Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

  • Tag cloud

  • Archives

  • 映画「運命は踊る」雑感
    常連になっている横浜のミニシアターのレイトショー。これは勤務時間終了から上映が始まるので、自分にとっては好都合な鑑賞体験になっています。ウィークディの夜に出かける映画館はストレス解消にもなって、仕事でさまざまなことがあっても、気持ちをリセットできるのです。「運命は踊る」はイスラエルの兵役に就いた息子を持つ両親の事情を描いています。イスラエルの映画は私にとって初めてかもしれず、S・マオズ監督はイスラエル軍戦車部隊に砲手として従事したことがあって、そうした体験やら娘さんが乗るはずだった通学バスがテロに遭ったりした体験などが映画の中に織り込まれているようです。映画の内容はギリシャ悲劇の三部構成を下敷きにしていて、第1部は兵役に従事している息子の死亡が役人から知らされる両親の憤り、そのすぐ後でそれが誤報だったと伝えられると、父ミハエルは怒りを爆発させ、強引に息子を連れ戻すように役人に迫るのでした。第2部は辺鄙な国境の検問所に勤務している長男ヨナタンやその仲間たちとののんびりした時間が描かれていました。問題なく検問を通過する何台かの車の中で、事件は突如やってきて、ちょっとしたミスでヨナタンは誤射してしまい、上官はそれをなかったことにすると判断する場面がありました。そこに連絡が入り、ヨナタンに帰宅命令が出てトラックに乗せられました。第3部はヨナタンの母ダフナと別居しているミハエルが自宅に戻り、あれこれ過去を振り返る場面がありました。「子どもが生まれる喜びは、やがて薄れてしまうけれど、失った悲しみは、永久に消えないわ。」というダフナの言葉に、死亡が誤認されたヨナタンは、この時すでに亡くなっていたのかと私は訝しく思いましたが、それが物語の最後に判明しました。ヨナタンを乗せたトラックが事故に遭ったのでした。ヨナタンを強引に呼び寄せたミハエル、それが結果的にヨナタンの死亡に至ったわけで、原題の「FOXTROT」は元の場所に戻るダンス・ステップのことを言い、辻褄が合う物語仕立てになっていました。観終わった後、私は気持ちの整理がつかない不安定さを感じました。イスラエルが抱える課題を浮き彫りにした本作は、「イスラエルにとって有害な映画。政府機関であるイスラエル映画基金から製作資金を与えるべきではなかった。」とスポーツ・文化大臣から攻撃されたにも関わらず、多くの賞に輝いたことは納得できると思いました。一緒に観に行った家内は、映画の冒頭で両親の家の玄関先に掛けられた直線が幾重にも交差する抽象絵画が家族の状況を示しているのではないかと指摘をしていました。現代アートが室内に何気なくあるのが、私にとっても楽しめる映画の背景になっていて、さらに家内が言う通り、そうした小道具にも何か意味が込められていたのかなぁと思いました。
    10月RECORDは「象」
    「象」は動物のゾウではなく、象形や象徴を意味する文字として選びました。最初にイメージしたのは碑文のような刻印された文字で、読解出来なくても、そこに不思議な雰囲気が醸し出される世界でした。文明の曙期で人類には具体的なカタチを抽象化していく過程があり、文字の原初形態では象形文字が登場し、やがて記号として整理されてくる遍歴を見ていると文字そのものに楽しさを感じます。そうしたイメージを自分のデザインに取り入れられないかと思い立ち、今月のRECORDで試してみることにしました。日本語表記は大陸から渡来した漢字が基本になっています。甲骨文字というのが漢字の最古の祖形で、絵文字のようでありながら抽象性が高い段階まで発達しているようです。甲骨文字一覧を眺めていると楽しさ満載で、いろいろアレンジしたくなります。RECORDでは甲骨文字を模倣するのではなく、造形要素だけを取り出して新たに創造していこうと思っています。今年は画面の中に一定のパターンを取り入れています。今月は4つの長方形を画面に配置した構成を考えました。忙しさに追い倒されて下書きだけ先行することがないよう、今月は気持ちを引き締めてRECORDに取り掛かっていきたいと思っています。
    トラ吉のアクション
