2019.05.11 Saturday
大型連休が過ぎ、漸くまた週末がやってきました。朝早く工房に行くと、ロフトの拡張工事が進み、計画したところまで鉄骨の梁が設置してありました。工房の3分の2はロフトになる計画で、ロフトにも蛍光灯を設置して、倉庫部分も明るくする予定です。今日は電気業者が来て、複数の蛍光灯を取り付けていました。昇降機はまだこれから設置する予定で、あと1週間くらいでロフト拡張工事が完成する見込みです。私は工事のため手狭になった作業空間で、大型連休中に成形を終えた「陶紋」5点の彫り込み加飾をやりました。ウィークディの夜に作業するつもりになっていましたが、関係団体での歓送迎会が水曜日と金曜日にあったため、なかなか工房に来られず、結局彫り込み加飾は週末の作業になってしまいました。ウィークディの仕事も外会議が多くて疲れた1週間でした。今日はそんなことで調子が出ない一日でしたが、午後は「発掘~曲景~」のテーブル部分の塗装を行ないました。連休中に砂マチエールを施しておいたところ、硬化剤がしっかり固まっていました。そこに油を多めに溶いた油絵の具を滲み込ませていく作業をやりました。1回目の塗装は基本となる色彩を全体に塗る作業です。次に別の色彩を無造作に散らせていきます。そのアクションペィンティングを何度か繰り返して、自分が求めるイメージに近づけていくのです。今日は基本となる色彩を施してひとまず作業を終わりました。明日続きをやろうと考えています。明後日の月曜日は窯での焼成を予定しているので、鉄工業者や電気業者は工事を休んでいただく旨を伝えました。そこで明日はテーブル部分の塗装継続と、窯入れのため陶彫部品に仕上げを施す作業を行います。今晩もある団体の歓送迎会が組まれていて、夜の街に出かけます。予定が密集している時期で、心身ともに疲れるなぁと感じています。
2019.05.10 Friday
今月のRECORDのテーマを決めました。RECORDは一日1点ずつポストカード大の平面作品を作っていく総称で、文字通りのRECORD(記録)になっています。今年は「~の風景」というタイトルをつけていますが、今までのRECORDも風景描写をしている作品が多いので、風景という文字がタイトルに加わっても画面に大きな変化はありません。主題が明瞭になっただけの話です。今月のテーマを「叢雲の風景」としたのは、2019年の1月に「かすむ」というタイトルで作っていたRECORDを思い出し、霧や霞の中で風景が見えにくい状況をさらに続けたいなぁと考えたからです。当時のテーマ設定の内容を振り返ると、不安定で先が見えない国際情勢にも触れていました。現在でもそこは変わらない状況ですが、今回は発想を古代日本にも向けていて、霞む風景を「叢雲」というコトバで表しています。これは熱田神宮に伝わる三種の神器である「天叢雲剣」(あめのむらくものつるぎ)に由来しています。日本神話において、スサノオが出雲国でヤマタノオロチ(八岐大蛇)を退治した時に、大蛇の体内から見つかった神剣が「天叢雲剣」で、ヤマタノオロチの頭上にはいつも雲がかかっていたので、こう称されているのだそうです。今回は日本神話を描こうとは思っていませんが、発想のひとつとして神話を借りることはあるかもしれません。日本神話を突き詰めていくとなかなか面白そうですが、学術的探究は今はやりません。今月も一日1点完成を自分に課して頑張っていきたいと思います。
2019.05.09 Thursday
大型連休を利用して千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館に「ジョセフ・コーネル コラージュ&モンタージュ」展を見に行ってきました。DIC川村記念美術館にはアメリカの造形作家ジョセフ・コーネルの作品コレクションがあって常設展示されています。コーネルの世界に惹かれている私は、別の展覧会の時にもコーネルの作品を必ず見ていました。私はコーネル関連の書籍はほとんど読んでいるので、それだけで作家を身近に感じてしまうのです。私はアメリカに行ったこともなく、生前のご本人にお会いしたこともないのにも関わらず、コーネルが家族と共に住んだ自宅兼用ガレージで箱の作品を制作している姿を勝手に思い浮かべていました。コーネルの作る箱は内部に既存のモノが配置されていて、詩的な情緒もさることながら、作家の謎めいた思索を紐解いていきたい願望に駆られます。一見分かり難い世界を前にして、あれこれ自分なりに解釈するのが密かな私の楽しみになっているのです。飛び立つ鳥を封じ込める鳥籠や過ぎた時間を瞬時に切り取ったようなホテルの片隅に、そのミニチュアを作った作家の思いが交差しているように感じています。