2016.04.17 Sunday
今日は朝から工房で砂マチエールの作業を行いました。若いスタッフが3人来てくれて、数時間かけて砂を硬化剤で「発掘~表層~」の台座に貼る作業に専念してくれました。スタッフたちは一生懸命やっていて、その集中力に感謝です。工房に来るスタッフは私と何らかの関わりがある人ばかりで、現在は全て女性です。今までいろいろな人がやってきて、私の仕事を手伝ってくれたり、自らの創作課題と向き合ったりして、工房で過ごしていました。今日のような直接仕事を手伝ってくれる場合は、本当に私は助かっていて、スタッフの存在がなければ作品は完成できないと思っています。それだけでなくスタッフがそれぞれの課題をやっている時も、社会的促進が図られて精神的に私は助けられています。ずっとアートをやっていきたいという意志と、将来に対する不安が交差するスタッフたちを、私は工房を自由に使わせることで支援しています。美術系の学校を出ても制作する場所がないことで、アートに対する希望を失う若者が多いので、相原工房に関わるスタッフには創作活動が出来る環境を用意したいと思っています。スタッフは卒業制作もグループ展の出品制作も個展準備も工房でやっています。私が自分の材料を買いに行く時は、私に同伴して自らの材料も仕入れています。そんなスタッフたちの底力を今日は見せられて嬉しい思いをしました。そのおかげで砂マチエールの貼り付け作業が完成しました。これを乾かした後、油絵の具を滲み込ませていきます。「発掘~表層~」は次第に完成形が現れてきました。
2016.04.16 Saturday
今日は工房に懐かしい人がやってきました。訪ねてきたのは20年前に自宅に招待した女性で、数日前に突然連絡があって驚きました。彼女は中国の北京で生まれ、12歳で家族と共に日本にやってきました。日本国籍を取得し、中学校と高等学校は日本の学校を卒業しました。大学はアメリカの学校を選び、アメリカに旅立ちました。それから十数年はアメリカで暮らし、現在の生活の基盤はアメリカにあります。中国語、日本語、英語と3カ国語を流暢に話せる才媛で、その半生は流転に充ちたものです。アメリカの大手自動車メーカーに勤めたり、さまざまな業種を点々として、現在は和食レストランのオーナーです。現地で人を雇い、店舗のマネージメントをやっています。悪質な客には強い対応をするという彼女は、昔に比べるとタフになったように思います。さらに彼女と話していると気づかされることが多くあります。大陸気質なのか、彼女は粘り強い向上心に溢れていることです。レストラン経営では物足りなさを感じることもあるようで、何か他にもステップアップを目論んでいるようにも思えます。「何か私に助言して…」というので、商いは身の丈を考えること、挫折しても決して諦めないこと等、自分が亡父の経営していた造園業で実感したことや、現在の管理職としての人的管理を含めて、自分にも言い聞かせるような助言をしました。彼女が先行きの不透明を嘆くこともありましたが、今までの岐路で誤った判断は見受けられず、前向きであれば必ず展望は開けるのではないかという話をしました。また来年会おうねと言って別れましたが、日本語を忘れないようにして欲しいものです。来年は彼女がさらに飛躍することを願っています。
2016.04.15 Friday
この1週間は月曜日から今日まで毎晩工房に通いました。気候が良くなって制作しやすくなったこと、職場が新しい体制になって動き始めたことが、帰宅後に工房に行けるようになった理由です。月曜日は陶紋の彫り込み加飾、火曜日は土練り、水曜日と木曜日は陶紋の彫り込み加飾、金曜日は明日の成形に備えて畳大のタタラを5枚作る作業を行いました。この1週間の夜には、新作に使用している硬化剤の追加分が販売元から郵送で届いたことや、家内と食料品の買い物に出た日もありました。仕事では出張が3回あって、出張先から帰った後、前述通り多忙な夜の時間を過ごしてきました。充実した1週間だったと思い返していますが、超過労働で長く続くものでもないかなぁと思っています。ただし、陶紋をこの時期に作っておかないと、野外撮影に間に合わなくなるという図録作成上の都合もあり、ともかく頑張った1週間だったのです。夜の工房は蛍光灯に照らし出された魅惑的な空間が広がっています。芸術家によっては夜を制作時間に当てている人もいるくらいで、集中力は増してきます。FMラジオが耳に心地よく、自分を解放するのには最適です。翌朝早く職場に出勤しなければならないという考えが頭の片隅にあるので、1時間から2時間程度で作業を切り上げますが、ほんのひと時を非日常の空間で過ごすのも悪くはないと思っています。あまり工房でゆっくりしてしまうと自宅に帰ってから取り組むRECORDに皺寄せがくるのが辛いところですが、一日のスケジュールが過激なのは昔からわかっているところです。そのせいか奥歯が浮いたような感じになったり、五十肩が疼いたり、RECORDを制作している途中で俯して寝てしまったりして、疲労がピークに達しているのかなぁと思うところが気になっています。
2016.04.14 Thursday
出張先の駅の近くの書店に立ち寄った時に「精神分析入門・夢判断」という文庫本を見つけました。これは驚いたことに漫画です。フロイトの代表著作である「精神分析入門」と「夢判断(夢解釈)」をひとつにした物語で、言わばフロイトが医療として辿り着いた精神分析や夢の解釈、これをヒステリー症状等の精神医学に役立てていこうとするフロイトの生涯のエポックを描いています。精神分析という医学概念がなかった時代に、自分の妄想に囚われて病気にかかった気になっていると医師から囁かれていた精神疾患の患者は、当時随分辛い思いをしただろうことは想像に難くないところです。「まんがで読破 精神分析入門・夢判断」(フロイト原作 バラエティ・アートワークス著 イーストプレス刊)は、そんな患者を受け入れ、その中から発見される心理療法や新しい心の学問をフロイトが医学界に投げかける展開があります。本書は漫画という媒体を使って、フロイトの論文の詳細は省き、その大筋だけを追っていく形式にしています。論文を丹念に読んでいる者としては、極端な論理の飛躍があったり、唐突な場面があって驚きますが、本書が描こうとしたエキスだけは伝わってきます。この漫画を契機に歴史に遺る大著作に近づいていけたらいいのかなぁと思う次第です。
2016.04.13 Wednesday
当初は絵画的な平面作品としてイメージしていた「発掘~表層~」ですが、制作の過程で立体の一部が地表に現れ出た作品としてイメージが固まっていきました。それは彫刻の概念に長年縛られている自分が、たとえ平面に見えるものでも、そこに立体性を嗅ぎつけてしまう癖があるためです。自分の視界に入る全ての物質は空間に存在する立体です。その一部である表面を自分は見ていて、立体としての周囲の状況は想像で補っていると言えます。その想像的補いが彫刻作品の中にあっても不思議ではありません。風景を見るとき私たちはその断片しか見えていないと考えると、その最たる例として遺跡の発掘現場を私は思い浮かべます。遺跡の発掘現場では、土中に埋没した遺構を探りあて、丁寧に土を取り除き、都市の全貌が次第に露わになってきます。予想や想像が具体性を持って現れていく過程に、高揚した気分を味わえるのは私だけではないと思っています。埋没した遺構を表現するテーマは、彫刻家としてデビューした当時から変わっていません。「発掘~表層~」も同じ発想による彫刻作品です。作品が断片的であること、欠如したものであること、想像で補ってほしいこと、作品がもつ世界観を完全に語ることがないこと、それらも「発掘シリーズ」では一貫しています。陶彫は出土品のような様相を呈するので、断片や欠如を表すのに適した素材ではないかと思っているところです。