    我が家で飼っている猫のトラ吉は、もともと野良猫で亡父の残した植木畑に捨てられていました。2010年4月26日のNOTE(ブログ)に「植木畑に捨て猫あり」という記載があるので、それから8年が経ってトラ吉は大きく育ちました。先日、動物病院で測定したら体重は10キロもありました。茶トラという種類は大きくなる傾向があるのでしょうか。私は幼い頃に実家で猫を飼っていましたが、猫の生態を具に観察したわけではなかったので、トラ吉が自分にとっての初めての同居猫と言ってもいいと思います。私の猫に対する概念は、彼らの行動はマイペースで勝手気儘と思い込んでいました。トラ吉を見ていると、どうもそうではないと感じるようになりました。私が帰ると玄関まで迎えに出てくる、私がダイニングまで歩くとトラ吉はその前を歩いていき、テーブルに飛び乗って私に頭を撫でることを要求する、家内が餌を運んでくると私を餌場に誘うのです。どうもトラ吉は勝手気儘とは思えないアクションをするので、我が家では猫の概念が崩れ始めています。とりわけ餌が出されると皿に飛びつくことはなく、必ず私の足許にやってきて鳴いて私を誘います。私が餌の皿の方に歩くとトラ吉が同伴してきて、漸く食事にありつくのです。毎晩繰り返されるアクションに、トラ吉は既に家族の一員としての存在感を放っています。それでもトラ吉のアクションは人間の考える愛情とは異質のものではないかと察します。私たちに飼われている意識もあるのかどうか分かりません。ただし、撫でられる等の接触は大好きなようで、執拗に私に絡んでくるのです。人間の感覚で可愛がったり、愛情を注いだりするのは、猫目線で考えると大いなる誤解があるように思えます。猫が私たちのコトバを喋ったら、私たちを失望させるコトバが飛び出てくるのではないかと思います。夏目漱石の我輩もびっくりするような生態が明らかになってくるでしょう。人間が勝手に作った猫ブーム、私の足元でトラ吉はそんなことは知っちゃいないとでも言いたげな顔をしています。
    「感覚内容の構成」について
    「経験の構造 フッサール現象学の新しい全体像」(貫茂人著 勁草書房)の第四章「感覚内容の構成」について、気になった箇所を引用いたします。本書は難解な箇所が多く、章をまとめることは至難の業で、その都度述べられている主旨をチェックするくらいしか出来ません。初めに「感覚与件」や「感覚内容」について抜き出します。「感覚与件論者は、感覚はすべての知覚に先行する知覚成立の必要条件であり、したがって逆に、知覚は感覚に何かがつけ加わることによって成立すると考える。感覚につけ加えられるとされるのは、認識主観から発する解釈や意味づけであり、こうして『知覚解釈』説が導かれる。~略~感覚与件は、意識内から発生したとは考えられないため、『どこから与えられるのか』という問いがどうしても浮上する。~略~感覚与件が経験において果たす役割を問題にしたとき、『単なる志向が感覚与件によって充実され、その結果志向の正しさが確証される』とみなす考えが導かれる。」本書は具体的な例を挙げながら論理を展開しているのですが、書き出す箇所から具体例を除いているので、文章としては難解にならざるを得ません。次の文章も突如引用したように思われますが、前後のない文脈の中なのでご勘弁いただければと思います。「諸感官やキネステーゼ、状況などの変化に応じて変化する感覚的質によって充実した直観内容をフッサールは『感性的図式』とよぶ。カントの場合、『図式』は感性の多様と悟性形成を結合する機能だが、フッサールにおいては、主観側、客観側の諸条件毎に変化する感覚的質相互が結合されたものが感性的図式である。」これはもう現象学の説明というよりは、私事のメモとして書いていると言った方がいいかもしれません。この章ではその後、ゲシュタルト心理学や超越論的連合概念に触れています。章の最後の「受動的綜合の分析」としてフッサールの言葉を引用した文章がありました。「『意識にとって構成されたものが私にとって存在するのは、ひとえにそれが触発することによる』。~略~こうして『際だった感覚的統一』の形成には、触発というダイナミックな連合の働きが先立つことになる。触発と喚起、感覚的統一、際立ちは、一つの現象の四つの側面である。」今回はこのくらいにしておきます。
    台風一過 今月の制作目標
    10月になりました。昨晩から大型台風に見舞われ、私は一晩中暴風の音に悩まされて眠れませんでした。深夜2時過ぎに一時停電になり、私は寝床から飛び起きて、懐中電灯を持って荒れ狂う風の中を工房に行きました。畑の中で遭難したらどうしようと頭を過ぎりましたが、作品に対する思いが打ち克っていました。幸い窯の電源は落ちていることもなく一安心しましたが、念のため朝の出勤前も工房に立ち寄り、窯の温度を確認しました。大変な幕開けとなった10月ですが、今月は制作サイクルにさらに拍車をかけていきたいと考えています。まず新作の陶彫制作ですが、既に2つの塔の一段目の土台11個を作り終えています。今月2段目の陶彫部品に取り掛かろうと思っていますが、やや小さめになるとは言え、制作の手間は一緒です。5個くらい出来ればいいかなぁと考えています。今月も三連休がありますが、他の用事があるため、全て制作に充てられないのです。RECORDは毎日着実に作っていこうと思っています。下書きだけが先行すると、大変な目に遭うことがわかっているので、初心を忘れないように取り組みたいと思います。鑑賞は美術館や映画館に継続して足を運ぶつもりです。音楽会や演劇にも行きたいのですが、そんなに欲張れないかなぁと思います。読書はまだまだ現象学に挑戦します。読書の秋に申し分のない書籍です。今月も頑張ります。