今回の展覧会ではコラージュ&モンタージュという創作技法がタイトルにありました。コラージュとは、仏語で糊付けという意味があり、雑誌の切り抜き等の素材を組み合わせる技法のことで、シュルリアリストの常套手段です。平面に斬新な並置を試みて非現実的な世界を作り出します。またモンタージュとは、映画用語で視点の異なる複数のカットを組み合わせる技法です。コーネルは映画が好きだったらしく、映画フィルムの断片をコラージュした作品がありました。映像作家の協力を得て、実験映画も作っていました。私はコーネルによる映像を今回初めて観ました。映像も含めて50点が展示された空間に接して、横浜から車を飛ばしてわざわざ千葉県佐倉まで来た甲斐があったなぁと思いました。
2019.05.08 Wednesday
昨日のNOTE(ブログ)に続き、今回も映画の話題です。大型連休中に観た映画で、常連の横浜のミニシアターにおいて連日チケットが完売していた映画がありました。私も最初に行った日は観られず、翌日に漸く観ることが出来た映画で、観終わった後で、この作品が今年度のアカデミー作品賞に輝いた理由が分かりました。映画のタイトルは「グリーンブック」。「グリーンブック」とは1960年代のアメリカ南部を旅行する黒人必携のガイドブックのことで、黒人に対する人種差別が合法的に行われていた時代に登場した書籍です。映画は実在した人物の実話を基に描いていて、黒人天才ピアニストであったドナルド・ウォルブリッジ・シャーリーは18歳でボストン・ポップス・オーケストラでデビューし、音楽、心理学、典礼芸術の博士号を取得していました。もう一人のイタリア系アメリカ人トニー・バレロンガはナイトクラブに用心棒として勤める、腕っぷしが強くハッタリもきく人物でした。このピアニストと雇われ運転手が差別の色濃い南部へコンサートツアーに出かけるロード・ムービーが「グリーンブック」の中核となる物語です。図録には「ヤクザなトニーは当時の白人労働者階級らしく、黒人に対する偏見に満ちている。ヨーロッパの洗練を身につけたドンは黒人のソウル・フードであるフライド・チキンも食べたことがない。この水と油の2人の珍道中が楽しくおかしい。」(町山智浩著)とありました。やがてトニーはドンの音楽に惹かれ、ドンはトニーの問題解決力を頼りにする親密な関係を築いていきました。映画全編を通して人種差別という大きな社会問題が浮き彫りになっていくように、映画では演出されていましたが、この作品がアカデミー作品賞を取ったり、大勢の観客が押しかけるのは、この差別というテーマが現代も問題として残っていることを意味しているのではないかと私は考えます。「現在、トランプ政権によって人種間の分断が進み、ヘイトクライムや、警官による黒人への暴力事件が増加している。『グリーンブック』が描く、人種を超えた相互理解の大切さは今も変わらない。映画の最後に、本物のトニーとドンの生涯変わらぬ友情の証を見たとき、人はあふれる涙をおさえることができないだろう。」(町山智浩著)と図録は結んでいました。まさにその通りだと私も感じます。
2019.05.07 Tuesday
大型連休を利用してエンターティメント系の映画館に出かけ、映画「キングダム」を観てきました。工房に来ていた美大生は「漫画を原作にした実写版映画は、結構コケることが多いんですよ。」と言っていましたが、「キングダム」はなかなかどうしてクオリティの高い作品に仕上がっていると私は感じました。映画を観るまであまり期待をしていなかったのは事実ですが、広大な中国でのロケや兵士や騎馬による大規模な編成など、漫画の世界観を余すところなく描き切っていて、ハリウッド映画に見られるような鬼気迫る凄まじいアクションも盛り込まれていました。物語は中国の紀元前にあった春秋戦国時代で、7つの強国が犇めいていた背景があり、やがて秦が中華統一を果たすまでの経緯を描いています。主人公は戦災孤児だった信と秦の始皇帝になる政で、この2人の立身出世が物語の中核を成しています。原作者で漫画家の原秦久氏は、中国の歴史書「史記」を基に、史実とフィクションのバランスをうまく取りながら物語を作っていることが伺えて、始皇帝研究の学者からのメッセージも図録に掲載されていました。映画の中心は政の弟が反乱を起こし、王宮を我がものにしていたことに対し、信や政たちが王宮奪還を成し遂げるまでを描いていました。50数巻が既刊されている漫画からすれば、まだ導入部分といったところですが、今後続編はあるのでしょうか。それぞれの俳優が肉体改造をして、力の籠った演技をしていたので、ぜひこの壮大な歴史絵巻をこのまま続けてほしいと願っています。日本のアクション映画の水準を測り見るような思いを持ったのは私だけではないはずです。