に入る頃から久々に木彫レリーフを手掛けた。1週間ほどで、『罎から飲む二人の子供』を彫り上げた。6月には『パンの実を持っている子供』、7月には『足を投げ出した子供(パラオ・ベルブルト)』、『両手を頭にあげた女の立像』を制作した。いずれも、力のこもった秀作である。久功は、これまで長い空白を埋めるかのように、精力的に木彫レリーフの制作に取り組んだ。」漸く美術家として動き出した久功は個展をやることになりました。「そして、この年4月、日本橋の丸善画廊で、戦後初の個展を開いた。この個展は、木彫レリーフ36点、立体彫刻1点、マスク9点の、旧作、新作のすべてを展示した回顧展となった。毎日新聞には、『稚純、孤高、清潔、都会人にはオアシスのような作品展』と評された。」久功は2回目の個展を同会場で開きました。「展覧会が始まる3日前、久功は美術学校の同窓で、近くに住む彫刻家の村田籐四朗に伴われて高村光太郎を訪問し、展評を書いてもらうよう頼んだ。」高村光太郎は展覧会場下の喫茶店で原稿を書いてくれたようです。「久功は、つてを求めて、その原稿をすぐに朝日新聞社の学芸部へ持ち込んだ。そして個展の2日目、21日の朝日新聞の学芸欄の真中に、三段抜きで大きく高村光太郎の個展評が写真入りで掲載された。そこで、光太郎は、『現代化した原始美』と評し、『浮彫木彫の常識を破って映像を平たく平たくと逆に彫ってあるのは興味があり、この手法にも成功している。一般木彫家の一見に値する。』『兎に角見る者の心を明るくする展覧会だ』と書いている。」今回はここまでにします。
2023.12.03 Sunday
12月に入って最初の日曜日です。教職に就いていた頃は、師走と言うのは教師が多忙を極めることだと理解していて、実際に年の瀬にかけて仕事が多いのに辟易していた時期でもありました。その年が暮れて、新しい年が始まるという意識は、何も教職に限ったことではなく、退職した今でも襟を正したいという心持があります。それなら今月はここまでやっておこうという目標があってもいいのかもしれません。以前は月ごとに目標を決めていましたが、創作活動一本になってから、ダラダラと過ごしてきた日常生活に喝を入れるために目標は必要だろうと考えました。と言っても陶彫制作は来年の春に2024年個展の図録用写真撮影をするため、今は陶彫立方体を只管作ることを心掛けているのです。それに呼応して2022年のRECORDも陶彫立方体に合わせて作っていますが、RECORDに関しては今年の分があるので、これは今月中に頑張っていこうと思っています。実際のところRECORDの下書きは、ほぼ日付通りに進んでいますが、完成が覚束ない状態です。これを何とか目標に据えていこうかと思います。読書は南洋諸島で活動した画家の伝記がそろそろ読み終えるので、次なる書籍をどうしようかと思案しています。先日、美術館のギャラリーショップで購入したイタリアの画家カラヴァッジョに関する論文があり、これを読んでみようかと思っています。頁を捲ると本格的なカラヴァッジョ論であるらしく、単なる伝記ではない章の運びが見て取れます。ちょっと面白そうです。今月も制作等やることが多いので、今月中にカラヴァッジョ論が読み上がるかどうか分かりませんが、挑戦してみようと思います。
2023.12.02 Saturday
週末になりました。今週の創作活動の状況を述べていきます。今週は11月から12月へ月を跨いだ1週間でした。今週も毎日工房に通って陶彫制作に邁進していました。完全に季節が冬に移行したので、ストーブを点けて作業をしていました。陶彫は水を含んでいるので、寒さがかなり応えます。手にもハンドクリームをつけています。夏に比べると乾燥はゆっくりになり、放置した作品もなかなか窯入れが出来なくなりました。昨日の夕方は家内と川崎にある洋菓子店「マリアツェル」に行ってきました。この店のパテシエはヨーロッパにいた頃からの友人で、この時期にドイツ等で食べられているパン・シュトレンを受け取りに行ったのでした。彼とは40年も前になるヨーロッパの話になり、会うたびに昔を懐かしむ話題で持ちきりになります。今日は工房に美大で染織を専攻している教え子が顔を出しました。じっくり腰を落ち着けて作品を作る彼女の姿勢は、染織に向いていると私は感じています。そろそろ就職活動に話が及ぶようになり、美大で楽しい生活を送っている彼女にしてみれば、就職はまだ考えられないのかもしれません。私は自作に使う化粧土がなくなってしまい、今日から混合して化粧土を作ることになりました。化粧土の配合を忘れかけていて、メモ書きもどこかにいってしまったので、僅かな記憶を辿って化粧土の配合を始めました。陶土にしても化粧土にしても私の考えた配合は難しいものではないので、通常の制作工程にはすぐ戻れるだろうと思っています。
