2014.04.23 Wednesday
夜になって帰宅してから工房に行きました。窯出しと窯入れをするためです。自分が20年近くやっている陶彫は、最終工程で窯に入れて焼成をします。それによって作品が変化し、自分の手を離れて素材が凝縮していくのが面白いと感じています。ただ、完成の見通しが立たないのがデメリットで、作品が窯の中で歪んだり割れたりすることもあります。余裕をみて完成するのが望ましいのですが、新作の「発掘~層塔~」は大量の陶彫部品を作るため、まったく時間的余裕が持てません。それどころか5月11日の図録撮影日に間に合うかどうかも怪しくなってきました。過去にやっていた木彫との併作ならば何とかなります。木彫は自分の手を離れることがないので、自分さえ頑張れば完成できます。ところが陶彫は窯に委ねている時間があります。1週間で2回の窯入れを行うとして、5月11日までに何回窯入れが可能か、完成している成形部品が全部窯に収まるのか、もう一度計算をして今後に臨みたいと思います。
2014.04.22 Tuesday
「収容所に入れられ、なにかをして自己実現する道を断たれるという、思いつくかぎりでもっとも悲惨な状況、できるのはただこの耐えがたい苦痛に耐えることしかない状況にあっても、人は内に秘めた愛する人のまなざしや愛する人の面影を精神力で呼び出すことにより、満たされることができるのだ。~略~愛は生身の人間の存在とはほとんど関係なく、愛する妻の精神的な存在、つまり『本質』に深くかかわっている、ということを。愛する妻の『現存』、わたしとともにあること、肉体が存在すること、生きてあることは、まったく問題の外なのだ。~略~愛する妻が生きているのか死んでいるのかは、わからなくてもまったくどうでもいい。それはいっこうに、わたしの愛の、愛する妻への思いの、愛する妻の姿を心のなかに見つめることの妨げにならなかった。」引用が長くなりましたが、現在読んでいる「夜と霧」(ヴィクトール・E・フランクル著 池田香代子訳 みすず書房)の中で、家畜同様に扱われている被収容者たちの壮絶で悲惨極まる状況にあって、この一文は自分の心に深く刻まれました。夫婦が生きて再会するというレベルを超え、極限状態にある人間の尊厳のある場面が述べられていて、愛とは何かを考えさせられる珠玉の一場面だと思いました。
2014.04.21 Monday
私は仮面が大好きで、アフリカ、アジア、ヨーロッパや日本の仮面を集めています。その中でもとりわけアフリカの仮面に惹かれています。国ごと部族ごとに異なる造形や装飾は朴訥な生命力に溢れています。自分が創作の迷路に入り込んだ時に、仮面の表情を見て、ふと我に返ることがあります。これは造形が伝えるパワーが仮面に宿っていて、自分の技巧的な迷いが払拭されるのです。こうした体験は私に造形へ立ち向かわせる意欲を授けてくれました。アフリカを初めとする民族芸術は、鑑賞する対象として作られたモノがある一方で、呪術の対象として作られたモノもあると思います。そうしたモノを全てアートとして捉えたのが、巨匠ピカソやモディリアーニだったわけですが、自分も同じように生命賛歌を感じ取っています。先日訪れた東京六本木の国立新美術館で開催している「イメージの力」展は、自分に強い印象を与えました。名も無き芸術家たちが作った生命の根源を問う作品群に、自分の心が震えました。展示作品は大阪にある国立民族博物館の所蔵するもので、日本にこんなにも豊かな民族芸術のコレクションがあることに驚きました。
2014.04.20 Sunday
「発掘~層塔~」の陶彫部品の成形が全て終わりました。総計92個になりました。当初100個を超える計画を打ち出しましたが、制作時間を考えて床に密着する部分を縮小しました。それでも今までの作品の中で、部品個数からすれば最大の作品です。これから仕上げと化粧掛け、焼成を行っていきます。部品全体の半分は焼成が終わっています。まさに時間との勝負です。図録撮影日は例年より一週間遅れの5月11日(日)に決めさせていただきました。懇意にしているカメラマンが快く引き受けてくれて助かりました。例年5月の連休は栃木県益子や茨城県笠間の陶炎祭に出かけていきますが、今年は制作のため行くことができません。笠間の親友に残念な連絡をしようと思いますが、夏にでも訪問できたらいいなぁと思っています。今日は朝から工房に篭って、「発掘~層塔~」の仕上げや化粧掛けに終始しました。陶で作るモノは手の痕跡があって温かみを感じさせるのですが、自分の陶彫は仕上げにヤスリ掛けをして手の痕跡を消します。成形時にある程度はヘラで手の痕跡を消していますが、さらに乾燥してからヤスリを使って完全に消してしまいます。それは叙情性を排除するためでもありますし、集合彫刻のためボルトナットで部品同士の接着を容易にするため、フラットな面を作っておかなければならないのです。今日は仕上げ一辺倒で過ごした一日でした。夕方遅く窯入れをして工房を後にしました。
2014.04.19 Saturday
著述家笠原実先生の講演会が横浜港北区にある大倉山記念館でありました。笠原先生は自分の恩師にあたる人で、毎年銀座の個展に来ていただいて、美術評論もしてくださっています。かなりのご高齢ですが、凛とした姿勢や講演内容の密度の濃さは、ずっと変わらず、とくに詩が好きな自分にとっては貴重な存在なのです。日本の詩の歴史を紐解けば、古くは万葉集に始まりますが、いわゆる現在読まれている詩の形態になるには、明治時代に出版された「新体詩抄」を待たなければならなかったこと、「於面影」において森鴎外らがゲーテ、バイロンを訳したこと、その森鴎外(林太郎)が作詞した横浜市歌にも触れて「詩」と「詞」の違いを論ぜられていました。その後の詩の展開として「早稲田文学」や「文学界」等取り上げて、最後には北村初雄のハイカラな詩へと結びつけていく講演でしたが、時間が押して最後のところでもう少しお話が聞きたかったなぁと思いました。ともかく楽しい時間で、自分が憧れる詩の創作にも触れていて、大変参考になりました。自分は詩的世界はコトバに限らず造形にもあって、まさに自分が現在作っている彫刻にも通じていると考えています。そんなことを思い巡らせながら午後のひと時を過ごしました。今日は以上のような講演会があったので、工房へは早朝出かけていって成形をやっていました。これが「発掘~層塔~」ラストの成形になる予定です。明日はそれぞれの陶彫部品の仕上げと窯入れ準備をしたいと思います。