2023.12.01 Friday
12月になりました。今日は工房で作業をした後、川崎に住む友人の店に出かけました。ヨーロッパでこの季節に食べられているドライフルーツが入った保存用のパン・シュトレンを、私は大量に注文していて、それを受け取りに行ったのでした。友人は、私と同時期にウィーンに暮らしていました。私は美術学校に通い、彼は菓子工房で修業をしていました。シュトレンはその時に作り方を教わったらしく、彼は本格的なシュトレン作りに励んでいました。彼は帰国しても、小麦粉、フルーツ、マジパン等の材料はヨーロッパから調達していたので、私にしてみれば本場のシュトレンが味わえて、他の店には見られない満足感がありました。材料の価格が高騰している現在も、彼は注文のみでシュトレンを作り続けています。私はこのシュトレンを、同時期にヨーロッパに滞在していた彫刻の師匠や画家の先輩たちに郵送していく予定です。きっと皆さんにとっても懐かしさが込み上げてくるはずで、私がウィーンで表現の探求に苦しんでいた頃に、先輩の画家はウィーンの一室で細密描写に明け暮れていました。また師匠の池田宗弘先生はスペインで巡礼の道を歩いていて、ロマネスク美術に関する資料をまとめていました。シュトレンのカタチがキリスト教と深い縁があるため、キリスト教徒の師匠には格別の贈り物になるだろうと思っています。少しずつ輪切りにして、クリスマスまで食べていく硬質なパンは、寒さの厳しいドイツやオーストリアでは一般的な慣習です。極寒とシュトレンは私の中でも連想を齎すものなのです。日本も今日から12月になり、本格的な冬が到来した感じがしました。今月をどう過ごすのか、相変わらず彫刻制作に精を出す一方で、美術館や映画館にも足を運びたいと考えています。健康に留意しながら、元気にこの冬を乗り切っていこうと思っています。
2023.11.30 Thursday
今日は11月最終日です。11月を振り返ると気温の変動が著しく、20度を超える日があったかと思えば、気温一桁の真冬のような日もありました。工房は内壁がないので、工房内温度は外と変わらず、陶彫の作業には厳しいものがありました。今年は夏の酷暑でも辛かった陶彫制作でしたが、秋になっても大幅な気温変動があって、身体への負担が大きかったのではないかと思っています。何しろ陶という素材は放っておくと乾燥が進むし、よく練らないと造形がやり難い性質があって、自分の事情に関係なく常に面倒を見ていかなければならないので、結局休みなく作業を継続してしまうのです。今月も30日間のうち28日間は工房で作業をやっていました。窯入れは2回行いました。工房に行かなかった2日間のうち、1日目は工房に来ている子の通っている美大の芸術祭に行ってきました。2日目は「棟方志功展」(東京国立近代美術館)と神保町古本屋街を散策してきました。美術館での鑑賞はこの1回だけでしたが、自分が若い頃から親しんだ板画家の回顧展だったので感慨一入でした。映画には2回行きました。「マルセル・マルソー 沈黙のアート」(シネマ ジャック&ベティ)、「ゴジラ-1.0」(鴨居ララポートTOHOシネマズ)でした。その他の事として、私が建てた集合住宅「RAUM」の階段下の空間に自作「発掘~坪庭~」を設置しました。RECORD制作は毎晩食卓で頑張って作っていました。漸くホームページのRECORDのアップも進んできました。読書では南洋諸島で創作活動をした日本人芸術家の生涯に関する書籍を読んでいて、興味が尽きません。ともかく今月は気温変動が著しかったにも関わらず、何とか健康に過ごせました。来月もその調子で頑張っていこうと思っております。